オランダのプログレッシヴ・ロック・グループ「MIRROR」。72 年結成。 76 年解散。作品は一枚。 解散後一部メンバーは LETHE を結成。
Johan Saanen | bass, vocals |
Peter Fransen | drums |
Kees Walravens | guitar |
Philip De Goey | oboe, saxophone, flute |
Paula Mennen | piano, organ, synthesizer, vocals |
76 年発表のアルバム「Daybreak」。
内容は、素直なテーマを丁寧なアンサンブルでクラシカル描くシンフォニック・ロック。
インストゥルメンタルが主であり、常にどこかで優美なメロディが奏でられているところが特徴だ。
サウンドなどアルバム製作面では B 級感は否めぬものの、演奏そのものは悪くない。
ベースを強調した立体的で技巧的な演奏は初期の YES、美しく親しみあるメロディをほんのり哀愁を漂わせつつ奏でるスタイルは CAMEL に通じる。
メロディをリードするのは主に多彩な管楽器とキーボードであり、したがって、ロック・バンドの編成ながらもメロディアスな主題を支える小オーケストラ風のアンサンブルが軸となる。
ドラムスがリズムを強調して激しく高まったり、アブストラクトで難解な表現を放つこともあるが、基本的にはメロディを歌わせて丹念なバッキングで膨らませる作風である。
ギターはわりとふつうのブルーズ・テイストをメインにしたプレイであり、技巧的で安定感もあるが、独特なけたたましさ以外は強烈に個性的なプレイというわけではない。
むしろリズム楽器として堅調に全体を支えているところで目立つ。
ヴァイオリン奏法やサイケなけたたましさはスティーヴ・ハウを意識しているのだろう。
サックスにはメローなジャズらしいトーンがあり、メロディアスなテーマと絡むと自然と全体にフュージョン・テイストも現れる。
この点も CAMEL と同じだ。
ただし、ドラミングにジャズっぽさがまったくないので CAMEL のように「ファンタジックにして精緻な彩り」という趣はない。
あくまで、管楽器や鍵盤の力を借りてクラシカルな表現をロックンロールに持ち込んだ作風である。
やや単調になるところもあるが、優しく暖かな音の魅力は捨てがたい。
「Daybreak」(10:03)冒頭から初期 YES そのままな力作。中盤以降は CAMEL 調のおだやかでリラックスした演奏となる。
「Goodbye」(10:13)スペイシーな混声のスキャットをアブストラクトなベースのアドリヴが破断するという意表を突く序章から、ドリーミーな曲調をスリリングなプレイでひっくり返すという荒業が続く。中盤以降はハウっぽいギターががんばり、クラシカルなアンサンブルにまとまってゆく。
「Dear Boy」(3:25)ドリーミーなフォーク・ロック。女性鍵盤奏者がリード・ヴォーカル担当。ヴォーカルをなぞるのはフルート。
「Edge Of Night」(13:02)クラシカルな表現を散りばめたロックンロール。
(TLP 7623)