イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「CONSORZIO ACQUA POTABILE」。 70 年代から活動を続けるベテラン・グループ。 93 年アルバム・デビュー。 2004 年現在、初期のライヴ盤含め作品四枚。 ツイン・ギターにツイン・キーボードを擁した重厚なイタリアン・ロック・サウンド。 2016 年新作「Coraggio E Mistero」発表。
Alvaro Fella | lead vocals, acoustic guitars | Maurizio Venegoni | Mini moog, flute, synth, Hammond organ, bagpipe, bombarde, Mellotron | |
Maurizio Mercandino | lead vocals, guitar | Maurizio Mussolin | drums | |
Luigi Secco | bass, Taurus pedal | Chicco Mercandino | guitars | |
Massimo Gorlezza | guitars | Enrico Venegoni | Mellotron, piano, Fender Rhodes | |
Silvia Carpo | recorders | |||
guest: | ||||
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Guido Dipierro | guitar | Sergio Conte | Hammond organ, Fender Rhodes |
2016 年発表のアルバム「Corragio E Mistero」。
近年のツアー・メイトである JUMBO の名ヴォーカリスト、アルヴァロ・フェラをリード・ヴォーカルに迎えた。
その強烈なる悪声とパワフルな歌唱による濃厚な存在感、さすがに 70 年代を現役ですごした大物の風格である。
この圧倒的な節回しに引っ張られるように、元来淡白でおとなしめのアンサンブルもダイナミックな動きを見せざるを得ない。
丹念な語りを得意とするアンサンブルが、表情豊かなヴォーカリストのパフォーマンスによって時に強引に振り回されるが、そのおかげでかえってドラマの彫りが深まっている。
ユーモラスでにぎにぎしい味わいや哀愁深くたゆとう感傷と叙情の面影も演奏の隅々にしみわたる。
この競演は大成功といえるだろう。
フルートら管楽器が暴れ、アコースティック・ギターが小気味のいいリズムを刻む JETHRO TULL ばりのたくましい展開も非常に堂に入っている。
明快なギター・リフ、テーマ、そしてヴィンテージ・キーボードの音の配置も適量(メロトロン・クワイアやローズ・ピアノ、ミニムーグは絶妙の極み)かつ適所、的確であり、トルバドール風の物語の綴り方は本作でも冴え渡っている。
大作の 5 曲目はまさにその語り口をフル回転させた音楽絵巻。
へヴィでクラシカルでフォーキーで歌心にあふれるというオールド・ウェーヴ・ロックのすばらしい点をすべて備えた力作。
予算抑え目の製作も、「ライヴな迫力そのまま」と思えば何のそのである。
二枚組 LP も発表された。そちらは曲数が二つ多い。
すべてのイタリアン・ロック・ファンにお薦め。
「Coraggio E Mistero」(12:00)
「Io Ti Canto」(6:13)
「Tra Le Scale E il Cielo」(9:26)
「La Strada」(6:33)
「La Notte E il Mulino Di Al」(21:10)
「Ciao Alvaro (Dove Vai?)」(4:33)
「Il Cervo E La Fonte」(7:01)個人的にベスト。
「Sette E Trenta (Di Mattina)」(5:44)
(BWRCD 196-2)
Pippo Avondo | drums |
Romolo Bollea | keyboards |
Massimo Gorlezza | electric & acoustic guitar |
Maurizio Venegoni | keyboards |
guest: | |
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Riccardo Roattino | electric & acoustic guitar |
Paul Rosette | voice |
92 年発表のアルバム「...Nei Gorghi Del Tempo」。
超ベテラン・グループによるデビュー作である。
内容は、安定感あるしなやかなメロディアス・シンフォニック・ロック。
ツイン・キーボード(ピアノとシンセサイザー)、ツイン・ギターながら、音を詰め込まず、描写に必要な十分な音でていねいにアンサンブルを綴ってゆく作風である。
