イギリスの鍵盤打楽器奏者「Frank Ricotti」。49 年生まれ。 NATIONAL YOUTH JAZZ ORCHESTRA でのビッグ・バンド、ゲイリー・バートン影響下のジャズロックを経てロックのアルバムに数多く参加する。
Frank Ricotti | vibraphone, alto saxophone |
Chris Spedding | guitar |
Chris Laurence | bass, electric bass |
Bryan Spring | drums |
69 年発表のアルバム「Our Point Of View」。
内容は、現代音楽やニューロックを強く意識したジャズ・ロック。
GARY BURTON QUARTET と共通するアプローチであり、ヴァイブとエレクトリック・ギターをフィーチュアする。
作品はカヴァーが主。
選曲がよく、粋で暖かみのあるポップなテーマのおかげで、いくつかの曲ではセンチメンタルでなおかつイージー・ゴーイングというポップ・ミュージックらしい優れたグルーヴが生まれている。
この緩さは、発展途上のロックのものであり、ラジオ向けポップスのパッケージ化された完成度やモダン・ジャズのアカデミックな厳格さとは一線を画している。
口ずさめるような親しみやすさと、胸を締めつけ思わず叫びを上げたくなるような切なさが一つになっている。
背景へのなじみやすさ、アクセスのしやすさという面でラウンジ・ミュージック、アンビエント・ミュージックとしての機能性も高い。
その一方で、変拍子パターンを大きく取り上げたり、ノイズを強いアクセントとして多用するなどアヴァンギャルドなアプローチも見せる。
一方、各プレイヤーのソロそのものには若干の力量不足を感じる。
しかしながら、ジャズの技量ではなく音そのものの面白さの希求や素朴な興味への執着といった、あたかも閉塞した部屋の窓を開け放つような姿勢が、この時代のロックの感覚とみごとに一致していると思う。
スペディングがぶちかますバッキングとアドリヴの、奇天烈にして味わいある「中途半端さ」こそ、本作品を象徴するファクターである。
すさまじい名盤というわけではないが、時代の空気を封じ込んだ逸品だと思う。
とにかく、シバリのない、自由な空気がたいへんに心地よいアルバムです。
リコティは 6 曲目では繊細なタッチのアルト・サックスも披露。
なぜか純ジャズで迫っているが、これがまたこのアルバムではみごとに映える。
プロデュースはデヴィッド・ハウエル。
山下毅雄、大野克夫のファンにもお薦め。
「Late Into The Night」(3:51)スタイリッシュなテーマがいいロック・ジャズ。
ヴァイヴ、ギター、ドラムスのソロ。クリス・スペディング/ピート・ブラウン作。
「Three Times Loser, Three Times Blueser」(5:29)ピエール・モエルラン?ミレーユ・ボエ?と驚かささる変拍子風のリフ、そして挑戦的なファズベースとぶっ飛んだスライドギター。中盤にドラムス・ソロ。
スタン・トレイシー作。
「Don't Know Why」(6:29)抑えめのヴァイヴがエレクトリック・ピアノのニュアンスを醸し出すヒップなナイト・ミュージック風の作品。ベース・ソロがいい。
ブライアン・ミラー(ROCK WORKSHOP、ISOTOPE、TURNING POINT)作。
「House In The Country」(3:26)イージーリスニング風のテーマが印象的な作品。
ヴァイブとギターが互いに独走を決めようと躍起になる。
アル・クーパー作。
「Abbadat The Cat」(4:04)スピード感はあるがモダン・ジャズ寄りの作品。ブライアン・ミラー作。
「Dark Through The Sun Shines」(8:33)サックスをフィーチュアしたリリカルな作品。
バッキングのギターはデリカシーがないのが良いのか悪いのか。
ブライアン・ミラー作。
「Walter L」(5:54)ゲイリー・バートン作。
(CBS 52668 / COLUMBIA 494440 2)