アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「CATHEDRAL」。 作品は 78 年の一作のみ。2003 年復活、2007 年新譜発表。
Mercury Caronia IV | drums, gongs, vibes, bells, kettle drums, assorted devices, percussion |
Fred Callan | bass, moog bass pedals, voice |
Paul Seal | lead voice, assorted percussion, bass pedals |
Tom Doncourt | keyboards, glockenspiel, assorted percussion, sounds |
Rudy Perrone | electric & acoustic guitar, nylon guitar, voice |
78 年発表のアルバム「Stained Glass Stories」。
内容は、YES、KING CRIMSON、GENESIS など、70 年代英国プログレの影響下のテクニカルなシンフォニック・ロック。
硬質なサウンドのリッケンバッカー・ベースとヒステリックな弾き捲くりギターによる YES 風アンサンブルの背景で、メロトロンが湧き上がり、混声合唱も入るという典型的な作品である。
躍動感はあるのだが曲調が暗めなので、YES の牧歌調やオプティミスティックな面を抑えて、代わりに KING CRIMSON 風の緊迫感と攻撃性を導入したようなイメージだ。
また、GENESIS そっくりな演奏もある。
おそらく、有名バンドの特徴的な部分を一通りカバーしており、リスナー誰もが自分の好きな有名バンドに似ているところを見つけられるという、いわばコピーの鬼のようなグループなのだ。
音数多く前面に出るベース、ギターに加えて、シンバル・ワークに工夫を凝らすドラマーも健闘している。
録音で若干損をしている感もあるが、忙しなく緊張感のあるアンサンブルを支え、展開のきっかけを作るのはこのダイナミックなドラムスである。
キーボードはやや控えめで、多彩な音色を使い分けるも裏方に徹している感じだ。
ヴォーカルだけは、アンダーソン風ハイトーン・ヴォーカルが見つけられなかったのか、テナーながら渋めの声でありやや表情、声量ともに乏しい。
時おり見せる讃美歌(月影ゲイブリエル?)風の朗唱はノーブルな表情とよく合っている。
これらのパーツを合わせた、変化するリズムとひっかかりが多く折れ曲がる曲調は、まさにプログレのエッセンスを抽出したものだ。
弱点があるとすれば、アンサンブルに凝るあまり、耳に残るようなテーマやメロディがないことだろう。
とはいえ、作曲にはなかなか力が入っており、アコースティックな音も用いて変化をつけながら、流れるように展開してゆく。
特に 2 曲目のインストゥルメンタルは、奇天烈なオリジナリティのある佳曲。
込み入ったアンサンブルを聴き分けてゆくのが好きな方にはお薦め。
もっとも、「何かに似ている」という観点での鑑賞では、すぐに魅力が枯渇しますが。
録音は全体に引っ込んだ感じで今一つ。
ジャケットは再発 CD。
「Introspect」(12:35)激しく曲調・テンポが変化するテクニカル・シンフォニック・ロック。
ギターのヴァイオリン奏法に導かれて今にもジョン・アンダーソンが歌い出しそうだ。
メロトロンは KING CRIMSON 風のリフからバッキングまで目一杯登場する。
終盤の狂乱した演奏がすさまじい。
「Gong」(7:00)緊張感とユーモアが一つになったユニークなインストゥルメンタル。
「The Crossing」(5:55)中期 GENESIS にスクワイアとハウが入ったような作品。
クラシカルな展開もある。
「Days & Changes」(8:35)アカペラ朗唱から始まるリリカルな作品。
今度はかなり YES 調。
ここでもメロトロンが大々的にフィーチュアされている。
「The Search」(11:20)再びメロトロンをたっぷり用いたクラシカルで重厚な作品。
メロトロンのほとばしる内省的なヴォーカル・パートとギター中心の針金細工のようなアンサンブルが交互に現れつつ、ぐんぐんと演奏は進み、やがてシンフォニックなクライマックスへと融合してゆく。
(SYNCD 3)