優美に歌うところも、リズミカルなところも、演奏には自然な抑揚と流れがある。
二曲目の前半のようにぱたぱたと変転しても動きがなめらかなのは、その語り口のうまさによるのだろう。
叙情的に詠ずる場面と比べると、攻め込みたたみかける演奏はあまり得意ではないようだが、それでも物語のための演出としてきちんと織り込まれている。
ただし、次作以降のようなユーロ・ロック伝統の「濃いクラシカル・タッチ」は、意外なほどない。
むしろ、ハードロック調のギター・プレイなどポンプ・ロック的なクリシェが散見され、それらが味を薄めている。
それを引き締めるのは、要所で切り込むグランド・ピアノの重厚華麗なプレイや、悠然たるストリングス、金管楽器系のシンセサイザーの響きである。
さらには、本作品のみ参加の美声ヴォーカリストの歌唱も、クラシカルで本格的なものだ。
オペラ風の朗々たる歌唱など、BANCO への憧憬のなせるわざだろう。
(もっとも、4 曲目終盤のエレアコのプレイは、フランコ・ムッシーダなのだが)
レンジの小さい録音、シンセサイザーのサウンド・メイキングなど、製作面に若干の問題があるのが残念。
ヴォーカルはイタリア語。
「Il Mercante」(The Merchant)(9:06)
「In Un Vecchio Castello」(In An Old Castle)(13:13)ヴォーカルは 10 分辺りで現れる。本家 BANCO のスタイルである。
「Arnaldo Da Chatillon Crociato」(Arnaldo From Chatillon Crusader)(7:44)映画音楽のように美しく雄大なテーマ。
クラシカルな傑作。
「Vivendo Un Giorno...Solo Di Niente」(Living One Day Only...Of Nothing)(11:01)冒頭、BANCO の「R.I.P」を彷彿させるハードなトゥッティが印象的な作品。
「Traccia...Ora Lo E」(4:50) BANCO の同名作品のテーマを拝借したオマージュ。
(KALIPHONIA KRC003)
Chicco Mercandino | guitars |
Luca Bonardi | drums |
Fabrizio Sellone | keyboards |
Luigi Secco | bass |
Maurizio Mercandino | lead vocals |
Massimo Gorlezza | guitars |
Romolo Bollea | keyboards |
Maurizio Venegoni | wind instruments |
98 年発表のアルバム「Robin Delle Stelle」。
ヴォーカリストが新規加入。
内容は、このノーブルでオペラチックなリード・ヴォーカルと、キーボードを中心としためくるめく器楽アンサンブルが特徴のイタリアン・ロック・リバイバル。
やや HR/HM 風の音使いのギターやドラムス(なぜかバスドラ連打多し)など、全体の音質が現代的なだけで、それ以外は 70 年代の雰囲気そのままである。
長いキャリアと往年のサウンドと現代的な音質のブレンドの仕方のイメージから、イタリアの SOLARIS というのが、適切な表現になるかもしれない。
演奏は、ダイナミクスこそ控えめながらも基調は重厚華麗であり、肺活量の大きそうな存在感あるヴォーカリストと、アコースティック、エレクトリックすべてにわたり多彩な音色を誇る二つのキーボードが中心である。
勇壮かつ幻想的なステージを作り上げるのはキーボードの仕事であり、ヴォーカリストはそのステージで朗々と歌い、ギタリストはオブリガートと間奏でストーリーを支えている感じだ。
10 分くらい平気で歌いまくるので、このヴォーカルとの相性が、全体を聴き通せるかの重厚なカギとなるだろう。
1 曲目のカンタゥトーレ的な世界であきらめてしまうと、2 曲目以降のど真ん中なクラシカル・ロックを味わい損ねてしまうので、注意が必要だ。
フルート、ホルンなど管楽器のアクセントも鮮やか。
ムーグ・シンセサイザーの音は、かなり感動的だ。
全体にもう少しコンパクトになりえたと思うものの、集中してじっくりとドラマを味わう分にはそれもあまり問題にならない。
「Signori Del Tempo」(14:00)
「Robin Delle Stelle」(12:52)
「Lontana Lucia」(11:11)
「Soli Sull'Olimpo」(18:05)
「Robin....Again」(9.42)
(KALIPHONIA KRC012)
Maurizio Mercandino | lead vocals |
Chicco Mercandino | guitars |
Gigi Secco | bass |
