オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「LETHE」。MIRROR を母体に 78 年結成。作品は一枚。グループ名はギリシャ神話に由来し、黄泉の国ハデスにある「忘却の河」を指す。
Thuur Feyen | organ, piano, strings |
Philip de Goey | piano, oboe, flute, cor anglais |
Hans Lambers | drums, percussion, xylophone, vibraphone, strings |
Johan Saanen | bass |
Kees Walravens | guitar, classical guitar |
81 年発表のアルバム「Lethe」。
内容は、ノーブルでクラシカル、なおかつ親しみやすくジャジーなタッチもある極上のシンフォニック・ロック。
管楽器をフィーチュアしたアンサンブルが特徴である。
そこにはクラシカルな構築性、秩序の美しさと和やかでメロディアスな心地よさが同居する。
また、リズム・セクションがフル回転しだすと一気にジャジーなノリが強くなるが、オルガンやピアノも同時に前に出るためクラシカルな味わいはキープされる。
ハードなタッチのギターが現れても、アンサンブルの呼吸のよさ、応答のよさは変わらず、オーケストラ風の効果が保たれる。
品があるのにほのかなユーモアとノリのよさがあるところが最大の魅力だろう。
これは、クラシカルなアンサンブル/構築志向とジャズの自由さ、ブルーズ/サイケデリック・ロックの熱っぽさの奇跡的なブレンドであり、それはメンバーの音楽的な生い立ちを、熱烈な CAMEL ファンであることも含めて、すべてそのまま放り込んで、70 年代の空気とともに総括したもののようだ。
「Mirage」から「Moonmadness」期の CAMEL に倣ったであろうファンタジックなグルーヴがあり、同国の FINCH をより慎ましくおだやかにしたイメージもある。
やや冗漫な展開やアドリヴの冴えのなさといった問題はあるが、完全インストゥルメンタルのシンフォニック・ロックとしてはなかなかの掘り出し物だ。
「Lethe」(5:36)雅な中にほのかに悩ましげな響きを織り込んだオーボエの調べを、宝玉が転がるようなピアノとアコースティック・ギターのアルペジオが支える素朴なアンサンブル。ニューエイジ・ミュージック的なニュアンスもある。
「Avbury Circle」(9:46)前半は前曲と共通するクラシカルなアンサンブル。中盤よりドラムスとベースが加わり、ジャジーでリズミカルな演奏となる。そこではオルガン、ピアノが活躍し、終盤はギターとベースのアドリヴもある。
「Cold In Fingers」(9:49)CAMEL 風の軽快な作品。本家同様ほのかにエキゾティックな響きもあり。
「Le Tombeau II」(9:25)メロディにルネサンス期の声楽曲または俗謡のように独特の単調さのある作品。ジャジーな演奏へと大胆に変化。
(MMP 01781)