イギリスのプログレッシヴ・ロック・ユニット「Godley/Creme」。元 10CC の変人コンビ。77 年結成。作品は七枚。初期作品はプログレ・ファン対応可。
Kevin Godley | drums, other instruments |
Lol Creme | keyboards, guitars, other instruments |
78 年発表の第二作「L」。
謎のギターアタッチメント GIZMO を巡って 10CC と袂を分かった二人による傑作。
尖がり捲くった音をこれでもかと息苦しくなるほどにぎゅう詰めにして、10CC と同様のジャジーでノスタルジックでメローなヴォーカル、メロディで仕上げている。
ソフトなハーモニーに見え隠れするルーニーでヤバい音が気になりだすと、そのソフト・タッチもなんだか妙に変態っぽく聞こえてきて、このムズムズする感じが本作の特徴だろう。
そしてオープニング曲の中盤から一気の攻勢である。
コギレイで粋な感じなので軽い気持ちで付き合い始めた彼氏の家に行ったら、ロウソクやらムチやらがいっぱい転がっていたみたいな感じである。(そうか?)
10CC の名品「Rubber Bullets」などにあるポップなのに狂気じみた感じはこの二人によるものだと思う。
早送りしたカセットテープから出る変な音やめちゃくちゃに弾いたピアノの音など、誰もが知っている雑音一歩手前みたいな音をたくさん使って、ポップスを歌っているというといいかもしれない。
音に対する感覚が並外れて鋭敏でどんな音でも素材にできてしまう一流エンジニアなのだろうが、その志向を支えるのがじつに子供のような狂的な躁状態やサディスティックな毒気であり、それらがそのまま音に込められて飛び出してくる。
子供番組の BGM やジングルにはまりそうだが、こんなの聴いて育ったらロクなものにはならないだろう。
ただし、そのマニアックに製作された音の口当たり含め、そこから出てくる「変さ」が明快なので、音響マニアでなくともすぐに「フツウでない」ことが分かって楽しい。
ある意味もったいぶらない素直な(フツウではないが)アプローチなわけである。
もちろん、それだけだと単にチャイルディッシュな奇天烈ポップスで終わってしまうが、そこはそれ、皮肉、辛辣さ、ノイローゼ、スケベ、オヤジギャグなんかもたっぷり盛り込んで、大人の視聴に耐えるようになっている。
また、へヴィでノイジーなインダストリアル系の音というのもこの時期には新しかったような気がする。
さて、昔から打楽器系のミュージシャンというのは、わりと素で変な人が多いような気がしているが、ケヴィン・ゴドレイもその典型の一人である。「Foreign Accents」などややマトモではないような気さえする。
フランク・ザッパ、GENTLE GIANT のファンには絶対のお薦め。
ONE WAY からの CD は次作「Freeze Frame」との 2in1。ちゃんと裏ジャケもインナーに入ってます。
がっちりした完成度は「Freeze Frame」かも知れないが、キxガイ全開度合いでは本アルバムに軍配が上がるだろう。
ジャケットはオリジナル LP。
「The Sporting Life」(7:25)
「Sandwiches of You」(3:17)
「Art School Canteen」(3:00)
「Group Life」(4:11)変態ポップというような表現はよく見られるが、これは変質者ポップス。
「Punchbag」(4:44)
「Foreign Accents」(4:37) GENTLE GIANT のケリー・ミネアやレイ・シャルマンと同類であることが非常によく分かる。サックスはアンディ・「チャルメラ」・マッケイ。インストゥルメンタル。わたしは一番好きだけど、ははは。
「Hit Factory / Business is Business」(7:08)後半のけだるくもケバい New wave っぽさがたまらなく懐かしいです。
(MERCURY 7231 427 / One Way 314 549 275 2)
Kevin Godley | lead vocals, backing vocals, hand clap, xylophone, drums, congas, percussion |
Lol Creme | backing vocals, electric guitar, bass, piano, hand clap, acoustic guitar, gizmo, lead vocals, moog, bass, electric piano, xylophones, harmonica, whistle, percussion, snare drum |
guest: | |
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Harricane Smith | trumpet on 1, french horn on 1 |
Phil Manzanera | electric guitar on 2,5,6, acoustic guitar on 2 |
Paul McCartney | backing vocals on 8 |
79 年発表の第三作「Freeze frame」。
内容は、歪だが妙に印象に残る音を駆使して作り上げた珠玉のプログレ・ポップ。
ロバート・フリップのソロ作品同様、プログレ癖を引きずったままのバリバリニューウェーヴである。
鍵盤パーカッション(クレジットの鉄琴以外に木琴もありそう)系の音と狂的なギズモ・サウンド、異常な音響操作、編集などによってメロディアスなヴォーカル・ハーモニーによるノスタルジックなオールディーズ風のポップスが凍結して壊れてゆくのがなんとも残酷だ。
この二人は音楽サディストなのだろう。
すでにさまざまなところで語られているが、3 曲目を筆頭にヴォーカル処理のすさまじさ(これは作業が「すさまじい」ということで、できあがったものは「すさまじい」というより徹底して「変」というべきだろう)は本アルバムの特徴である。
音楽としての完成度はやたらに高いと思うが、リスナーが釘付けになるのはある種の怖いもの見たさのせいだと思う。
いわゆるプログレとやや異なるのは、情けなくカッコ悪く気持ち悪い音でスタイリッシュに決められるところだろう。
5 曲目やキxガイ全開の 6 曲目のような作品は 70 年代前半にはありえなかったと思う(グラム系にあったかもしれないが)が、正しくプログレッシヴである。
個人的に最高にアーティフィシャルでクールなバンド・サウンドといえばこのアルバムを思い出します。
フランク・ザッパ、GENTLE GIANT のファンにはやはりお薦め。
ONE WAY からの CD は前作「L」との 2in1。
「An Englishman In New York」(5:33)
「Random Brainwave」(2:37)
「I Pity Inanimate Objects」(5:21)
「Freeze Frame」(4:45)売れセン。
「Clues」(5:22)
「Brazilia (Wish You Were Here)」(6:06)変拍子 DEEP PURPLE か? 大傑作。
「Mugshots」(3:53)
「Get Well Soon」(4:35)独特の揺らぎがいい名曲。
(POLYDOR 5027, 2442 166 / One Way 314 549 275 2)