フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「EIDER STELLAIRE」。80 年結成。87 年解散。作品は三枚。MAGMA 直系 ZEUHL ジャズロック。リーダー格のドラマーは OFFERING にも参加。
Patrick Singery | bass |
Michel Le Bars | drums |
Jean-Claude Delachat | guitars |
Pierre Gérard-Hirne | piano, organ |
Véronique Perrault | vocals |
guest: | |
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Marie-Anne Boda | flute, vocals |
Michel Moindron | tenor sax |
81 年発表のアルバム「Eider Stellaire」。
内容は、低音部のリードによる反復パターンが生む凶暴さが特徴的なヘヴィ・ジャズロック。
明らかな MAGMA フォロワーであり、フレットレス・ベースのサウンド、ポルタメントのプレイや扇動的なドラムスやヴォーカル処理などはそっくり。
ただし暴力的なごり押しとともにデリケートなタッチもあるので、そういうところではギターやキーボードの音を中心にメインストリームのジャズロック、フュージョン・サウンドに接近する。
ギターが饒舌でキーボードがジャジーで多彩なところは本家とは異なる。
低音の強調とパーカッシヴなプレイが生む圧迫感とカラフルなアンサンブルがバランスするのは MAGMA 系には珍しい。
キーボードやギターのしなやかできらめく音が天から地中深くに射し込む一筋の曙光のように感じられる。
したがって塗りつぶされた暗黒というよりは黒く透き通って輝くようなイメージのサウンド、パフォーマンスである。
演奏面で存在感を放つのはテクニカルで音数の多いドラムス。
全体に、表現に暴力性や邪悪さを超えるシャープでクールなタッチとファンタジーの甘みがある。
そして、本家と同じ音のクセにもかかわらず、エキセントリックさや逸脱感よりも直線的に緊迫感を高めてゆく明快な演出を重視しているためとっつきやすい。
エレクトリック・ピアノのプレイがチック・コリアによく似ているのはこの時代ならではだろう。
「Onde」(8:38)初っ端から MAGMA 節全開の力演。
ヘヴィでミニマルな展開は MAGMA そのものだが、元気だったころのロバート・フリップ張りのアナーキーなギターにフリー・ジャザーのサックスがオーヴァーラップするとほぼ KING CRIMSON になる。
「Arctis 6e Éphéméride」(7:06)サウンド要素はそのままにファンキーなグルーヴを追求。
いっぱいいっぱいなギター・アドリヴがなぜかいい。後半は思いを確かめるようにテンポを落としてやや無機的でねじれたアンサンブルとなる。
「Légende」(5:45)普通のフュージョンのような開放感、高揚感はあるのに、どこか病的な癖を感じさせるジャズロック。
「Tetra」(6:30)骨太かつスリリングな作品。ハードロック的なギター・プレイがカッコいい。
「Nihil」(7:30)修行か呪文のような作品。非常に緩やかなクレシェンド。ピアノはアコースティック。
危うさ。
前曲もそうだったが突然のテンポ・チェンジが得意技か。
「Nihil」(10:54)CD ボーナス・トラック。別ヴァージョン。女声コーラスがカンタベリーっぽい。拡大した分、イメージも広がっている。こちらのほうがいい。
(K001 / SOLEIL ZEUHL 30)