BARCELONA TRACTION

  スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「BARCELONA TRACTION」。NEW JAZZ TRIO を母体に 75 年結成。82 年解散。作品は二枚。第一作は百戦錬磨のプロっぽさの現われたエレクトリック・ジャズの秀作。

 Barcelona Traction
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Lucky Guri Fender piano, Horner piano, Steinway piano, mini-Moog, percussion
Jordi Clua bass, contrabass
Francis Rabassa drums, percussion
guest:
Pedrito Diaz percussions
Manel Joseph percussions

  75 年発表の第一作「Barcelona Traction」。 内容は、キーボードを主役にしたメローでライト・ファンクなジャズロック。 手数の多いドラムス、饒舌にして腰の据わったベースに支えられて、エレクトリック・ピアノが華やぎ、アコースティック・ピアノが締める、安定感抜群の演奏である。 アコースティック・ジャズの手練が満を持してエレクトリック・ジャズのフィールドに乗り込んだだけあって、プレイのキレ、メリハリや抑えの効きといった味つけは完璧であり、トリオ編成の音数制約を感じさせない豊穣な演奏になっている。 フロントとなるべき管楽器の不在は、ほぼムーグ・シンセサイザーが埋めている。 エレクトリック・キーボードが中心となる作品では、幻想的なムードの盛り上げとともに変拍子パターンの反復によるアブストラクトなバッキングなどチャレンジングな姿勢も見せている。 テクニックがあるだけに無機的でメカニカルな表現にもジャストのキレと音色の太さがあり非常にカッコいい。 一方、クラシカルな響きがすばらしいアコースティック・ピアノが中心になる作品ではスムースでオーソドックスなモダン・ジャズへと回帰する。 ジャジーな感性のきらめきも眩いが、何よりこのサウンドの「振れ幅」が、アルバムを通したメリハリ付けとしてうまく機能していると思う。 また、全編を通じてパーカッションが細かなリズムのうねりを生み出して演奏のなめらかさに一役買っていることも見逃せない。
  キーボード主体のジャズロックの秀作。 管楽器が一つでも入るとさらに彫が深まっただろう。 キーボーディストは、本作発表後グループを離脱して、MUSICA URBANA に参加。

  「Has Vist Passar Els Ocells」(5:00)愛らしいエレクトリック・ピアノ(バッキングは別のエレピか)をフィーチュアしたフュージョン。 すばらしくキャッチーでメローなのにチープにならず、スリリングで締まった感じがあるのは、筋の通ったリズムがあるから。 細かくロールし刻むドラムスとビートとオブリガートの両方を反応よく処理するベースのおかげである。

  「Modulacions」(6:03)チック・コリアやキース・ジャレットを思わせる洒脱なソロ・ピアノによるイントロダクションから、ファンキーなピアノ・トリオへ。

  「Estudi En Afro」(7:15)繊細でアコースティックな表現とエレクトリックでアブストラクト、圧力のある表現がマッチした悠然たる秀作。

  「Sudamerica」(7:25)エレクトリック・ピアノがリードするパーカッシヴなジャズロック。なんというか、典型。ベースはアコースティックも使用。

  「Foc I Pluja」(8:50)ラテン・ロック調のリズムとチック・コリア風の自由なエレクトリック・ピアノが特徴的な作品。中盤のワウをかけた音はベースだろうか。
  
(B 36.352-1975)


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