アルゼンチンのプログレッシヴ・ロック・グループ「RAYUELA」。 76 年結成。78 年解散。作品は一枚。
Willie Campins | bass, vocals |
Andrew Goldstein | guitar, vocals |
Marcelo Morano | keyboards |
Marcelo Guillermo Morano Nojechowicz | drums, vocals, percussion |
Eduardo Berinstein | tenor sax, flute, percussion |
78 年発表のアルバム「Rayuela」。
内容は、アコースティックなサウンド・センスあふれるジャズロック。
ムードあるサックスや小気味のいいギターを主役にしたパワフルでしなやかなジャズロック調とアルゼンチン・ロックらしいたおやかなヴォーカル・ハーモニーを大いに生かしたフォーク・ロック調をともにカヴァーする作風である。
インストゥルメンタル・パートで目を惹くのはサックスだろう。
メロディアスで躍動感のあるテーマを軸にした若々しいプレイがいい。
陽性のようで全編を独特の哀愁が貫いており、そこにはフォーキーな素朴さ、ペーソスと都会的なアンニュイの両方のニュアンスが含まれている。
根っこには、日本の「演歌」にある情感に通じるものがあるような気がする。
アコースティックなタッチが特徴だが、エレキトリック・キーボードの充実度合いもすごい。
ギターやサックスの向こうを張るムーグ・シンセサイザーの華やかなプレイやバッキングのスペイシーなストリングス、オルガン、ソウルフルなエレクトリック・ピアノまで楽曲のスタイルやイメージに合わせて多才なパフォーマンスを決めている。(さらには、鮮やかなアコースティック・ピアノも披露)
ムーグは、フォーク風の場面でも管楽器に近いニュアンスで巧みにオブリガートやアクセントとなるプレイを入れてくる。
また、軽快なラテン調を堅持しつつも、ズシっとしたビートを決めて全体を引き締めるリズム・セクションもみごと。
繊細さとダイナミックな運動性が矛盾なく共存するところは、チャーリー・ガルシアの LA MAQUINA DE HACER PAJAROS と共通する。
また、アコースティックな牧歌調の歌ものをタイトなバンド演奏でジャズロックに昇華する手管は、イタリアン・ロックと同じ水準にある。
5 曲目は野心的な傑作。
ヴォーカルはスペイン語。
「La Casa Del Hombre」(4:01)華やかな歌ものジャズロック。演奏はしなやかなサックスがリード。
「Los Ultimos Grillos」(6:19)弾き語り風のデリケートなフォークロック。
「Aéreo」(4:52)ギターとサックスのインタープレイが冴える。歯切れのいいリズムを供給し続けるベース、ドラムスにも注目。
「Vientos De La Calma」(3:49)ブルージーなマウス・ハープが印象的なフォーク・ロック。
「Acaso Tu Crees (Que No Me Di Cuenta Que Te Fuistes Hace Diez Anos?)」(7:18)エレクトリック・キーボードのリードする技巧的でフューチャリスティックなプログレッシヴ・チューン。
ギターが加わると思い切り「ニューミュージック」風になり、サックスが加わるとフュージョン風になる。
そういった典型的なスタイルをパーツとしてとらえてメタフィジカルに迫るような大胆なアレンジもある。
「Sexo Y Dinero」(4:35)パーカッションとベースの跳ねの効いた RETURN TO FOREVER 風のジャズロック。ムーグもいい音だ。テーマ一発だがカッコいいので問題なし。
「Vendré Con El Tiempo」(7:48)息を呑むピアノ・ソロ、そしてスペイシーなシンセサイザーで幕を開ける、哀愁バラード。
PINK FLOYD 風のブルーズ・フィーリングを感じる。
(185.001 / Ediciones Rayuela 075 )