イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「ACCORDO DEI CONTRARI」。2001 年結成。作品は五枚。「オリジナルな器楽音楽」を目指す職人集団。
Marco Marzo Maracas | guitars |
Stefano Radaelli | saxes, bowed zither |
Cristian Franchi | drums |
Giovanni Parmeggiani | organ, Rhodes, Minimoog, ARP Odyssey, mellotron |
guest: | |
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Alessandro Bonetti | violin on 4 |
Gabriele di Giulio | tenor sax on 1,10 |
Patrizia Urbani | vocals on 6 |
2017 年発表の第四作「Violato Intatto」。
内容はブルーズやパンクといったロックに欠かせぬヤサグレ要素の勘所を熟知したテクニカル・ジャズロック。
キャッチーだがこんがらがるような変拍子テーマを軸にしたトゥッティが多彩なサウンドともに転げ落ちるような勢いでひた走る。
ヴィンテージ・キーボードの使用も含めてオールド・ロック(特にハードロック)のエッセンスの活かし方が抜群にいい。
特にいいのがしなやかで逞しいドラミング。
この弾力あるリズム・セクションがサックスやオルガンが自由奔放にリードするアンサンブルをきっちり支えている。
だから、かったるそうに放たれるリフもサイケデリックな乱痴気騒ぎもビシっと引き締まる。
「いきなりカッコいい」し「乱れてもすごい」。
もちろんプログレが採用した現代音楽の要素、すなわち変拍子、不協和音、ミニマリズムなどもてんこ盛りだ。
特に現代音楽の飛道具たるヴァイオリン(演奏は DEUS EX MACHINA のヴァイオリン奏者)のアクセントがすばらしい。
肉感的なサックスがアブストラクトなリフで迫るとレコメン系チンドン屋の趣も現れる。
そして、まんまなスタイルのカヴァーや作風のコピーではなく「換骨奪胎」というか「好きが嵩じた変態」というニュアンスがあるところがいい。
おそらく演者は、YouTube デビューの現代的な情報処理プラス天賦の才能といった若者たちではなく、泥臭いキャリアのあるイカれたおっさんたちなのではないか。
下品で饒舌、しかししなやかな色気のある主役級のサックス、まろやかに唸るハモンド・オルガン、凶暴だが HM クリシェ一切なしでむしろミニマル好きのギター、KING CRIMSON 好きバレバレのアンサンブル、など個人的に好みの箇所が圧倒的に多い。
ヴァイオリンが煽り立てると、アンサンブルの緊張感は KING CRIMSON から MAHAVISHNU ORCHESTRA にまで達する。
また、ロックなグルーヴにおいて抽象的なまでに鋭く研ぎ澄まされきっちりしているのに R&B のしなやかさ、粋さがあるところは「アキレス」LED ZEPPELIN と同じ。
フェンダーローズの音によるノスタルジーの訴求力も衰えず、マイルス・デイヴィスやチック・コリアを招魂しかねない。
そうなると「カンタベリー」といってしまえるシーンもあちこちに見つかる。
プロデュースはグループ。DEUS EX MACHINA と同系統のハイパーヘヴィ・ロック。
この内容でスタジオ・ライヴに若干の手直しだけという自主制作とは驚くべきだ。
そして、これだけの音楽に誰も投資しないという事実が音楽関係の企業がほんとうにただの集金マシンになっていることを示しているのではないか。
Violato
「Folia Saxifraga」(4:26)
「Monodia」(6:37)
「Blue-S」(5:43)ブルージーなハードロックに擬態したジャズロック。
「Shamash」(8:06)
「Idios Cosmos」(6:20)チェンバー色あり。
「E Verde È L'Ignoto Su Cui Corri」(7:14)コントラルトの女性ヴォーカル入り。
Intatto
「Marienkirche」(3:39)
「Di Eccezione In Variante」(7:22)
「Usil」(6:38)
「Eros Vs Anteros」(10:01)AREA っぽい佳作。前半のワウギター、後半のオルガン、終盤のドラムスのリードする変拍子アンサンブルがカッコいい。
「Il Violato Intatto」(7:08)
(Self Released)