イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「DRUID」。 70 年結成。 作品は二枚。76 年解散。 YES の牧歌幻想調を取り出したフォーク風プログレ。
Neil Brewer | bass |
Andrew McCrorie-Shand | keyboards |
Cedric Sharpley | drums, percussion |
Dane | guitar, vocals |
75 年発表の第一作「Toward The Sun」。
内容は、イギリスの気候風土の美しさを称える雅歌の如き、センシティヴな「癒しの」ロック。
特徴は、フォーク・ロック風のたおやかなハイトーン・ヴォーカルとコーラス、背景をおおうメロトロン、メロディアスなギター、テクニカルなリズム・セクションなど。
命の息吹を高らかに歌い上げるアンサンブルは、ひたすら美しく、とりわけ、全編通じて流れる朝焼けの田園に漂う霧のようなメロトロンの響きが、郷愁をかきたてる。
かように繊細な音遣いではあるが、弱々しいばかりではない。
ギターやオルガンのプレイは、メロディアスながらも、なかなかハードである。
また、まろやかな音色の中で、尖った音色のベースが目立っている。
透き通るようなコーラスやメロトロンの醸し出すドリーミーな雰囲気を、ギターとリズム・セクションが引き締めて、メリハリある演奏に仕立てているといえるだろう。
凄まじい技巧を見せつけるというタイプではなく、あくまで安定感をもってメロディをリードしてゆく演奏である。
また、決してプレイが攻撃的にならないのも特徴だろう。
辛口にいうならば、演奏がメロトロンに頼り過ぎな上に、ミドル・テンポ一本やりの演奏が一本調子。
しかし、ターナーの風景画のような田園幻想が好きならば、問題ない。
ヴォーカルの歌唱スタイルとコーラス、そして強めにミックスされたリッケンバッカー・ベースの鋭いピッキングなどは、ダイレクトに YES に通じるもの。
特にコーラスは、みごとに YES の特徴をつかんでいる。
オルガンのプレイにも、若干そういう意識があるようだ。
YES フォロワーということで残ってきた作品であることは、間違いない。
テクニカルなアンサンブルやシンセサイザーによるプログレッシヴな音づくりも見られるものの、ピアノやメロトロンをバックに、ヴォーカルが優しげに歌い上げてゆくようなシーンこそ本質に違いない。
プロデュースはボブ・ハリス。
ところでゲストと思われるサックスはどなた?
まさかメロトロン?
「Voices」(8:13)「The Yes Album」期の YES によく似た「尖った」ロックンロールと叙情的なサウンド・スケープをフル回転させるファンタジックな力作。
前半は対位的な演奏でたたみかけ、中盤からはヴォーカル、メロトロンとともに夢想の世界を旅する。
3 分過ぎでようやく現れるヴォーカリストの繊細な表現に息を呑む。
「Remembering」(5:25)アコースティックな透明感と幻想味あふれるバラード。
高音のコーラスが美しい。メロトロンもたっぷり。中音域のハーモニーも YES そっくり。
中盤にコンパクトながらも溌剌と躍動するアンサンブルを配して変化をつける。
幻想的なサウンドは、初期の GENESIS にも通じる。
「Theme」(5:23)ミディアム・テンポのジャジーなインストゥルメンタル。
メロトロンに加えて、エレクトリック・ピアノやサックス、シンセサイザーをフィーチュア。
オルガンのプレイにきらめきあり。
ギターだけはジャズ風ではなくパストラルながらもロック・スタイルを貫く。
ここまでで明らかになった得意のファンタジー・テイストにジャズロック調を交えた佳品である。
「Toward The Sun」(5:04)
70 年代中盤らしい、ウエスト・コースト風味も効かせたフォーク・ロック。
いわば、YES による EAGLES のカヴァーである。
とはいえ、デリケートな色合いはやはりイギリス風。
ベースやシンセサイザー、エンディングの一瞬のアンサンブルなど、「らしさ」は満載。
「Red Carpet For An Autumn」(3:11)
ニンフが舞い、牧神が竪琴を奏でる幻想世界。
「Dawn Of Evening」(10:02)
堂々とした歩みを見せるシンフォニック大作。
ギターを中心に迷いのないプレイで悠然と進み、デリケートな表情もしっかりと描いている。
夢のようなとりとめのなさをうまく演出できている。
ヴォーカル・パートにもう一つ開放感もしくは分かりやすい華があれば、大傑作になったはず。
「Shangri-La」(10:12)
冒頭、このまま夢幻テイストが強まって終わると、ほとんど記憶に残らないのではと危惧させるが、ヴォーカル・パートに入るなり、バラード調と賛美歌調が交錯し(すなわち YES 化し)、へヴィなベースがまぜっかえす、なかなかすてきな展開となる。
アコースティック・ギターのストロークや、クラシカルなオルガンも盛り込まれて緩急の変化もあり、何にせよ、小刻みな動きが目を覚まさせる佳曲である。
ヴォーカリストも、ガブリエルばりの巻き舌や表情の変化を見せる。
この歌メロが前曲にあればさらに盛り上がったかも。
(EMC 3081 / TOCP-7751)