ドイツのシンフォニック・ロック・グループ「ROUSSEAU」。 78 年結成。 ルール出身。 80 年アルバム・デビュー。 メンバー・チェンジしつつも、現役。 作品は 2007 年の最新作「One Step Up ... Two Back」を含め、五作。 堅実なる CAMEL フォロワー。
Jörg Schwarz | electric & acoustic guitar, vocals |
Rainer Hofmann | piano, keyboards |
Dieter Beerman | bass |
Ali Pfeffer | drums, percussion |
2002 年発表の第四作「At The Cinema」。
15 年を経て(本家 CAMEL の新作とタイミングを合わせるかのように)発表された新作。
胸を締めつけるようにノスタルジックなピアノの調べで幕を開ける本作は、オールド・ウェーブ・ロックの良心を体現したような、メロディアスな佳作である。
テーマは映画劇場。
朗々と歌うギター、ゆったりとうねるストリングス・キーボード、力強く豊かなオルガンの響きと力強いリズム。
アメリカ風の土臭さも自然だし、ゲストの管弦もたいへんにいい仕事をしている。
CAMEL と同じく、重ねた年月の分だけブルージーなテイストが強まり、無常感もうっすらと積もっている。
思い出にふけることは大人の特権であり、そこから明日への希望を見出せるのもまた大人ならではの技である。
そう思うと、こういう音にひたる時間こそが真の贅沢であることが分かってくる。
ヴォーカルは英語。
(MUSEA FGBG 4436.AR)
Ali Pfeffer | drums, percussion |
Rainer Hofmann | piano, Mellotron, synthesizer, Hammond organ, String ensemble |
Christoph Huster | flute, percussion, guitar |
Jörg Schwarz | electric & acoustic guitar |
George Huthmacher | bass pedals, bass, piano |
80 年発表の第一作「Flower In Asphalt」。
内容は、ヨルグのメローなギター・プレイを中心としたソフトなシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。
多彩なキーボードとフルートなど、70 年代中盤の「Mirage」、「Moonmadness」期 CAMEL を思わせる、メロディアスでファンタジックなサウンドである。
ギターのプレイが 80 年にしてはやや古めかしい GS 歌謡曲調だが、素朴な味わいがあり、とても親しみやすい。
もっとも、ラティマー氏ほどのジャズ/ブルーズ・フィーリングに根ざした技巧はなく、丹念にフレーズを歌ってゆくスタイルでなんとか雰囲気を出しているといえるだろう。
やや土臭いトラッド的なメロディを織り交ぜるところが特徴的だ。
一方、主旋律をリードしたり軽やかに伴奏したりと、フルートが要所で効果的に使われている。
ギターよりも、むしろこのフルートの方が、CAMEL という印象を強めていると思う。
シンセサイザーは主にバッキングとして用いられ、ポリフォニック特有の音で涼やかな空気を生んでいる。
ときおり見せるメロディックなプレイも面白いが、キーボードとしては、むしろオルガンの演奏の方が印象的だ。
また、リズム・セクションは、地味だが、妙に堅くスクエアな感じが面白い。
ドラムスはアンディ・ウォード風の細かなハイハット・ワークを見せつつも、フィル、ロールはややぎこちない。
また、パーカッションやフルートが突如として妙に強めのアタックでトライバル風のビートを打ち出すのは、ドイツ・ロック特有のクセでしょうか。
全体に、ゆったりと歌うところと敏捷な動きを見せるアンサンブルのバランスもよく、楽しく聴くことのできる作品だ。
シンプルなリフを中心にしたアンサンブルとゆったりしたソロを交互にフィーチュアするスタイルでひたすら優しくソフトである。
テクニックは問題にならないが、のどかな田園風のメロディがあちこちに出てきて、気持ちよく聴ける。
そして、メンバー全員が CAMEL に憧れて切磋琢磨する様子も容易に想像できる。
地味ながらも CAMEL のリリカルな面を凝縮した好盤だ。
最終曲では、キーボードをフィーチュアし CAMEL を越えて、GENESIS までも髣髴させるシンフォニックなクライマックスが訪れます。
全曲インストゥルメンタル。
「Skylight」(4:20)
「Glockenrock」(4:35)
「Flower In Asphalt」(4:23)
「Le Grand Reveur」(5:07)フルートによる優美ながらも物憂げなテーマ、追いかけるギターの音色がじんわりと染みてくる名作。
「Entree」(5:15)
「Fool's Fantasy」(4:11)
「Dancing Leaves」(8:38)
(MUSEA FGBG 4023.AR)
Rainer Hofmann | keyboards |
Christoph Huster | flute, acoustic guitar |
Ali Pfeffer | drums |
Christoph Masbaum | acoustuic & electric guitar |
