ハンガリーのプログレッシヴ・ロック・グループ「COLOR」。67 年ボコル三兄弟が結成。 作品は二枚。 81 年解散。
Bokor Attila | vocals, gong, bells, drums |
Bokor Gyula | vocals, piano, Fender piano, cembalo, organ, moog, Roland synthesizer |
Bokor Tibor | vocals, Mellotron, bass, acosutic guitar |
Lamer Emil | guitar, vocals |
Polya Laszlo | vocals, cello |
Felkai Miklos | guitar on 11 |
guest: | |
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Bergendy Istvan | soprano sax |
78 年発表の第一作「Color」。
内容は、カラフルなキーボードとビートポップ風のソフトなコーラスをフィーチュアした優しげなシンフォニック・ロック。
曲によっては、チェロやサックスもアクセントに用いており、特にチェロの存在がクラシカルな格調を与えている。
演奏は、おっとりと情緒的な場面を主にシャープなプレイも交えた、プログレらしいもの。
オルガン、シンセ、チェロらに拠るクラシカルな曲調と、フェイズ・シフタでゆらぐエレピとコーラスによる AOR 調が混在するところは、いかにも 70 年代終盤である。
そして、どちらかといえばテンポや調子の変化によるけれん味よりも、誠実で優しいメロディと音の印象が強い。
テーマとなる旋律は、おそらくトラディショナルなものに西洋音楽の要素が交じったものであり、原語の響きも手伝い非常に牧歌的である。
曲によっては、リズミカルなポップスやソフト・ロック調にも接近する。
ヴォーカルは四人がとり、ほぼ全編コーラスによるハーモニーつき。
このコーラスがビートポップ風味を強めている。
さて、キーボードはストリングス系のシンセサイザーやオルガンによるバッキングからピアノ、シンセサイザーの華麗なソロまで演奏の主役といっていいだろう。
多彩にして堅実な演奏であり、音色もクロスオーヴァー系の音から EL&P 風のムーグ、果てはバロック風のチェンバロ、ピアノまで豊富である。
端正なピアノの演奏からして、やはりスタイルの基本はクラシックなのだろう。
ベーシストがメロトロンも兼任しており、このツイン・キーボードが織り成すたおやかなアンサンブルが、演奏全体を品のよいものにしている。
また、ギターとベースは優しげな音が主ななかでダイナミックな音でアクセントをつけており、流されがちな曲調にメリハリを与えている。
ギターは、音のわりには表現そのものはなかなかメロディアスだ。
ベースは、ときおり強いアタックの積極的なフレージングを見せ、YES など英国プログレッシヴ・ロックのストレートな影響を感じさせる。
また、ドラムスはリズム・キープに徹しており、激しいプレイでせめぎあうような場面は多くない。
8 ビートの強調よりもハイハットやシンバルを多用して跳ねるような躍動感を演出するプレイは、この時代ならではのものだろう。
さほど技巧に優れるわけではないのだろうが、鋭いプレイとメロディアスな演奏の配置がうまく短い時間にドラマを凝縮している。
また各パートの音質の特性もよく活かしている。
ヴォーカルとメロディ・ラインはかなり野暮ったく感じられるかもしれないが、サウンドや演奏そのものは英国本家に勝るとも劣らない。
最終曲は挑戦的なムードのある劇的な大作。
ややダークでクラシカルな演奏から、牧歌的で優美な演奏まで多彩なシーンが散りばめられている。
エンディングのアップ・テンポの演奏がカッコいい。
4 曲目は、YES を思わせる透明感あふれるロックンロール。
「Almatlanul」(4:03)大河の流れのようなオルガン、ギターによる分厚いテーマを用いた叙情的なシンフォニック・ロック。
朴訥さにして誠実。
アコースティック・ギターとピアノがさざめく中間部が、イタリアン・ポップス風のエレガンスを感じさせる。
「Harommilliard」(4:02) YES や GENESIS をややまろやかにしたようなシンフォニック・ロックの傑作。
いかにもなムーグのソロからクラシカルなチェロとベースのアクセントあるアンサンブルへと進む変転の妙というべきオープニングは、プログレの醍醐味たっぷり。
しかしながらヴォーカル・パートはあまりに 60 年代風のビート調であり、一種ミスマッチの面白さがある。
間奏部のシンセサイザーのプレイやヴィヴァルディ風のストリングス・アンサンブルなどもプログレらしいけれんみがある。
「A Nap Siet」(4:48)7th のトーンのせいかややジャジーで AOR 調に感じられるナンバー。
ギターがフィーチュアされている。
間奏のピアノは、ロマンティックなクラシック・タッチ。
シンセサイザーによるテーマが高鳴り、ベースが唸りオルガンが迸るヘヴィな演奏へと進むと、気分はシンフォニックに盛り上がる。
しかしながらギター・ソロは、ヴォーカル・パートの延長のジャジーなポップス調である。
「Kolcson」(3:31)派手なシンセサイザー・ソロから幕を開ける一気呵成の快速ロックンロール。
がんばるベースとコーラス・ハーモニー、シャープなリズムにキーボードによる速弾きオスティナートとくれば、もうサード・アルバムの YES そのものである。
荒々しくもメロディアスに吼えるチェロ、華麗に高音域へとポルタメントするムーグがカッコいい。
「Ikaruszi Zuhanas」(3:48)賛美歌調のバラード。
「Elkepzelt Vilag」(3:53)フォーク・ソングをそのままエレクトリックに処理したようなナンバー。
キーボードの存在が大きい。
「Jo Lenne Tudni」(3:43)ジャジーな西海岸風のポップ・ナンバー。
リラックスした音である。
ギターとエレピのインタープレイは、この時代のフュージョン・グループのよう。
デヴィッド・サンボーンのようなサックスも登場する。
「Panoptikum」(14:09)テクニカルなジャズロックからクラシック、AOR まで間口の広さを見せる超大作。
アルバム全体のリプライズ的な内容である。
「Vallomas」(3:32)ボーナス・トラック。
「Fenyes Kovek」(3:44)ボーナス・トラック。
「A Bohoc」(4:38)ボーナス・トラック。
(SLPX 17567 / HCD17567)