イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「GLI ALLUMINOGENI」。 70 年結成。キーボード・オリエンティッドな第一作は解散後に発表された。93 年再結成、二枚のアルバムを発表。
Patrizio Alluminio | lead vocals, hammond organ, piano, prepared piano, pipe organ, harmonium, electric piano |
Daniele Ostorero | drums, prepared drums, timpani |
Enrico Cagliero | electric & acoustic guitar, 12 strings, bass |
72 年発表のアルバム「Scolopendra」。
FONIT CETRA との製作面での衝突を端を発してグループは解散、本作はその後に発表された。
グループ名を見ても明らかなようにキーボーディストの目指した音楽を実現するためのユニットだったようだ。
内容は、キーボードを大きくフィーチュアしたシンフォニックな歌ものビートロック。
キーボード・トリオという編成にふさわしい、チャーチ・オルガンが唸りを上げる大仰なプログレらしい展開の作品もあるにはあるが、全体、特に A 面の作風があまりに多彩なため特徴を一言で表現しにくい。
インストゥルメンタル・パートではオルガンが大いに活躍するし、1 曲目の序盤のようにプログレらしい大掛かりな展開もある。
しかし、1 曲目以外の A 面の 三曲は、軽めのハードロックや管弦を交えたイタリアン・ポップスといった「歌もの」である。
そして、その作風は、ブギーやロックンロールにクラシカルかつジャジーなキーボードを無造作に放り込んでヤク味を効かせる、つまり 70 年代的な音の整理やグレードアップをほとんど経ていない、ほとんど 60 年代そのままのものなのだ。
したがって、オルガンのプレイも PROCOL HARUM のような哀愁テーマを奏でるのが主である。
一方、本作品を自信を持ってプログレに位置づけるための証左となる作品、すなわちワイルドに暴れるギターとともにクラシカルに盛り上がる OSANNA、NEW TROLLS ばりの作品は、B 面 1 曲目に用意されている。
バタバタしたドラムスの音がもう少しよく取れていれば印象はかなり変わるだろう。(ドラムスのプレイそのものは多彩であり、悪くない)
もちろん A 面の作品含め、すべての曲にイタリアン・ロックらしい牧歌調とロマンティックなクラシック/オペラ・テイストがあり、あえてプログレという範囲に収めて考えずとも味わいあるいいポップ・アルバムではある。
オルガンが軽快に走るロックンロールを聴いていると、THE NICE や初期の EL&P の芸風の一部分に近い気もしてくる。
期せずして覇王キース・エマーソンの在籍したこの二つのグループの芸域の広さと深さを確認することになった。
Scolopendra というのは「サソリ」のことかと思ったが、ジャケはどう見ても「ムカデ」である。
「La Natura E L'Universo」(7:58)大仰なイントロダクションだが、メイン・パートはジャジーな歌ものである。オルガンによるジャジーなオブリガート、安定したジャズ・ビートでのインプロヴィゼーションが抜群にカッコいい。エンディングは唐突に長閑なフォークロックに変化。
「Scolopendra」(3:43)クラシカルではあるがアーシーでアコースティックな感覚の歌もの。モノローグ風のヴォーカルを教会風のオルガン、ストリングスがともにドラマチックに盛り上げる。
「Che Fumo C'È」(2:47)シャウトの似合うヴォーカリストによるアップテンポのブギー。バッキングはワイルドなオルガンが固める。
「La Stella Di Atades」(4:39)豊麗なる管弦楽を背負った映画音楽風の劇的な歌もの作品。自信に満ちた力強い歌唱、クラシカルなチェンバロのオブリガート、バッキングがいい。
「Thrilling」(7:07)1 曲目の序盤をそのまま膨らませたような、落差の激しいスペイシーで荘厳なプログレッシヴ・ロック。チャーチ・オルガンあり。ギターも咆哮する。
「Cosmo」(3:34)オルガン・ブギー。
「Pianeta」(6:54)
(FONIT CETRA LPQ 09065 / CDM 2029)