スペインのプログレッシヴ・ロック・グループ「OCTOBER EQUUS」。 マドリッド出身。2003 年結成。2013 年現在作品は五枚。様式美系チェンバー・ロック。
Victor Rodriguez | keyboards |
Texma Fernandes | drums |
Amanda Pazos | bass |
Angel Ontalva | guitar |
2005 年発表の第一作「October Equus」。
内容は、PRESENT 系、KING CRIMSON 影響下の凶暴なエレクトリック・チェンバー・ロック。
重厚なピアノや幾何学的な変拍子反復、無調、重苦しいわりには俊敏なアンサンブルなど典型的なチェンバー・ロックのスタイルだが、キレのいいハモンド・オルガンと狂乱するファズ・ギターらによる凶暴な表現が、ハードなシンフォニック・プログレ側に引き寄せている。
暗黒チェンバー・ロックにハモンド・オルガンの刺激的なフレーズが放り込まれる新鮮な感覚は、アメリカの FAR CORNER というグループと共通する。
また、歪んだギターによるキメのアルペジオは、KING CRIMSON そっくり。(レガートなロングトーンによる邪悪なフレーズもフリップ卿への憧憬かもしれないが、あまり似ていない)
メロトロン・ストリングス風の音はシンセサイザーだろうか。
などなど、へヴィ・シンフォニック・ロックといっても間違いではない内容である。
本作品は、どちらかといえば、UNIVERS ZERO ではなく KING CRIMSON のファン向け。
今後どちらの方向を向くのだろう。(作曲担当からして、キーボーディストはチェンバー路線、CRIMSON 好きのギタリストはへヴィ・シンフォニック路線、のようにも思う)
キーボードでシミュレートされた管弦の音(特に木管など)にリアルな感触がなくインパクトが弱いこと、ミドル・テンポが単調になること、など、いくつか弱点はある。
全曲インストゥルメンタル。
7 曲目のセンチメンタルなギターのメロディが印象的。
(MRC 007)
Angel Ontalva | guitar |
Victor Rodriguez | keyboards |
Amanda Pazos Crosse | bass |
Fran Mangas | tenor & soprano sax, flute |
Alfonso Muñoz | bariton & alto & soprano sax |
Pablo Ortega | cello |
Vasco Trilla | drums |
2011 年発表の第三作「Saturnal」。
内容は、険峻にして攻撃的、しかし透徹で意外なまでにメロディアスなチェンバー・ロック。
管弦楽器の導入が図られるとともに前作でやや揺らぎのあった作風が収束し、スタイルは完全に「ロック室内楽、ややフリージャズ」になった。
力強くも屈折したユニゾン・ラインを貫く演奏は、あたかも厳粛な中世教会の暗闇に蠢く始原の蛮力の噴出のようだ。(何だそりゃ)
チェンバー・ロックとして、HENRY COW のような高運動性の生む抽象的な音楽フォルムと UNIVERS ZERO のような音楽からしみ出す根源的な邪悪さの暗喩という二つの特徴をバランスよく保持しており、さらには、ロック的なパワーやジャズ的な運動性、モダン・ポップ・ミュージックらしい音質の明晰さもある。
しかしながら、緻密な演奏からは、意外にも、険しさや硬さよりも、規則にしばられない発想の自由さや溌剌とした運動性が強く感じられる。
邪悪な圧しの強さを見せながらよどみなく次へ次へと展開してゆく、そのなめらかさが特徴といえるだろう。
屈折や閉塞感が特徴になりやすいこの手の音楽でユニークな「開放感」を打ち出せたのが、RIO 風の厳格な音楽主義を突き詰めた結果であるのならばすばらしいことだ。
チンドンっぽいところにも、北欧ジャズロックと同質のユーモアとペーソスの微妙な均衡がある。
サックス二管をメンバーに含むにもかかわらずジャズよりもややクラシックに寄る場面も多く、背景を支えるストリングスの音が象徴するようにシンフォニックな面もあるので、いわゆるプログレ・ファンには敷居が低いタイプのチェンバー・ロックだと思う。
KING CRIMSON の模倣のようなところがなくなったのも進路として正しい。
(最終曲で見せる KING CRIMSON 的な叙情性については、そのハマリ具合のすばらしさゆえに許したい)
HENRY COW の第一作のファンにはお薦め。
キーボーディストはオルガンの音が EL&P ではなく HENRY COW に似るように気をつけているような気がする。
ギタリストはヒステリックなロングトーンも使うが、基本的にはパット・メセニーのファンでは。
クリアで光沢のあるサウンドと時おり見せる叙情性がチェンバー・ロック系としては新鮮である。
全曲インストゥルメンタル。
メロトロンありマス。
インナースリーヴのイラストは「病んだ大友克弘」。
プロデュースはグループ。
(ALT109)
Angel Ontalva | guitar |
Victor Rodriguez | keyboards |
Amanda Pazos Cosse | bass |
Vasco Trilla | drums |
2013 年発表の第四作「Permafrost」。
前作の管楽器奏者を失い、再び 4 ピースのバンド形態となった。
内容は、モダン・クラシック風のチェンバー・ロック。
イギリスの探検家の冒険を描いたコンセプト・アルバムらしく、叙景的な演出がなされたところがある。
狂的なフレーズが渦巻く強い圧迫感のある演奏ではあるが、フリージャズ的な即興ではなく、不協和音や変拍子、無調性を導入して作曲されていると思う。
特徴は、エレクトリックなサウンドを用いながらも音の質感にアコースティックなところがあること。
ギターはヴァイオリン的、キーボードはストリングス・セクション全体やハーモニウム、ベースもチェロのイメージだ。
そういう意味では、PRESENT 的な構成による UNIVERS ZERO 的サウンドといってもいいだろう。
時にインダストリアルな荒々しさすら見せるが、単なる凶暴さや邪悪さとはいい切れない多面的な性格が感じられるのは、このアコースティックなタッチが微妙なニュアンスを表現しているからだろう。
個人的には、ギターのナチュラル・トーンと「フリップ好き」、ジャズ系のドラムスなどが気になる。
全曲インストゥルメンタル。
収録時間が 40 分あまりと、CD にしては短い。
(OCTOBERXART OE 01)