ベルギーのチェンバー・ジャズロック・グループ「HARDSCORE」。 89 年フランク・ヌィトスを中心に結成。 2004 年現在、作品は四枚。
Maï | vocals |
Frank Debruyne | soprano sax, tenor sax |
Iris De Blaere | Yamaha Grantouch |
Frank Nuyts | marimba, Korg 01W, programming & conducting |
Koenraad Van Overberghe | Korg M1 |
Frederik Croene | Roland U-220, Roland R-8 |
Frank De Laet | 5 string bass |
Jan De Smet | drums |
自主制作盤に続く、99 年発表の第二作「Methane」。
内容は、サックス、マリンバ、矢野顕子/ケイト・ブッシュ/ダグマー・クラウゼ系女性ヴォーカル、キーボード中心らによる、シュールで可愛い室内楽調ジャズロック。
エリック・サティを思わせるチャイルディッシュでユーモラスなメロディと、控えめな低音のおかげで、フワフワとした感触の演奏だ。
ソプラノ・サックスが、リズミカルなアンサンブルの輪郭をソフトなブロウで軽やかになぞり、ヴォーカルがピョンピョン跳ね回る。
そして、子供のようなヴォーカルと暖かみのある音色のおかげで、いわゆるチェンバー風の緊張感や深刻さはほとんど感じられない。
したがって、初めの印象は、おしゃれなアーバン・ジャズをチャイルディッシュなテーマでひとひねりした奇妙なものである。
初期のペッカ的、もしくはカンタベリー・ジャズロックの亜種といってもいいかもしれない。
しかし、ボトムがうねうねと変拍子を刻み、そのリズム/テンポの急変にもかかわらず、アンサンブルが一糸乱れず流れてゆくことに気づくと、このキュートなサウンドは、アヴァンギャルドで挑戦的な感性とシニカルな技巧を包むまろやかなヴェールであることが分かる。
コロコロと転がるような打楽器と、シンセサイザーによるサックスやアコーディオンを思わせるなめらかな旋律がバランスよく束ねられており、聴きやすく、そして、しっかりと音楽的な冒険も盛り込まれている。
新世紀型チェンバー・サウンドの一つ。
ベルギーというのも変った音楽が次々現われて目が離せない。
「Hard Scores Book 2」
「Generation 363」(3:02)
「The Vapourous Existence of Harry The Termite」(4:09)
「Eat Your Gravity!」(6:07)
「The Buba-Trap」(5:17)
「Between The Treasure and The Sun」(3:40)
「Hard Scores Book 3」
「Murky Third」(3:12)
「Bob's Bones」(3:36)
「Interlude 1 / Tickled By Callipers」(1:41)
「Indian Prodioux」(3:14)
「Interlude 2 / Smuff」(1:50)
「Tom And Dick」(3:29)
「Interlude 3 / Slow Burner」(1:49)
「The Man Of Thessaly」(3:13)
「Interlude 4 / The F-Tune」(1:57)
「Castaway」(7:00)
(CARBON 7 C7-035)
Maï | lead vocals |
Frank Nuyts | programming, Korg O1W, marimba, backing vocals |
Frank Debruyne | soprano & tenor sax, backing vocals |
Koen Van Overberghe | Korg M1, Roland U-220, backing vocals |
Iris De Blaere | Yamaha Grantouch |
Maarten Standaert | e.bass |
Jan De Smet | drums |
2000 年発表の第三作「Surf, Wind & Desire」。
内容は、マリンバ、ヴァイブ、サックス、コケティッシュな女性のヴォーカルをフィーチュアした、軽やかでポップ、少しヒネリのあるチェンバー・ジャズロック。
ユーモアとシニシズムあふれる計算されたアンサンブルに加え、ジャジーなインプロヴィゼーションのおもしろさもあり。
ヴォーカルは、英語で歌う矢野顕子風(ケイト・ブッシュともいう)であり、パーカッションをフィーチュアしたスタイルは、北米のチェンバー・ロックから深刻なタッチを除いた感じ。
いや、めまぐるしい変拍子、無邪気なマリンバと男女ヴォーカルのかけあいなど、毒気少な目のフランク・ザッパ・バンドという趣だ。
カンタベリーというには、ユーモアの質が若干異なる(濃い)気がする。
BGM になりそうで意外にこってりとした聴き応えがあるのは、濃い目のユーモアのためだけではなく、リズムに対するきめ細かい配慮のせいだろう。
テーマは、夏休みにたわむれた海の情景?
非常に音のきれいな CD です。
これでズシっとくる重みや低音の響きも散りばめられていたら、もっと楽しかった。
「Prelude To Surf, Wind & Desire」(3:12)インストゥルメンタル。
「Crab Meets Crab」(3:24)「針が飛んでいるような」変拍子アンサンブル。
「Kite Control」(7:19)比較的リズムを強調しないメロディアスな、というか幻想的な序章から、ロックっぽい骨太な演奏へとなだれ込む大作。
ねじれがないストレートな作風が意外だが、納得させる迫力あり。
「Gale Force Seven」(5:52)ほのかなノスタルジーがスタンダード・ジャズをイメージさせる歌もの。
演奏は次第にエネルギッシュかつ複雑になってゆく。
「BSKRZ」(14:23)終盤はマリンバ・ソロ。
「The Creep From The Deep」(10:51)ホラーものっぽいタイトルにもかかわらず、曲調はまったくそういう感じなし。
もっとも、歌詞はモノローグ含めそういう路線らしい。
ハモンド・オルガンも使った軽妙な ザッパ風のジャズロックである。
ちなみに、フランク・ザッパも怪獣映画が好きだったはず。
「Cod」(5:26)どことなくオリエンタルなメロディの歌もの。
ファンタジックにしてジャジーなしなやかさのある作品である。
「The Diver And The Shark」(4:35)
「Surf, No Wind & Desire」(5:53)
挑戦的でスリリングな快速チューン。
ドラム・ソロあり。
「Burnin' Off Love」(4:57)MANHATTAN TRANSFER のようなコーラスもの。
ランニング・ベースと、サックス、オルガン、マリンバのユニゾンがカッコいい。
(CARBON 7 C7-045)