イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「CAPSICUM RED」。 70 年結成。 レッド・カンツィアンは後に I POOH へ参加。 作品は一枚のみ。BLA BLA レーベル。
Red Canzian | vocals, guitar |
Paolo Steffan | vocals, bass, piano |
Mauro Bolzan | organ, piano, moog |
Roberto Balocco | drums |
72 年発表のアルバム「Appunti Per Un' Idea Fissa」。
内容は、ベートーベンの作品のアレンジも含む、クラシカルでロマンティックなシンフォニック・ロック。
ハモンド・オルガンが唸りを上げてドラム・ビートとともに突進するようなヘヴィな場面もあるが、どちらかといえば、歳月が磨き上げた黒檀の家財のような気品あふれるピアノと教会風の厳かなオルガン、ささやくような歌唱が中心となった、静かな哀感ある表現が魅力だろう。
ときおり何かを振り払うように荒々しい演奏が爆発し、攻撃的な全体演奏をたたみかけたり、ルーズに引きずるようなプレイをするが、ほとんどは憂鬱に沈み込んでいる。
また、クラシック風の演奏は、あれこれ手を加えるのではなくスコアをそのまま再現している感じだ。
冒頭の「悲愴」の翻案も、ごくストレートに原曲のよさを生かしている。
この A 面一曲目のインストゥルメンタル大作でプログレッシヴ・ロック志向を明言しているといっていい。
そして、終盤の気まぐれでヘヴィな演奏もカッコいいし、最後の盛り上がりもなかなかだ。
(ベースばかりが前面に出る奇妙なミキシングが気にはなる)
B 面がやや地味だが、クラシカル・ロックのファンとしては欠かせない内容だろう。
現行 CD は、ボーナス・トラックとしてシングル盤二枚分が収録されている。
ここでは英語でヴォーカルをとっており、ビート・ポップにややエキゾチックなスパイスを効かせた、なかなかの好作品だ。
プロデュースは、ピノ・マッサラ。
現行の VM の CD は盤起しのため、音がこもり気味。
表題は「固定観念に向けた注意」であり、本作の位置づけと芸術家としての姿勢を示したもの。
内ジャケットのアイドル然としたルックス通り、本作以前のシングル (バッティアート作のものもあり) では、普通のポップ・ロックを演奏し、それなりのセールスもあったようだ。
ベーシストの加入を機に、より知的なサウンドを目指して本作を制作したとライナーに記されている。
「Patetica」(14:23)ベートーベンのピアノ曲「悲愴」をアレンジしたヘヴィかつアヴァンギャルドなクラシカル・ロック。
第一楽章(5:50)では、この時代らしいワイルドなハモンド・オルガンのプレイと歪んだギターをフィーチュアしている。
かみつくように荒々しく酩酊気味の第一楽章を経ると、第二楽章(1:55)アダージョ・カンタービレの有名なテーマが余計にしみじみと響く。
このテーマは、ムーグ・シンセサイザー、ギターのユニゾンのようだ。
第三楽章(6:38)は、アコースティック・ギターとオルガンによるきわめて PROCOL HARUM 風のアンサンブルから、エレキギターも加わった本格バロック調の対位アンサンブルへ発展する。
ギターが暴れるヘヴィ・サイケ調のブリッジは、ジャズ・ギターのアドリヴへと大胆に変化し、ジャズ・ピアノも加わったコンボと化す。プログレらしさ満点の展開だ。
インストゥルメンタル。
「Le Spegnifuoco」(1:55)
クラシックを茶化したようなアンサンブル。オルガン、チェンバロ、そしてワイルドなギターが暴れ、最後は消防車が迫ってくる。インストゥルメンタル。
「消防車」というタイトルは、前曲で広げた芸術的大風呂敷に自ら水を差して自戒するという意味だろうか。
「Equivoco」(5:13)ピアノ伴奏による狂おしいバラードは、ヴォーカルの熱気とともに凶暴なヘヴィ・ロックへ。
静寂と乱痴気騒ぎを行き交う情緒不安定系であり、英国ロックらしさあふれる作品だ。タイトルは「曖昧さ」の意。
「Rabbia & Poesia」(4:13)密やかなギター弾き語りにオルガンが寄り添い、管楽器アンサンブル風のシンセサイザーとピアノがクラシカルな彩をつける。キーボード・サウンドこそ冒険しているが、前曲と異なりイタリアン・ロックらしい牧歌調の安定感がある。ただし、最後だけ OSANNA 化。
タイトルは「怒りと詩」の意。
「Corale」(7:39)予断不能のアヴァンギャルドなヘヴィ・シンフォニック・ロック。
乱調美ながら、イタリアン・ロックらしいおおらかさがいい。
以下ボーナス・トラック。
「Tarzan」(3:04)
「Shangrj-la」(2:47)
「Ocean」(3:05)
「She's A Stranger」(3:19)
(BBL 11051 / VM 050)