スウェーデンのシンフォニック・ロック・プロジェクト「MORTE MACABRE」。 ANEKDOTEN と LANDBERK のメンバーによって、イタリア BLACK WIDOW レーベルのホラー映画のトリビュート・アルバムへの楽曲提供を契機に結成された。
Nicklas Berg | mellotron, Fender Rhodes, Theremin, sampler, guitar, bass (ANEKDOTEN) |
Peter Nordins | drums, percussion, mellotron (ANEKDOTEN) |
Reine Fiske | guitars, mellotron, violin, Fender Rohdes (LANDBERK) |
Stefan Dimle | bass, mellotron, moog (LANDBERK) |
98 年発表の作品「Symphonic Holocaust」。
怪奇映画のサウンド・トラック作品へのトリビュート・アルバム。
全 8 曲中、プロジェクトによるオリジナル新作は 1 曲のみで、他曲はすべて既存のサウンドトラック作品。
内容は、出身グループの音を反映した、メロトロンを駆使するヘヴィかつ叙情的なもの。
古代の祈祷の如き轟々と迸るメロトロンの説得力に加えて緩急、疎密自在のアンサンブルで邪悪にして深い哀愁を孕む世界観を描いてゆく。
種々の SE や叙景的なギター曲、スキャットの入ったバラードなど、サウンド・トラックならではのさまざまな趣向もある。
スキャット以外は、ほぼ全編インストゥルメンタル。
1 曲目「Apoteosi Del Mistero」(4:16)「City of the living dead」より。メロトロン 4 台が層を成して響き渡る凄絶に美しい音のタペストリ。
衝撃的なサウンドであり、ゾンビ映画のサウンド・トラックにはもったいないような重みと品格を備えた暗黒シンフォニーの傑作。
2 曲目「Threats Of Stark Reality」(2:59)次曲へのイントロダクション。KING CRIMSON の即興に酷似。
3 曲目「Sequenza Ritimica E Tema」(7:02)「The beyond」より。ANEKDOTEN テイストたっぷりの佳曲。
4 曲目「Lullaby」(8:02)「Rosemary's baby」より。哀しくも歪な子守歌の調べ、遠い記憶のようにトレモロで揺らぐエレクトリック・ピアノ、茫漠たる夢を描くメロトロン・フルートとストリングスの競演。
哀感募り、また恐怖も募る。
5 曲目「Quiet Drops」(6:43)「Beyond the darkness」より。ギターの爪弾きが重苦しいアンサンブルを召喚する。オリジナルは GOBLIN の演奏。
6 曲目「Opening Theme」(2:50)「Cannibal holocaust」より。リリカルなメロトロン・ソング。
7 曲目「The Photocession」(7:10)「Golden girls」より。
くぐもったギターの調べが渦を巻き白霧に巻かれるままに潮騒に誘われて消え去ってゆく。
8 曲目「Symphonic Holocaust」(17:51)唯一のオリジナル作品。廃工場で蒸気を吹き上げる機械のようなメロトロンとギターが綾なすミステリアスな序章。
ジャジーなリズムに導かれて強靭なるアンサンブルが炎を噴く。
執拗な反復の秩序を雪崩打つ轟音が打ち砕く。
無表情なまま涙を流すようなギターの調べが深く刻まれる。
ひと時の救済、しかし再び世界は灼熱の劫火に焼かれてゆく。
ベース、スネアドラムスがのたくる龍のように強靭なビートを放ち、ギターとシンセサイザーが狂気の雄叫びを上げて斧のように空気を切り裂いてゆく。
やがて主を失った演奏は虚ろな表情のままさ迷い歩く。
インプロヴィゼーションの混沌。
懸命に鼓動を放ち続けるリズム・セクションに触発されてすべてが一点に向けて収斂し始める。
シンセサイザーの狂気を孕む熱い炎がめらめらと高まり、メロトロンの迸りとともにすべてを焼き尽くしていく。
ANEKDOTEN のヘヴィネスと LANDBERK のメランコリーが鮮やかにブレンドした戦慄の美学である。
ヘヴィなサウンドが光ゴケのような暗い光沢でサイケデリックな虚無を浮かび上がらせる。
絶頂期 KING CRIMSON と同等な暴力的なサウンドによる深く厳しいリリシズムの提示である。
渾身の力で悲痛な物語を叩き付ける 17 分。
(MELLOCD 008)