イタリアのプログレッシヴ・ロック・グループ「HUNKA MUNKA」。キーボーディスト、ロベルト・カルロットの変名ユニット。唯一のアルバムの他にシングルあり。I DIK DIK にも参加。
Roberto Carlotto | organ, piano, vocals |
Nunzio "Cucciolo" Favia | drums (OSAGE TRIBE) |
Ivan Graziani | guitar, bass, backing vocals |
72 年発表のアルバム「Dedicato a Giovanna G.」
内容は、厳かな教会風から轟音レスリーまできわめて多彩にして贅を極めたオルガン、ガーシュインなピアノ、そして胸にしみいるヴォーカル・ハーモニーと管絃楽をフィーチュアした、メロディアスなイタリアン・ポップスである。
主役は、情熱的かつメランコリック、でもやっぱりロマンティックなヴォーカル。
カルロットはキーボードだけでなく、このつややかなハイトーンで独特のヴィヴラートが効いたヴォイスでも全編をリードする。
そして、カルロットをさらに繊細にしたような声質のグラツィアーニとのハーモニーも決まっている。
また、ゆったりと落ちついた暖かみある作風は、地響きのようにおおらかなノリのあるドラムスにもよるのだろう。
もちろん、ソフトな歌ものを支える熱っぽいオルガンの響き(リヴァーヴや倍音コントロールによる効果もすごい)も語り尽くせぬ魅力を放っており、プログレ・ファンには必ず訴えると思う。
楽曲は、ポップな曲調を基本に、バラード、フォーク風、シンフォニック、ロックンロールまでさまざま。
どの作品も大まかにはポップスだが、テーマとなる旋律がクラシカルだったり、アレンジが重厚であったり、いかにもイタリアらしい贅沢な演出がある。
そして、極めつけは壮麗なる管絃楽。
特に 4 曲目は、どっとなだれ込むローマ史劇調のオーケストラに吹き飛ばされそうになるスーパー・シンフォニック・チューン。
管絃と張り合うオペラチックなカンツォーネと躍動するシャフル・ビートも含めて、すべてがみごとな調和を成す。
6 曲目も朗々たる歌唱とストリングス、フルートが大波のように高まりあう劇的な作品。
2 曲目は、荒くれドラム'N オルガンが堪能できる THE NICE 風の快作。
全体に、ソフトなプログレとして聴くもよし、リッチなポップスとして聴くもよし。
2003 年 BMG の紙ジャケでは、便器のふたが開く変形ジャケットを再現している。よく見ると、右上のバラの花は便器の中から差し出された小さな手に乗っている。
なお、ANONIMA RED Ltd. 出身のギター、ベース、ストリングス・アレンジ担当のイヴァン・グラツィアーニは、97 年に亡くなるまでソロ・アーティストとして活躍した。
「Nasce Un Giomo」(1:34)リズミカルなピアノが支えるイタリアン・ビートポップ。
「Ruote E Sogri」(5:58)厳粛ながらもロマンティックなバラード+暴走オルガン。
伴奏でチャーチ・オルガンをいいように使いまわす。クラシカルなオルガンの調べをドカドカ・ドラムスが土ぼこりを舞い上げながらバックアップする。
中盤のオルガンの音響処理、後半の暴力的なアドリヴが強烈。
「L'Aereoplano D'argento」(4:19)リズミカルなピアノのリフが印象的なポップなロックンロール。
イタリアらしい色気とアッパーな熱気あり。展開部のクラシカルな調子への変転はさすが。間奏部のピアノ・ソロもカッコいい。
「Cattedrali Di Bambu」(4:29)破裂しそうなほどにロマンティックで切なく、希望の輝きに眼もくらむ歌ものシンフォニック・チューン。
転調直後の管弦楽の爆発に息を呑む。
何もかも打ち捨て、貴女の手をとって水平線まで走りたくなります。
「Anniversario」(5:11)
「Io Cantero Per Te」(4:40)あふれ出る無限の情熱とともに切々と綴られるシンフォニックなバラード。ストリングスがこれでもかとばかりに涙を絞る。
「Intermezzo No.1」(1:01)イタリアンなラグタイム?
「Giovanna G.」(2:11)
「Intermezzo No.2」(1:23)
「Il Canto Dell'amore」(3:16)
「Muore Il Giomo Muore」(1:15)
(SMRL 6096 / BMG 74321-98448-2)