ロシアの作曲家「Eduard Artemiev (Эдуа́рд Арте́мьев )」。 1937 年生まれ。 ピエール・ブーレーズや英国プログレ影響の下、タルコフスキー映画のサウンド・トラックや五輪テーマなど多数の作品を手がける。 大作曲家スクリャービンのイニシャルから名付けたロシア初の国産シンセサイザー ANS を使用。
"BOOMERANG" | on 1-7 | Ensemble "MELODY" | on 4,7 |
State Orchestra Of Cinematography | on 4,5,7 | Gennadiy Trofimov | vocals on 2,4,5,7 |
State Russian Choir | on 1,4,5,6,7 | State Moscow Choir | on 1,3,4,5,6,7 |
Children's Choir Of Moscow Choir College | on 3 | Zurab Sotkiava | vocals on 9 |
Galina Lebedeva | vocals on 9 | Nicolay Noskov | vocals on 9 |
84 年発表のアルバム「Three Odes(Ode to Herald of Good Olympic Cantata)」。
1984 年発表の LP 「Ода Доброму Вестнику」(1980 年開催のモスクワ五輪の開会/閉会式で演奏されたカンタータ作品)の内容を「頌歌第一番」として、「頌歌第二番」、「頌歌第三番」を追加した編集盤。
(ここでの「頌歌」は、共産党書記長ではなく、五輪競技選手を英雄に見立てて讃える「頌歌」のはず)
内容は、メカニカルなシーケンスが唸りを上げ、人力ドラムスが地響きを立て、独特のアナログ・シンセサイザーが輝かしき天上の音色をムソルグスキーばりのエネルギーとともに吹き上げる大仰極まりないシンフォニック・ミュージック。
HELDON に負けないテクノなパワーを誇示する快作である。
豊麗華美なエレクトリック器楽に加えて、テノールや混声合唱も放り込まれて、荘厳さに拍車をかけている。
国威発揚というか国力掲揚というかとにかくリスナーを高揚させることが音楽の第一の目的であるらしく、曲調は、徹頭徹尾気高く勇ましい。
ただ、押し捲るだけではその効果がないことは分かっているらしく、残響音を活かしたゆったりと神秘的な場面も用意してメリハリをつけている。
バンドとしてのノリやパンチも問題なし、というかアクセントが強く派手すぎるくらいの演奏である。
冷ややかな音色や電子音独特の遠慮のない荒っぽささえ厭わなければ、かなり魅力的な作品だと思う。
アルテミエフは作曲に携わり、演奏は「BOOMERANG」が合唱やオーケストラのサポートを得ながら行っている。
ハンガリーの EAST やドイツのシンセサイザー音楽ファンにはお薦め。
「頌歌第二番」は、中央アジア風のエキゾチズムを強調したリズミカルな作品。
「頌歌第三番」は優美な映画音楽風の作品。
個人的に、本再発 CD のマンガっぽいジャケットが気に入っている。
(下記の曲名は原盤ではキリル文字によるロシア語表記)
「A Torch」(3:25)
「Herald Of Good」(6:59)
「Harmony Of The World」(3:41)
「Sports - You Are A Perpetual Progress」(4:28)
「Beauty Of The Earth」(7:39)
「Appeal」(3:46)
「a) Interlude」(3:15)
「b) Sports - You Area A Peace」(5:28)
「Phantom From Mongolia」(9:50)
「There & Here」(8:32)
(Melodia C60 21277 005 / ELCD 030)
J. Rozhdestvenskaya | vocals |
Yu. Bogdanov | synthsizer, guitars |
A. Zakirov | bass |
S. Bogdanov | drums |
I. Len | keyboards |
S. Saveliev | keyboards |
85 年発表のアルバム「Warmth Of Earth(Тепло Земли)」。
内容は、スペイシーなシンセサイザー・オーケストレーションと女性ヴォーカルによるメロディアスな歌唱をフィーチュアした重厚華麗なシンフォニック・ロック。
アルテミエフは作曲に携わり、演奏は「BOOMERANG」なるグループが行っている。
きらめくサウンドで飛翔する格調高きシンフォニーを、独特のもったりした HR/HM 調、デジタル・シーケンスによるテクノ調、ソウル/ディスコ、ローカル色の濃い哀切のバラードなどを交え、ど派手で重量感ある演奏でぶちかましている。
バンド主導で突っ走る演奏は迫力満点。
しかしながら、おそらくは国家予算も使ったプロジェクトのこれだけグレードの高いサウンドにもかかわらず、なぜか「辺境系」の音であることがすぐ分かる。
これは、ロシア語の響きとなぜか演歌調の濃厚な哀愁メロディ(不思議なことにスペインとロシアはなぜかご当地ポップスが日本の演歌によく似ている)によるところ大だが、それだけではなく、トータルに独特の垢抜けなさがあると思う。
また、85 年というよりは 70 年代半ばのメイン・ストリームの音に近いところも興味深い。
女性ヴォーカリストの歌唱は妙にドスが効いており、スタジオでバンドをし切っていたのではと容易に想像できるところが、BRUFORD の第一作のアネット・ピーコックに似ている。
ギターのプレイは、サウンドこそ現代的だが基本的なスタイルは DEEP PURPLE のような 70 年代英国ハードロックを追いかけていると思う。
ゴージャスなエフェクト・サウンドはハンガリーの EAST に近い。
ベースがギター並みに弾きまくるところも特徴的。
キーボード・サウンドは、クリアーで重量感があり、テーマである宇宙=未知の世界からの俯瞰といったイメージをうまく表現できていると思う。
アナログ・シンセサイザーらしいニュアンスにあふれるシングル・トーンのメロディがいい。
強いていえば 70 年代終盤の EL&P や Vangelis と通じる音である。
作詞は、ユーリー・リトキュー。
(下記の曲名は原盤ではキリル文字によるロシア語表記)
「Birth Of Earth」(3:00)
「Who I Am?」(6:37)
「Warmth Of Earth」(3:52)
「Meeting On The Milky Way」(3:46)
「Farewell」(3:13)
「Expectations」(4:20)
「Rekkens」(5:22)
「Hope」(3:40)
「Where Are You ?」(5:45)
「Lonely Sail」(3:43)
「Finale - Hymn To Human Being」(9:11)感動大盛り上がり大会の終曲。
(Melodia C60 23029 000 / FGBG 4309.AR)