MEN OF LAKE

  イタリアのネオ・プログレッシヴ・ロック・グループ「MEN OF LAKE」。 87 年結成。 作品は四枚。 70 年代風の音作りの背景に多彩な音楽性を盛り込む、歌ものオルガン・ロック。

 Men Of Lake
 
Maurizio Poli vocals, Hammond organ, synthesizer
Rene Modena guitars
Silvano Tamburini bass
Claudio Oberti drums

  91 年の第一作「Men Of Lake」。 内容は、シンフォニックなキーボードを多用する緩やかな 70 年代風歌ものロック。 ハモンド・オルガンやムーグが郷愁を誘う英国ロック調の音である。 おそらく基本はネオプログレで、憧れの対象が GENESIS 風シンフォニック・ロックよりも VERTIGO 辺りのオルガン・ロックに向いているのだろう。 全体に埃か靄がかかったような雰囲気だが、キーボードとフォーク、ポップス調の歌メロがリードする演奏には、どっしりとした安定感がある。 懐かしいハードロック風味もある。 ハモンド・オルガン、メロトロン風のシンセサイザーは、無難にいい音であり、この音でしか活きないフレーズをきちんと決めてゆく。 ただし、ヴォーカリストの声質があまりしゃがれていないボブ・ディランといった趣であり、これは好みの分れめになるだろう。 ものさびしくも叙情的なヴォーカル・パートとシンセサイザーが使われるインスト・パートの奇妙な落差も特徴的だ。 いわば、マンフレッド・マンの EARTH BAND で本当にディランが歌っているような感じである。 それでも、ヴォーカルがニューウェーブ風の表情になると、ネオプログレらしさも浮かび上がってくる。 この辺りが特徴だろう。 一方、愚直なまでに怪しく重厚に迫るキーボード、安定したリズム・セクションと比べて、ギターが若干力不足に感じられる。 一部ハケット調が活きるところもあるが、思い切ってもっとファズで攻めてサイケに爆発した方がよかった。 もったりと垢抜けないながらも、ゆるゆる流れてゆくオルガンに身を委ねられれば、霞んだ景色に豊かな詩情を湛えた古城が浮かび上がる。
  全体の印象は、70 年代の音と曲調を再現したキーボード・ロック。 アルバム前半はややセンチメンタルに迫り、後半の曲調は VERTIGO 風だ。 これなら STANDARTE のライバルといっていい。 曲全体のくすんだ色調を味わうタイプである。 ヴォーカルは英語。

  「Walking Along The Rhine」(7:35) オールド・ウェーブなキーボードによるニューウェーブ調のゆったりした歌もの。
  「I Don't Want To Know」(5:15) キーボード・ロックの名品。
  「The Traveller」(7:05) GENESIS または VdGG を思わせる重厚な作品。
  「October Night」(7:20) ハードなオルガン・ロック。ここまでの調子だと、この作品の邪悪な表情は意外だが、悪くない。ギターは拙さが最初期ハケットに酷似。
  「Rolling Globe」(4:26) 80 年代以降な感じのポップ・チューン。
  「Abele's Garden」(5:36) 過激なディストーション・ギターがオルガンとともに暴れる URIAH HEEP 風のオルガン・ハードロック。
  「Any Place Any Time」(5:56)
  「Immigrant's Complaint」(8:40) スケールが大きく、曲調の変転がおもしろい。幻想的なサイケデリック・チューンとしてはかなりの力作。

(MUSEA FGBG4047.AR)

 Out Of The Water
 
Maurizio Poli vocals, Hammond organ, synthesizer
Rene Modena guitars
Marco Gadotti bass
Claudio Oberti drums

