イギリスのジャズ・ロック・グループ「CIRCUS」。 61 年結成のフィリップ・グッドハンド・テイトのグループ。 KING CRIMSON、CAMEL へ参加するメル・コリンズが在籍。 CIRCUS 名義の唯一作はフォーク系の TRANSATLANTIC レーベルより。
Mel Collins | flute, tenor saxophone |
Ian Jeffs | guitars, vocals |
Kirk Riddle | bass, guitar |
Chris Burrows | drums |
guest: | |
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Keith Bleasby | percussion on 3, 8 |
69 年発表のアルバム「Circus」。
内容は、管楽器をフィーチュアしたジャジーなブリティッシュ・ロック。
ベテラン・ビート・グループが本格ジャズ演奏を試みているいう点で、初期のジャズロックと呼べるかもしれない。
ギターとベースはエレクトリックが主だが、演奏スタイルはモダン・ジャズをなぞるようなものであり、いわゆるクロスオーヴァー色はない。
そして、ヴォーカル・ハーモニーは、まさしく 60 年代英国ビート・スタイル。
楽曲にカヴァーが多いのは、本領である即興演奏の素材を求めたためだろう。
幻想的なクールネス、デリケートにして頼りなげな風情と拙くも若々しい即興演奏への挑戦が魅力。
サックスとフルートはさすがに明快なプレイが冴えており、ギターもそれに次ぐテクニシャン。
イージー・リスニング調からたなびく英国情趣を汲み取れればしめたもの。
TONTON MACOUTE が気に入ればこちらも。
ちなみに、アルバム・ジャケットのドラマーは前任者だそうだ。
プロデュースはレイ・シンガー。
「Norwegian Wood」(7:20)
ジョン・レノンの名曲をややアシッドにアレンジ。
ファズ・ギターをフィーチュアし、中盤のアドリヴ大会でサックスとともに盛り上がる。
「Pleasures Of A Lifetime」(8:18)インストゥルメンタルをフィーチュアした幻想的でロマンティックな傑作。
7th を交えたアルペジオが、なぜか初期 KING CRIMSON 風。
そして、サックスがささやき、空ろなヴォーカルをギターとフルートがなぞると、McDonald & Giles と同じ世界が開けてくる。
中盤、8 分の 5 拍子で走るサックス・ソロがカッコいい。
この「ひんやり感」はまさに 60 年代末期英国のもの。
コリンズ作。
「St.Thomas」(3:36)
もちろんソニー・ロリンズだが、ここではなんとフルート、ギターでの演奏。
ベースはダブル・ベース。
なんというか、アーサー・ナイマンかなんかのカヴァー演奏のようである。
コリンズ作。
インストゥルメンタル。
「Goodnight John Morgan」(1:50)
スタン・ゲッツかレスター・ヤングを思わせるノスタルジックでメローなサックス・ソロによる"埋め草"。
ボサ・ノヴァ調ではあるが、ギターのバッキングなど完全にモダン・ジャズ。
個人的には好みです。フェードアウトはあんまりです。
コリンズ作。
インストゥルメンタル。
「Father Of My Daughter」(3:21)
メロトロンに聴こえてしまうフルートを用いたソフトなフォーク・ソング。
コリンズ作。
メル・コリンズ氏、ジャズ畑にもかかわらず、フォーク・ソングが好きなようだ。
「II B.S.」(6:33)チャールズ・ミンガスのカヴァー。
スリリングなテーマのモダン・ジャズをモチーフにしたサイケデリックな即興である。
奔放なソロもいいが、サックスとギターのユニゾンとベース・リフが絡むテーマがカッコいい。
インストゥルメンタル。
「Monday Monday」(4:23)フルートをフィーチュアしたメロディアスでソフトなジャズロック。
曲調に沿ったのか、珍しくドラムスが暴れない。
特にすごいことをしなくても、バランスの取れたアンサンブルだけでカッコいいというブリティッシュ・ロックの見本である。
フルートはジミー・ヘイスティングスを思わせる軽やかさをもち、ブルーノートの響きでは一歩上をゆく。
ジョン・フィリップス(THE MAMA'S AND THE PAPA'S)作。
「Don't Make Promises」(4:44)ギターのアルペジオ伴奏がすてきなフォーク風の歌もの。
ベース、ドラムスと次第に加わってゆき、間奏のあでやかなフルート・ソロを経て、一気にテンポ・アップする。
ギター伴奏もジャジーなコード弾きへと変化し、加速するが、律義さは変らず。
ティム・ハーディン作。
(TRANSATLANTIC TRA-207 / ESMCD 926)