アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「INFINITY」。77 年結成。アルバムを残さず解散するも、90 年代に入って SYNPHONIC が音源発掘。
Warren Dale | keyboards, saxophones | Blake Edwards | drums |
George Gregory | vocals, piano, keyboards, organ | John Schoolcraft | trumpets |
Earl Schrader | bass, guitar | Steve Smith | vocals |
Cynthia St. Clair | vocals | Jim Strouf | bass; Lance Swing, guitar, vocals, bass, keyboards |
Stacey Swing | vocals | Scott Towne | drums |
96 年発表のアルバム「Infinity」。
70 年代からのキャリアを集大成した作品集であり、楽曲は 70 年代終盤ものが主である。
その時期に、コアとなるメンバーに加えて、作曲スキルをもった新メンバーが加わったようだ。
内容は、ノーブルなヴォーカル、透明感のあるハーモニーとカラフルにして反応のいい器楽によるハイ・テンションなシンフォニック・ロック。
リズミカルでしかけの多い演奏が、YES や GENESIS、GENTLE GIANT を思わせる。
込み入ったフレーズをスピーディに弾きこなすギターと贅沢なサウンドでアンサンブルを取り巻くキーボードを中心とした器楽演奏はシンフォニックなプログレのツボを完全についている。
つまり、複雑にして悠然、技巧的にして強引、スペイシーで叙情的で、結果ドラマティック。
アンサンブルはテクニカルながらもヴォーカル含めメロディやフレーズはキャッチーであり、親しみやすい。(クラシックや有名曲の大胆な翻案もある)
複雑なアンサンブルを息も切らさず延々と繰り広げてしまうところが、体力の違いというかアメリカンな能天気さの現れというか、音楽サーカスを見せられているような気がして「やれやれ」だが、演奏の力量は相当なものである。
(この、押しっぱなしで引かないという性質はアメリカのプログレ・バンドの作風の顕著な特徴である)
特にリード・ギタリストはかなりの技巧派だ。
そして、変拍子もある精密な演奏の生む緊張感のあまり窒息しないように、甘めでキャッチーなメロディを違和感なく重ねてゆくセンスがいい。
それもあって、忙しなく無茶なわりには、全体としては安定感の感じられる演奏になっている。
時代を考えると、当然ながら英国プログレからの影響は大きく、特に YES(サード・アルバム辺りのイメージ)については、STAR CASTLE ほどマンマではないが、明らかに意識がある。
ハーモニー、変拍子、シャフルと三連の多用など、なかなかみごとに本家を継いでいる。
また、キーボードが堅実なコード・ストロークで演奏をリードし始めると、GENESIS と同じ味わいも出てくる。
そして、一つユニークな点がある。
さしてプロっぽくも美声でもないヴォーカリストの声質、発声のせいか、はたまたメロディ・ラインそのもののせいか、歌にはノスタルジックなアメリカン・ポップス(ビング・クロスビーとかさ)のような素朴でハート・ウォーミングなイメージがある。
賛美歌や古めのミュージカル映画のような感じなのだ。
これだけは、英国プログレにはない色合いであり、本グループの(おそらくは予期せぬ)特徴となっている。
特にこのノスタルジックなタッチが強調されているのが、「Space Shuttle Suite」という作品であることも興味深い。
発掘物なので音質は完璧ではない。
キーボードを弾くウォーレン・デイルは、現在 FRENCH TV のメンバー。
7 曲目のトランペットはかなり新鮮。
プロデュースは、ジョージ・グレゴリーとランス・スウィング。作曲もこの二名による。
「Chester」(6:24)
「Monuments Of Mars」(5:14)
「Creed」(5:31)
「Lover's Delight」(4:15)
「Ed's Not Stupid」(6:48)
「Embrace The New Day」(5:50)
「Solar Revolution」(6:20)
「Space Shuttle Suite」(6:38)
「Fantasy」(3:28)
「Citizen John」(4:18)
「Affirmation」(4:14)
「Lord Of Light」(13:01)
(SYNCD 16)