ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「BACAMARTE」。 74 年、マリオ・ネトは弱冠 14 歳でグループ結成。 79 年デモ・テープ完成するもシーンに適合しないことを理由に秘匿し、ようやく 83 年に発表。 音楽は、情熱的なフレーズで駆け巡るギターを中心とした濃密なラテン・クラシカル・ロック。 官能に訴えて力でもぎとるような若い強引さとクラシカルなヨーロッパ的洗練の奇跡的なブレンド。 99 年第二作を発表。
Mario Neto | guitar, violin |
Sergio Villarim | keyboards |
Delto Simas | electric & acoustic bass |
Marco Verrissimo | drums |
Marcus Moura | flute, accordion |
Mr.PUAL | percussion |
Jane Duboc | vocals |
83 年発表の第一作「Depois Do Fim(After The End)」。
内容は、生命感に満ちあふれて官能を揺さぶる若々しいラテン・シンフォニック・ロック。
全編にわたってパッショネートな速弾きギターが駆け巡り、そのギターが、クラシカルなキーボード、リリカルなフルート、女性ヴォーカルらとともに織りなすサウンドは、ロマンティックかつみずみずしいものである。
クラシックをベースとしつつも、熱っぽいラテン音楽に放り込まれた西洋的な和声が化学変化を起こして、新しい音が生まれている。
構築されたアンサンブルに荒々しいビート感とパッションが加わり、開放感に溢れるイメージを示している。
悩ましげにして神秘的なフレーズが伸び伸びとメジャー・コード進行へと発展する瞬間のなんと気持いいことか!
ギター、シンセサイザー、オルガン、ベース、ドラムスらによる演奏のすべてにわたって、まばゆい煌きと弾けるような躍動感に満ちている。
女性ヴォーカル、フルート、パーカッション、バンドネオンといったエキゾティックなロマンを彩るファクターにも事欠かない。
エネルギッシュに走って迫るプレイとたおやかなメロディを歌い上げる歌唱の対比、バランスもいい。
何より「走りに走ってたたみかける」プレイが、プログレッシヴ・ロック・ファンの胸に必ず響くはずだ。
クラシック・ギターのプレイは、郷愁あふれるトレモロから輝くようなアルペジオまで、ややラフではあるものの本格的だ。
情熱と技巧に走るあまり、ややリズムやフレーズのキレと係り結びが甘くなるという難点はあるが、迸るような一気呵成の勢いでそれを補っている。
SAGRADO が宗教/彼岸的な美感をたたえるとするならば、こちらはより現世/肉感的であり、命の息吹をストレートに賛えているイメージである。
ブラジリアン・プログレッシヴ・ロックの名作の一つであり、アコースティックなプログレッシヴ・ロックの傑作。
はちきれそうな若々しさと切ないまでの哀愁がブレンドした、豊穣な作品です。
「UFO」(6:26)クラシック・ギターによる哀愁のアルペジオで幕を開けるドラマティックな名作。
フルートを活かしたクラシカルなテーマの全体演奏、ギターのストロークとともに高まってゆく堂々たるムーグのテーマが感動的。
「Smog Alado」(4:11)情熱的な女性ヴォーカルをフィーチュアした作品。
「Miragem」(4:54)ギターによるアラビア風のテーマがおもしろい作品。
ひょっとしてタイトルは「蜃気楼」?フルートもフィーチュアされる。
「Passaro De Luz」(2:23)SAGRADO を思わせるアコースティック・ギターと女性ヴォーカルによる官能的な作品。
爽やかです。
「Gano」(1:59)力作のテーマ部のみ抜き出したような小品。
タンゴ調のテーマが一瞬にしてかなり盛り上がるも、あっという間に終り。
「Ultimo Entardecer」(9:29)メランコリックでやや感傷的なメロディ・ラインが耳に残る叙情的な大作。
ほとばしるストリングス・シンセサイザー、訴えかけるような表情の女性ヴォーカル、泣きのギターで切々と迫る。中盤はギターのリードによる快速アンサンブル。
スピーディな展開を一転ピアノで柔らかく受けとめ、切り返すように変奏するところがみごと。
そして、波打つようなピアノからギターのトレモロへの受け渡しが泣かせる。
終盤はタンゴ調のリズムでアクセントをつけ、序盤のテーマへと戻ってゆく。
「Controversia」(1:57)現代的な和声・拍子を用いた、不安をかきたてるような小品。
ギター、シンセサイザー、ドラムスが緊迫したアンサンブルを繰り広げる。
やや EL&P 風か。
「Depois Do Fim」(6:31)シンフォニックにしてジャジーなブラジリアン・ロックの名品。
渦巻くようなエフェクトを効かせたストリングスとギターが滔々と流れ、シンセイサイザーとフルートが軽やかに舞う。
強引なまでに走る変拍子アンサンブルを、母性の象徴のようにゆったりと受けとめるヴォイスとアコースティック・ギター、そしてさえずるように歌うフルート。
最高の読後感を味わわせてくれる傑作だ。
「Mirante Das Estrelas」(6:11)独演による CD 追加トラック。第二作にも収録される。
スピーディで勇壮、なおかつラテン風味たっぷりのシンフォニック・チューン。
打ち込みドラムスですが、
これも名作です。
(RARITY JR001)
Mario Neto | piano, bass, drums, flute, recorder, percussion, keyboards, guitars, vocals |
Roberio Molinari | keyboards |
99 年発表のアルバム「Sete Cidades(Seven Cities)」。
約二十年ぶりの新作は、ネトがキーボーディストのサポートを得て制作した事実上のソロ・アルバム。
第一作 CD に予定としてクレジットされていたはずなので、発表までにずいぶんと時間がかかったことになる。
内容は、一作目と同様パッショネートなラテン・シンフォニック・ロック。
クラシックの素養ばかりか、キーボード以外のすべてをこなすネトのマルチプレイヤーぶりに驚かされる。
若さのあまりの性急さはやや抑えられたのか、せわしなさは感じられず全体に表現がまろやかになっている。
サウンドもより明快になっている。
それでも、ワイルドだが叙情味あるギター、たたみかけるリズムなど切なくも情熱的な演奏スタイルと、次々と魅力的な旋律を繰り出してはアンサンブルがそれに追いついてゆくような作風は、第一作と変わらない。
女性ヴォーカルがいないため華やかさは薄れたが、忙しなく動き回るアンサンブルが生むスリルと、一貫して底を流れる熱きラテンの詩情が、否応なく感動を巻き起こす。
ティンパニやヴァイブなど、打楽器類が丹念に使われているところにも真面目さを感じます。
「Portais」
「Ritual da Fertilidade」
「Fihos do Sol」
「Espiritos da Terra」
「Mirante das Estrelas」
「Carta」
「Canto da Esfinge」
(BCD002)