ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「MOSAIK」。 自主製作盤一枚のみを発表している謎のグループ。
Klaus Müßeler | electric piano, synthesizer |
Georg Kordt | guitars |
Heinz Jopen | bass |
Wolfgang Stange | drums |
Manfred Rönspeck | alto saxophone, concert flute |
77 年発表のアルバム「No1」。
内容は、技巧的かつロマンティックな王道カンタベリー・ジャズロック。
変拍子にこだわるテーマやファズ・ギターがリードするキメのトゥッティなど、もろに HATFIELDS 風であり、フォロワーであることは間違いないだろう。
達者なギター・プレイとクールなサックスを軸とした流麗なアンサンブルに、大胆なリズム・チェンジの展開を盛り込むのが得意技だ。
リリカルなフルート、上品なシンセサイザー、ラヴリーなエレクトリック・ピアノらによるインタープレイに、ほのかなシニシズムと諧謔味、宇宙を目指す少年の瞳のような健やかさも入れ込んでグルーヴに傾き過ぎないための歯止めするあたり、まさしくインテリジェントなカンタベリーの魂のなせるわざである。
サックスは文脈をあまり意識せずに自由にインプロヴァイズする、天然ジャズメン。
性急に突っ走って当たるをかまわずなぎ倒すような勢いもある。
その荒々しさが、ロマンティックな表情と自然につながっていくところがいい。
オルガン風のシンセサイザーとエレクトリック・ピアノを操る鍵盤奏者とギタリストは、それぞれにキレも含蓄もあるプレイを放つ。
テーマやリフでの力強い筆致が印象的だ。
ベーシストも骨太なタッチで要所を締め、ギターにできない強力なアクセントを打ち込んでくる。
この作風は、いわば、モダン/フリー・ジャズの音楽的知性とサイケデリック・ロックの野生の精髄を冷めたユーモアのセンスでまとめたものである。
フュージョンとは一線画す、ファンタジックなジャズロックの逸品。
PASSPORT ほどではないがドイツ系ジャズロックにありがちな野暮ったさから頭ひとつ抜け出たレベルにあり、北欧系に通じる清潔感もある。
スキャットがあれば完璧だった。
ジャズロック・ファンには無条件でお薦め
全編インストゥルメンタル。プロデュースはグループ。
自主製作。加工されきらない音も合っている。
「Future」(7:14)さりげない 8 分の 9 拍子のなめらかなジャズロック。リズム・チェンジの 8 ビート・パートのあまりのカンタベリー風味に唖然。
「Brandung」(3:36)GENTLE GIANT ばりの変拍子快速チューン。
このテーマ、どこかで聴いたような。
雪崩のようなドラム・ロール。
「Krokus Deal」(5:42)いい感じにリズムがグラインドするグラマラスで性急な暴走ファンク・チューン。
いきむサックス、食いつくようなクラヴィネット、破裂気味のシンセサイザーが特徴的。 リズム・セクションも主張が強い。
「Death Of A Bird」(4:49)もつれるように忙しないトゥッティが特徴的な 8 分の 7 拍子のテクニカル・チューン。
リズムが弾けまくるためか、自由に、レガートに歌うサックス、メローなエレクトリック・ピアノの収まりがいまひとつ。
テンポ・ダウンした展開部はカンタベリーの美意識。
「California」(3:26)メローで人懐こいカンタベリー風の佳曲。華麗すぎるエレクトリック・ピアノ、パターンを支えつつオブリガートするベース、バッキングに徹しつつキーボードに応じるギター、そして極めつけはドリーミーなフルート。
「Grippe Trip」(6:09)クールなミドル・テンポで粛々と進むソウルっぽいラウンジ・ミュージック。サックスからギターへと主役が移る。ギターはアラン・ホールズワースばりの超絶プレイ。
「Rainy Day」(6:34)RETURN TO FOREVER 直系のエレクトリック・ピアノのロマンティックなプレイが導き、フルートがクール・ダウンするスピリチュアルな作品。ミニマルな展開に精妙な変化をつけてゆく。
「Seewind」(7:27)サックス、ギター、キーボードが順番にリードしてゆくタイトな疾走型ジャズロック。
全編を通じてバックに海風のような効果音が流れる。テンションの高いテーマとムードを一貫させるアドリヴがみごと。
「Abfahrt」(3:20)ギター主導のハードでスリリングなジャズロック。
アナログ・シンセサイザー特有のゴツいサウンドによる荒々しいソロもカッコいい。リズムもアッパー。
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