イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「HUNGRY WOLF」。 若手のセッション・ミュージシャンによるプロジェクト。同様なメンバーで他にもいくつか作品がある。ドラマーやギタリストは多数の作品で名前を見かける猛者。 ベーシストのハービー・フラワーズはデヴィッド・ボウイ、ルー・リードとのプレイを経て SKY を結成。
Clem Cattini | drums | John Edwards | trombone |
Tony Fisher | trumpet | Herbie Flowers | bass |
Ken Gouldie | trombone | Cliff Hardy | trombone |
Bobby Haughey | trumpet | Alan Hawkshaw | keyboards |
Alan Parker | guitar | Peter Lee Stirling | vocals |
Derek Watkins | trumpet |
70 年発表のアルバム「HUNGRY WOLF」。
内容は、オルガン、ブラスをフィーチュアしたインストゥルメンタル中心のジャズロック。
ブラス・ロックにパンチの効いた R&B テイスト、ひなびたフォーク・タッチ、アフロなビート、クラシカルな響きまでも盛り込み、雑多にして挑戦的、英国らしさあふれる作風である。
トロンボーン、トランペットがなめらかに高鳴ると一気に CHICAGO のようなアメリカンなブラス・ロック(CHICAGO なら最もプログレッシヴな「V」か)になるが、ハモンド・オルガンやファズ・ギターが勢いよく飛び出してリズムが細かく刻まれるとへヴィでプログレッシヴなジャズロック調になる。
こういったジャンルや雰囲気のコントロールの中心にいるのは、ハモンド・オルガンである。
オルガンとギターによるひねくれながらも呼吸のいいユニゾンやからみは本作の見所の一つである。
そして、爆発力あるソロのプレゼンスもさることながら、全編を通じて、溶岩のように熱くたぎるハモンド・オルガンがメロディアスなテーマを奏でるというミスマッチ、アンバランスの妙がある。
また、ついさっきまで荒々しかった面持ちが、嘘のように手折れそうに繊細な表情へと変化するところも、英国サウンドならではである。
ただし、この作品の特長は、そういうウェットでメランコリックな翳りにあまり安住せずに、さらに突っ込んで若々しく痛快に弾けるところだ。
エミウル・デオダードやマイク・ギブスのようにこなれたビッグ・バンド・サウンドもある。(ブラス・アレンジは、鍵盤担当のアラン・ホークショウ)
3 曲ほどある歌ものも、THREE DOG NIGHT かジョー・コッカーばりのソウルフルなヴォーカルをフォーク・タッチのくすんだ色彩で染め上げたいい感じの作品である。
メイン・テーマに反対の雰囲気の旋律をぶつけたり、込み入ったオブリガートで彩ったり、小刻みにリード楽器を交代したり、やたらと細かなアレンジに凝るところもおもしろい。
どうやら二つ以上の雰囲気をまぜこぜ、つぎはぎにするというのを一つのアプローチとしているようだ。(一番明らかなのはアメリカと英国という二つの要素のまぜこぜであるが)
後半、ギターとハモンド・オルガンが併走しながら小気味のいいインタープレイを繰り広げるところで、さらにもう一盛り上がりあるのがうれしい。
プロデュースは、キーボーディストのアラン・ホークショウとギタリストのアラン・パーカー。
録音はロンドン、モーガン・スタジオ。
キーフによるロンパリ剥製ウルフのジャケット、どこか歪で奇妙な印象があります。
本 CD は非正規盤。
「Melanie」ブラス・ヒットで衝撃的に導きクラシカルに落とすキャッチーな王道バラード。失礼だがオリジナルとは思えぬ完成度。
インストゥルメンタル。ピアノによるオープニング、ファズ・ギターが奏でるテーマ、パワフルなブラスのアクセント、後半のオルガンのオブリガートなど強烈な存在感の音が多い。
「Watching And Waiting」したたるピアノとうつろなオルガンの響き、眠気を誘うギターのテーマが印象的なエキゾティック・チューン。
パーカッションも全編活躍。ブラスも加わった後半のアンサンブルが熱い。
インストゥルメンタル。
「Custards Last Stand」オルガン、ギターのユニゾンによる忙しないテーマでストレスをためては一気に開放するのを繰り返す、シャープなソウル・ジャズロック。ジャジーなオルガン・ソロがいい。インストゥルメンタル。
「Country Wild」CHICAGO ばりの壮快なブラス・アレンジとテクニカルなハモンド・オルガン、小気味いいギターで大胆に迫るインストゥルメンタル。ブリッジは、アメリカンなソウル・ジャズ。
挑戦的なスタンスがカッコいい。
「Waiting For The Morning Sun」一転、R&B、スワンプ・テイスト、冷ややかな幻想味もたっぷりのこなれた英国ロック。
「Like Now」達者なギターと引きずるリズム・セクションがカッコいいブルージーなブラス・ロック。
ヴォーカルはテリー・キャスそっくり。「Hey Jude」のくすぐりも。
「Hole In My Shoe」スケールの大きい傑作。思わせぶりなリプライズも許せる。
「Sleepy」オルガンとギターで奏でるアーシーなバラード。クラプトンの芸風か。
「The Drifter」初期 NUCLEUS を無骨にしたようなジャズロック。ジャジーに迫るギターに対して、オルガンがためらいなくはっちゃけます。
「Revolution???」汗びちょにソウルフルなのにスペイシーという、サイケデリック、ニューロックの嵐をくぐり抜けた連中による名小品。
(PHILIPS 6308 009 / HMP CD-004)