CAPITOLO SEI

  イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「CAPITOLO SEI」。 69 年結成。 72 年解散。 作品は一枚。(他にシングル盤が二枚)

 Frutti Per Kagua
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Riccardo Bartolotti vocals, guitars, flute
Loriano "Fischio" Berti sax, flute
Lorenzo Donati drums, vocals
Jimmy Santerini keyboards, vocals
Mauro Romani bass

  72 年発表のアルバム「Frutti Per Kagua」。 内容は、トーキング・フルートをフィーチュアしたシンフォニックなハードロックと SSW 風のアーティスティックな歌ものロックの入り交じったもの。 比較的大きな楽曲を破綻なくまとめ上げるセンスがすばらしい。 勢い任せが主のイタリアン・ロック(ま、それが魅力なのだが)には珍しく構成力で勝負できる存在だと思う。
   旧 A 面は大曲が一つのみ。この大曲はトーキング・フルートと狂おしいサックスが全編を貫くサイケデリックなハードロックである。 ブラスト寸前のドラミングやヤクザなヴォーカルの強烈なシャウトといったハードロックのニュアンスを主に、R&B 風の熱っぽさ、イタリアン・ロックらしくアコースティックな牧歌調やシンフォニックなアレンジを交えて、終始ドラマティックに展開する。 全体に演奏はタイトでしなやかであり、安定している。 俊敏なベース・ラインから小刻みなフィル・インまで、リズム・セクションの音がしっかりと録音されているところもいい。 ヴォーカリストの声質はマイク・ハリソン辺りを思わせ、唱法も表情もオペラティックな熱情とドラッギーな虚脱感の間を振れ幅大きく行き交う本格派である。 OSANNA に似た音の構成だが、呪術的なムードはなく、より鋭角的で、英国のハードロックに近いと思う。
   旧 B 面の三曲は、エレクトリック・キーボードも駆使してスピーディでアグレッシヴな曲展開を見せ、ハードロック的なニュアンスが強いが、どこかフォーキーな長閑さがある。 トーキング・フルートに象徴される独特の忙しなさと性急さ、大胆なリズム・チェンジもあるが、それでもアヴァンギャルドというよりは、伴奏の過激な歌ものロックというべき作風である。 スピード感と凶暴さは今風にいえば HR/HM のものだろう。
   ヘヴィなリフ、トラッド風のメロディ・ライン、シャープなリズム・セクションなど、全体としてルーズさのないガッチリとしたハイレベルのロック。 その演奏力に支えられた、乱痴気騒ぎのようでいて計算された展開がみごとである。 聴き終えた後の狂宴の余韻がなんともいい。 全曲に著名なシンガー・ソング・ライターのフランチェスコ・デ・グレゴリとエドゥアルド・デ・アンジェリスのクレジットがある。ヴォーカルはイタリア語。

  「Frutti Per Kagua」(18:40)

  「Grande Spirito」(3:32)ヘヴィでシンフォニックな弾き語りというべき、荒々しさと繊細さが一つの詩的な感覚にまとまったスケールの大きい小曲である。凝縮されたドラマ。シンセサイザーが勇壮な効果をあげている。

  「Il Tramonto Di Un Popolo」(5:28)奔放な展開を繰り広げるシンフォニックなハードロック。 変拍子や極端なテンポ、ダイナミクスの変化、忙しない展開など、最も OSANNA に似た作品。ドラッギーな悪夢世界ながら、各場面にはクラシカルな調和も。 ねじれた展開なだけに終盤のスピーディな王道ハードロックが際立つ。

  「L'Ultima Notte」(12:24)牧歌調とクラシカルなタッチのあるバラード系ハードロック。 全体にギターに主役を張らせている感じだ。 静かなる雄々しさは LED ZEPPELIN の作風に近い。 アヴァンギャルドで苛烈なインストゥルメンタル・パートが光る。 ヴォーカルと器楽の呼応も敏感だ。 フルートは過激な場面でも陰鬱な場面でも的確に雰囲気作りをサポートする。 序盤のリリカルなアコースティック・ギター、終盤のアーシーなムードを演出するスライド・ギターもいい。音楽の幅を感じさせる傑作。
  
(ZSLT 70014 / MMP 257)


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