  94 年の第三作「Out Of The Water」。 内容は、70 年代風の歌ものオルガン・ロック。 1 曲目こそシンフォニックなアクセント付きのヘヴィな VERITIGO/NEON 系ハードロック(力作)だが、その後は、視線が空ろにさ迷うようなサイケデリック・タッチや、英国ロックらしいロマンチシズム、今風のアメリカン・ロックのようなアーシーなタッチも交えた、メロディアスな作風で迫る。 古臭い音のせいで危うく忘れそうになるが、やはり現代のグループであり、いわゆるネオプログレ調もある。 どの作品にも共通するのは、味わいあるストリングス/ムーグ・シンセサイザー、ハモンド・オルガンがバックを支えること。 リズム・セクションもしっかりしており(ミックスのおかげもあるだろう)、バンドとしてのグルーヴがある。 ギターも大時代なプレイを堂々と放っている。 大仰なところはさほどでなく(もしくは大仰さの方向がかなり個性的)、渋くカッコいいロックです。 ヴォーカルは英語。

  「Vipers(In The Bottom Of The Well)」(7:05) 邪悪/幻想系ハードロック。 ベースがカッコいい。JETHRO TULL ばりの奇妙な捻れや YESGENESIS のようなシンフォニックな広がりもあり。
  「The Day We Met」(4:06)
  「The Dark Little Figure」(6:21)
  「The Prodigal Father」(6:35) ネオプログレな展開と昔のハードロックがそのまま結合した、奇妙な、しかし個性的な作品。ある意味「プログレッシヴ」。
  「Dedicated To Saul Frances Levine And John」(3:47)
  「Strange Sleep」(7:18) 70 年代半ばくらいの歌番組を思い出します。
  「The Perception Of The Wind」(7:21)
  「The Ballard Of The Lake」(3:15)

(MMS / MUSEA FGBG4095.AR)

 Music From The Land Of Mountains, Lake And Wine
 
Maurizio Poli vocals, Hammond organ, synt Moog, piano
Mauro Borgogno guitars
Marco Gadotti bass
Claudio Oberti drums
guest:
Francesco Pisanu electric & grand piano
Vadim Frei sax, flute
Davide Lorenzato flute
Martino Nicolodi brass
Massimo Simoncelli horn

  98 年の第四作「Music From The Land Of Mountains, Lake And Wine」。 内容は、キーボードとメロディアスなギターを中心にした歌ものロック。 AOR 風の落ちついたソフトな曲想に、トラッドなテーマとジャジーなプレイで表情をつけている。 一作目よりはギター、キーボード、ヴォーカルのバランスがよくなり、特にジャズ・テイストの強まりとインスト・パートの充実が顕著である。 ギターはフュージョン風であり、切々と歌い上げるプレイが主だが、適度にブルージーでありときおり目の醒めるような鮮やかなプレイも見せる。 的確なプレイを控えめながら、きっちり決める辺り実はかなりの巧者とみた。 このギターのおかげで、全体に動きが感じられる。 シンセサイザーやオルガン、エレピは、70 年代風の懐かしめの音。 また、ジャズ、トラッドなどさまざまなスタイルでアンサンブルを彩るフルート、サックスら小道具の存在も魅力。 ミドル・テンポのバラードが主なこと、テーマが甘目なこと、そして、ディラン風ヴォーカルの表情に変化が乏しいため、やや平板な印象を受けるが、どの曲も非常に洗練されたプレイがつまっておりアンサンブルはよく練られている。 シンフォニックな歌物としては非常に贅沢な傑作。 ベテランらしくプログレ、フュージョンなど、時代の音をしっかり消化している。 プログレというカテゴライズが苦しくなる作品かもしれないと思わせて、9 曲目のようなインストを見せる辺りがにくい。 こうなると問題は、ディラン風ヴォーカルがプログレには珍し過ぎることぐらいか。 歌以外は、じつに涼感ある、爽やかな音である。 リーダーと思われるキーボーディストの名前は、おそらく芸名。

  「Waltz From The Land Of Mountains, Lake And Wine」(1:31)
  「Rockbound」(5:40)
  「Nothing At All」(4:22)
  「Words In The Rain」(7:25)
  「Alice's Thread」(3:35)
  「Sailors Way」(6:35)
  「Back From Ayu」(3:49)
  「Peace Has A Flower In Her Chest」(5:28)
  「Rivarberry」(3:21)
  「Lady Day Dream」(7:39)
  「Happy Hours」(3:46)

(MUSEA FGBG4235.AR)


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