MORGAN

  イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「MORGAN」。セッション・キーボーディストとして著名なモーガン・フィッシャーのグループ。イタリア録音の二作を残す。(二作目は後年発表) フィッシャー氏は 80 年代後半から日本在住。下北沢で見かけたぞ。

 Nova Solis
 
Morgan Fisher keyboards
Tim Staffell vocals, guitars
Maurice Bacon drums
Bob Sapsed bass

  72 年発表のアルバム「Nova Solis」。 内容はシンセサイザー、オルガン、ピアノを駆使したクラシカルかつジャジーなシンフォニック・ロック。 純クラシック路線にとどまらず、アコースティックなバラードやスイング・ジャズ風のアレンジも盛り込んでエンタテインメント化するというプログレッシヴ・ロックの心肝をきっちりおさえている。 この時代のこういう音のグループの中心人物に相応しく、フィッシャー氏はきわめて本格的な訓練をつんだキーボード・プレイヤーであり、緻密にして大胆なプレイで全編をリードしている。 特に、シンセサイザーのサウンド・メイキングとフレージング、重量感たっぷりのオスティナートで攻め立てるパワフルなピアノ演奏は出色である。 また、主張あるリズム・セクション、ヴォーカルとの一体感もある。 全体に小気味のいい演奏だが、おもしろいことにルーズになったときの演奏の表情が、ムーグ・シンセサイザーの音色とあいまって、EL&P によく似てくることだ。 違うのは、ファズ・ベースがリズム・キープというにはあまりに独善的な唸りをあげるところと、メロトロンが使用されることである。 そして、QUEEN の前身バンド SMILE のヴォーカリストであったティム・スタッフェルが、甘めながらも暑苦しい声で無機的でアグレッシヴなサウンドに肉感的なタッチを加えている。 哀願調がグラム・ロックっぽいが、バラードの表現には独特の寂寥感があり、曲想をよく伝えている。 独特の B 級感をこのヴォーカルのせいだけにしてはいけない。 また、アカデミックでシンフォニックな面とアコースティックでメロディアスな面の配合も英国ロックらしい巧みな構成である。
   旧 B 面を占めるタイトル組曲は、ホルストの「木星」をモチーフとし、英国ロックらしいセンチメンタリズムもたっぷり交えた、PINK FLOYD 風味もある佳曲。 フリーフォームの即興電子音楽風の展開(イタリアン・ロックっぽさ満点)やアコースティックな弾き語りを経た、後半のハイ・テンションの演奏が聴きもの。
   録音はイタリア RCA スタジオであり、リリースもイタリアのみ。 ここのジャケットは ANGEL AIR からの再発 CD のもの。 LP はもっと青みがかった色調であり、タイトルが中央部にある。

  「Samarkhand The Golden」(8:04)
  「Alone」(5:17)
  「War Games」(7:03)
  「Nova Solis - A Suite」(20.17)
  
(RCA ITALY LISP34154 / SJPCD0067)

 The Sleeper Wakes
 
Morgan Fisher keyboards
Tim Staffell vocals, guitars
Maurice Bacon drums
Bob Sapsed bass

  77 年発表のアルバム「The Sleeper Wakes」。 73 年、モーガン・フィッシャーが MOT THE HOOPLE 加入前の録音ながらも発表が遅れた第二作。 今回もキーボードを中心とするタイトな演奏だが、初期の KING CRIMSON やデイヴ・ローソン加入後の WEB を思わせるミステリアスな逸脱調を随所に見せたり、モノローグとノイズを交錯させたフリーフォームのパートを設けるなど、より複雑で屈折した展開を見せる。 (3 曲目のサビまでは「Ladies Of The Road」に酷似! おまけに、イアン・マクドナルドが加入予定だったという逸話もある) この奇妙なユーモアの風合いが本作品の評価を分けているようにも思う。
   一方、B 面の大曲は PROCOL HARUMTHE WHO 果ては THE BEATLES にも通じる、きわめてアーティスティックな、ブリティッシュ・ロックの王道をゆくロック・オペラ。 叙情味よりも神秘性を強調した、歪曲した現代音楽風の作品である。 フィッシャーはピアノ(エマーソンを意識!)を主にマリンバやヴァイブも演奏している。 空ろな感じはじつに英国ロックらしく、けたたましさは EL&P といい勝負だ。
   全体にキーボード・プログレらしさを提示しつつも、音色やプレイ以上に多様な音楽の面白さが際立つ逸品である。 ただ、おそらくは、この内容で 77 年発表だと好事家向けのみに終わってしまったと思う。
   ここのジャケットは ANGEL AIR からの再発 CD のもの。 米国盤は「Brown Out」というタイトルでリリースされた。

  「Fire In The Head」(5:01)
  「The Sleeper Wakes」(6:11)全編ピアノが冴え渡る。
  「The Right」(9:37)
  「What Is - Is What」(19:56)
  
(A RED 1 / SJPCD0049)


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