ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「HANUMAN」。 71 年結成。作品は一枚。グループ名は猿の顔をしたインドの神様より。
Wolf-Rüdiger Uhlig | organ, keyboards, vocals on 1,2,4 |
Peter Barth | flute, alto sax, vocals on 3,5 |
Jörg Hahnfeld | bass |
Thomas Holm | drums |
71 年発表のアルバム「Hanuman」。
内容は、オルガン、フルート、サックスをフィーチュアした折衷ロック。
オランダ辺りによくあるギターレスの編成で、クラシカルかつジャジーな振れ幅が顕著であり、フルートやピアノの使い方や急展開するアレンジなどもいかにもプログレらしい作風である。
オルガンに代表されるようにハードロック風のワイルドなタッチのサウンドであり、ソロにもアンサンブルにもそっち系の哀愁がある。
お郷はおそらく CREAM のような大仰系ブルーズ・ロックだろうが、ギタリストの不在をセンスあるキーボーディスト、管楽器奏者が埋めることでステレオタイプなハードロックには流れず、こういう方向に進んだのだろう。
差別化という点では成功である。
エキゾチズム含め近現代クラシック的な表現などは DEEP PURPLE の影響か。
フルートがフロントをリードし、ピアノ・ソロが唐突に飛び出す辺りもハードロックにはない展開であり、オルガンのサイケ志向と管楽器のラウンジ・ジャズ志向もあってか即興風の展開にも迫力がある。
そして、ヴォーカルのメロディ・ラインはどちらかといえば弾き語りフォークである。
THE NICE のようなサイケ・オルガン中心の小気味のいいグルーヴに泥臭いサックスと冷ややかなフルートが加わったときの味わいはなんとも形容し難い。
つまり、ワイルドなイージー・リスニングか、はたまたアヴァンギャルドな歌ものジャズか、判断に困るが判別の必要もさほどない。
BACK DOOR のコリン・ホジキンソンのようなベースのプレイも強烈。
ランニングでも通常のベース・ライン取りでも目立ちまくる。
なかなかの大作志向だが逞しいリズム・セクションのおかげで終始緩むことはなく、クールなフルートやヴォーカルで場面を作って乗り切っている。
SOFT MACHINE が初期のポップ志向のまま、ジャズとロックの腕を磨いたらこういう方向にいったかもしれない。
何にせよ、サイケデリックにしてポップなまとまりとジャジーなクールさもあり、英国ロック直系のアヴァンギャルドな冒険もある。
70 年代初期の玉石混交ブリティッシュ・ロック、オルガン・ロックのファンにはお薦め。
ドイツ語によるヴォーカリストの歌唱には、ノーブルな声質にもかかわらずお経のように空ろな響きとグラム調のいかがわしさがあり、これまた独特。
「Schädelstätten」(10:37)
「Machtwechsel」(9:35)
「Das Lied Des Teufels」(3:10)
「Taue Der Fremdheit」(3:43)
「Sonnenaufgang」(11:23)知性を放擲したのが奏功した爆発力ある大作。ノイジーなオルガンが暴れまわり、モダンジャズなサックスのブロウが咆哮する。毛深き狂乱。
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