ポルトガルのミュージシャン 「Jose Cid」。ポルトガルを代表するシンガー、キーボーディストの一人。70 年代にキーボードを駆使したシンフォニックな作品を残す。
Jose Cid | mellotron, moog, string ensemble, piano, vocals, synthesizers |
Ze Nabo | guitars, bass, 12 strings acoustic |
Ramon Galarza | percussion |
Mike Sargeant | guitar, 12 strings acoustic |
78 年発表のアルバム「10000 Anos Depois Entre Venus E Marte」
内容は、SF 風のテーマをもつコンセプト・アルバムのようだ。
ポーランドの Niemen やイタリアの一部カンタゥトーレなどと同じく、ポップ畑の優れたミュージシャンが時代の流れにのり、一代シンフォニック・アルバムを手がけた、と考えていいのだろう。
あくまでシンプルで素朴な歌メロが主役であり、その歌による物語を、キーボードを主に丹念に盛り上げてゆくスタイルである。
込み入った技巧を誇るような場面はほとんどないが、メロトロンやストリングス系シンセサイザーが高鳴る中を、ギターがヘヴィなアクセントでメリハリをつけたり、センスのいい変拍子/リズム・チェンジも交えた、たたみかけるような場面はちゃんと盛り込まれている。
ハードな展開とアコースティック・ギター弾き語りの哀愁のバラードの落差による演出もみごとだ。
全体としては情感あふれる、切々としたクラシカル・シンフォニック・ロックといっていいだろう。
一つ特徴的なのは、ハモンド・オルガンがないこと。
ワイルドなイメージよりもフォーキーでクラシカルなイメージが強いのは、意外と、この辺に起因するのかもしれない。
歌ものとしての素朴にして力強い味わいと、決めどころでの思い切りクラシカルなアレンジなど、「濃さ」はイタリアものに匹敵する。
また、ファズを効かせたギターが、チープな音ながらも、ぐいぐいとオブリガートで食い込んできて、メイン・ヴォーカルを呼び覚ます場面など、歌ものにとどまらないバンドとしての呼吸のよさもある。
NEW TROLLS をやや野暮ったくしたようなイメージというのが、近いかもしれない。
プロデュースは本人。
シングル盤を収録した CD も出ているはず。
内ジャケのコミック風イラストがかわいい。タイトルは「金星と火星の間の一万年後」の意。
「O Último Dia Na Terra」(4:21)
「O Caos」(5:48)
「Fuga Para O Espacç」(8:07)
「Mellotron O Planeta Fantástico」(6:41)
「10,000 Anos Depois Entre Vénus E Marte」(6:01)
「A Partir Do Zero」(4:41)
「Memos」(2:07)
(MOV-30 399)