MARTIN CIRCUS

  フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「MARTIN CIRCUS」。69 年結成。作品はアルバム十一枚、シングル多数。サイケ、グラム、ディスコと音楽スタイルの変遷を遂げる中、71 年作品はジャジーなフレンチ・プログレの佳作。

 Acte II
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Bob Brault bass, flute, percussion, vocals, narrator
Gerard Pisani bugle, tenor saxophone, alto saxophone, soprano saxophone, clarinet, flute, trombone, percussion
Rene Guerin drums, violin, viola, percussion, vocals
Alain Pewzner guitar, organ, percussion, vocals
Sylvain Pauchard organ, piano, vibraphone, accordion, vocals

  71 年発表のアルバム「Acte II」。 オリジナル LP は二枚組。 内容は、タイトでエネルギッシュなアンサンブルとメロディアスなヴォーカル・ハーモニーが特徴的な、サイケデリックなトリップ感覚あふれるジャズロック。 輪郭の甘いフランス語のハーモニーの響きと思いのほか締まった器楽の取り合わせがいい。 ジャジーなサックスやフルートをフィーチュアするかと思えば、メロトロン・ストリングス風のくすんだ弦楽器サウンドによるクラシカルで幻想的な表現もある。 ビート風のシンプルなリフレインで一気に 60 年代に戻ってしまうあたりも、英米に追いつけ追い越せで意気上がっていたこの時期らしいフレンチ・シーンらしく、微笑ましい。 初期 SOFT MACHINE 風、というか MOVING GELATINE PLATES を連想させる音である。 フレンチ・ロックらしいアジテーション風のモノローグや効果音も使用した叙景的な場面もふんだんにあり、演劇的な表現を目指しているようだ。 カットアップのような大胆な表現も多い。 メロトロン風の古めかしい管弦やファズ・ギター、フリージャズ調の脈絡を断つような即興などは、ダイレクトに初期の KING CRIMSON のイメージである。 妖艶さや翳りのにじむ音からはドビュッシー、フォーレ、ラベルといった名前も浮かんでくる。 決して似合わないわけではないがやや借り物めいたロックンロール気質に自然な本格クラシック、ジャズ志向が交差して、艶めかしくも気怠いフレンチ・ミュージックの魅力を放つ新しいロックになっている、と思う。 70 年代らしいメロディアスなポップ・フィーリングも鮮やかに決めている。 ヴォーカルはフランス語。
  プロデュースはジェラール・ウジェ。

  「Boudjateelack
  「Pourquoi Tous Ces Cris」(6:15)
  「Chevauchée Fantastique」(5:04)
  「Poème」(8:00)

  「Ti'Bill
  「Poussières」(7:05)
  「J'Ai Perdu」(6:20)
  「J'Suis Une Groupie」(3:52)
  「Ouvrez Vos Mémoires」(3:40)

  「Je M'Eclate Au Senegal」(4:11)
  「Le Tromblon Magique」(4:20)
  「Hyznogod」(3:37)
  「Images」(2:43)
  「A Dada Sur Paranoïa」(4:48)ポップな佳曲。

  「Façon De Parler」(7:54)
  「O'Secours Bob」(3:50)このマリンバのリフはどこかで聴いた。
  「J'Aimerai Bien Te Faire Flipper Un P'Tit Peu」(3:34)
  「Ma Guitare」(3:47)ハードロック風の作品。異色。
  
(SLVLX 595 / 74321743882)


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