Massimo Gorlezza | guitars |
Luca Bonardi | drums |
Romolo Bollea | keyboards |
Silvia Carpo | recorders, backing vocals |
Maurizio Venegoni | MIDI wind controls |
2003 年発表のアルバム「IL Bianco Regno Di Dooah」。
キーボーディストの一人が脱退し、代わりにリコーダー奏者が加入している。
本グループの作品は、叙情性と攻撃性を兼ね備えたクラシカルな美感が BANCO に通じる往年のイタリアン・サウンドといわれていたが、前作では、ギターに代表されるモダンな音ともったりした 70 年代プログレ風味のバランスに、今一つと思わせるところがあった。
しかし本作は、緩急硬軟に自然な抑揚のある楽曲展開とサウンドがマッチしており、最後まで一気に聴き通すことができる。
やや冗長なところや、リズムがゆれるところもあるが、さほど気にはならない。
これはおそらく、トータルなサウンド・イメージがしっかりしているためだろう。
元々 BANCO 的といわれていたのも、演奏そのものよりはツイン・キーボードとオペラチックなヴォーカルいう面をとらえてのことであり、本家ほどトリッキーなまでに敏捷な演奏が得意であったわけではない。
むしろ、シンプルなメロディを軸にさまざまな音を入れ込んだ丹念な語り口から、素朴だが深い哀愁が立ちのぼるところに味わいがあるのだ。
本作でようやく、その持ち味であるクラシカルで一体感のある演奏と楽曲とが一つになって、すばらしい芸術を生み出したようだ。
たとえば、透明感あるアコースティック・アンサンブルには、みごとな説得力と高い音楽性が感じられる。
こういう場面が美しいと、ヘヴィなハモンド・オルガンで突き進むシーンが、より一層スリリングに感じられるのだ。
これが、彼らが見出した自然でオリジナルな表現スタイルなのだとしたら喝采を送りたい。
とはいえ、エレアコ・ギターがあまりにフランコ・ムッシーダ風だったりするから、やはり微笑ましくはあるのですが。
また、メロトロン・フルートなのか MIDI ウィンド経由なのか分からないが、随所にノスタルジックな音が散りばめられているのもうれしい。
新加入のリコーダー奏者によるハーモニー・ヴォーカルもいい。
メロディ、演奏ともに度肝を抜くようなところがない代わりに、しみじみとしたいい味わいのあるアルバムです。
ピアノの調べにリコーダーが静かに重なり、ぐっと湧き上がるストリングスとともにヴォーカルが始まる場面や、ハモンド・オルガンの凶暴な響きにオーボエの典雅な光射す場面などには、かなりの感動があります。
SITHONIA とともに、ベテラン・グループとしてイタリアン・プログレの火を灯し続けていただきたい。
ジャケットは今回もすばらしい。
ヴォーカルはイタリア語。
仮に文句をつけるとしても、HR/HM 調のギター・プレイに品がなく他の部分との相性が悪いこと、音数のわりに耳をぱっと惹くメロディが少ないことぐらいだろう。(もちろん聴き込めば味は出てくる)
8 曲目は、EL&P を連想させるプログレ幻想曲。
10 曲目は、SOLARIS のような硬派なインストと叙情的な歌が絶妙の展開を繰り広げる大作。
「Intro」(1:24)
「Opener」(7:56)アグレッシヴでのったりと怪しく、クラシカルで情熱的でメロディアスな典型的イタリアン・ロック。
慌しい切り返しも変拍子のたたみかけもうれしい。格好の出だしです。
「L'Attesa」(3:31)再び怪しいシンセサイザーがネジを巻き、不安を募らせながら迷宮へと誘われる。クラシカルで厳かなストリングス、うっすらとメロトロン・クワイアも。呪文のようなヴォーカル。ほとばしるピアノ。牙をむくチャーチ・オルガン。
「L'Illusione Della Sfera」(8:51)クラシカルで一直線に攻撃し続ける勇壮系シンフォニック・ロック。
「Luna Impigliata Tra I Rami」(2:21)南欧風のエレアコ・ギターソロ。
「La Danza」(3:34)フォークソングをハードロック化した佳曲。
「Ginevra: Regina Senza Regno」(6:32)
「Grande Ombra Gentile」(4:12)クラシカルかつ邪悪さ漂う作品。エンディング以外インストゥルメンタル。ハモンド・オルガンがカッコいい。
「Pastelli」(7:18)深い哀愁のある歌ものシンフォニック・チューン。
「Il Regno」(22:15)八部構成の組曲。ブルージーなトーンを基調に、音吐朗々たる歌をさまざまな器楽がクラシカルに彩る。
中盤のインストゥルメンタルの小片も聴き応えあり。
EL&P っぽいシンセサイザーと GENTLE GIANT 風のぐねぐねと込み入ったテーマは本家と同じ。
(RBN 001)