George Huthmacher | bass, acoustic guitar |
Herbert G.Ruppik | vocals |
83 年発表の第二作「Retreat」。
ギタリストの交代とリード・ヴォーカルの導入で、サウンドがやや変化した。
ギタリストはかなりの腕前であり、前任者と異なり、メローにメロディを歌わせるよりも、荒いながらもソリッドなソロで走るのが得意なようだ。
落ちついたフレーズでも安定感があり、このギターによって、全体の演奏のレベルが一段が上がったと思う。
また、ヴォーカルはとてもソフトであり、存在感が強烈でないところが、かえってこのグループのサウンドに合っている。
シンセサイザーがこの時代特有の軽い音になったのも、変化の一つだろう。
ドラムスは、かなりの鍛錬を経たらしく、より一層アンディ・ウォードに迫っている。
全体のサウンドは CAMEL を追いかけるようにフルートとギターをフィーチュアし、ジャジーなテイストが強まったメロディアスなもの。
典型は 4 曲目だろう。
アコースティック・ギターとシンセサイザーのソロが美しい 5 曲目も、フォーク的なデリカシーを持ちつつ、やはり CAMEL に通じる小洒落たソフトさがある。
5 曲目のように、前作よりは動の部分の切れも出てきたが、それでも本家に比べると、スピード感がなくアタックも弱い。そのため、全篇 CAMEL の繊細でファンタジックな部分を抜き出したような演奏が続く作品となった。
アコースティック・ギターのアルペジオがとてもきれいです。
ヴォーカルは英語。
各曲も鑑賞予定。
「L'âge d'or」(4:54)
「One of a thousand」(3:58)ヴォーカル入り。
歌唱、演奏ともに CAMEL そっくりのニュアンスをもつ。
「Café crème」(1:56)アコースティック・ギターによるドリーミーなデュオ。
ややフュージョン・タッチ。
「China」(4:09)フルートのリードするメランコリックな佳作。
遅すぎず速すぎないテンポとノーブルなビート感がいい。
「Yago」(5:55)おだやかなギター・アンサンブルを経てリズム・セクションの加わったスリリングなアンサンブルへと変化する名作。
前半の可憐なムーグ、後半をリードするフルートとキーボードがみごと。
最後の加速もカッコいい。
「Windsong」(3:32)沈痛なアルペジオに支えられたリード・ギターの憂鬱。ヨーロッパの哀愁です。
「Incomplete」(4:33)ヴォーカル入り。
フルート、ピアノによるあまりに美しく切ないイントロダクションを経て暖かみある歌が始まる。
「Scarlet Lake」(2:58)12 弦ギターと思われる大仰なアルペジオとフルートによるデュオ小品。
ニューエイジ風味あり。
前曲のヴォーカルの入りでも感じられたが、録音にも手がかかっていることが分かる。
「Brealfast at Tiffany's」(4:24)フルート、ピアノによるロマンティックなオープニングからギターのリードする快活なアンサンブルへとなだれ込む作品。
軽やかに表情を変えるフルート。
「Flight」(3:02)ヴォーカル入り。80 年代 CAMEL 調のライトなアップテンポ・チューン。
キャッチーなヴァースをフルートで抑えるところまで似てます。
(MUSEA FGBG 4051.AR)
Rainer Hofmann | keyboards |
Uwe Schilling | guitar |
Ali Pfeffer | drums, percussion |
Christoph Huster | flute, drums on 2 |
Christoph Masbaum | bass, percussion on 6 |
Herbert G.Ruppik | acoustinc guitar, vocals on 2, 7 |
Dieter Muller | vocals on 4, 9 |
88 年発表の第三作「Square The Circle」。
第二作発表後、一時解散の危機に陥るも、新メンバー加入と旧メンバーの支援によって活動を再開して発表した作品。
ギタリストが再交代するも、インストゥルメンタル主体のメローな CAMEL 風サウンドに変化はない。
フルート、ファンタジックなシンセサイザー、奇数拍子のテーマ、軽やかなフュージョン・テイストなど、CAMEL の特徴をしっかり消化し、暖かみにあふれた音楽を作り上げている。
ヴォーカルも完全に CAMEL。
ラティマー風はおろか、一部リチャード・シンクレア風味すらある。
ANYONE'S DAUGHTER に比べると、やや力不足ながらも、優美なファンタジック・ロックの佳作といえる出来映えだ。
ただし、本家ほどはキャッチーなテーマがなく、ゆったりとした場面ほどは切れ味鋭いところもないため、やや一本調子になっているのが残念。
ドラムスもアンディ・ウォードと比べるとパターンが少ない。
ヴォーカルは英語。
「Magical Moments」(3:31)ファンタジックで調子のいいインストゥルメンタル。
ロマンティックなキーボードのイントロダクションは、なぜか TRIUMVIRAT の「愛の神秘」を思わせる。
フルートを静かに歌わせる優美なテーマやギターを散りばめ、5 拍子で走るところまで CAMEL 風。
ファンタジックで優しげななかに、ほのかにメランコリックな翳がある。
ていねいなアレンジがなされた小曲だ。
「Fade Away」(3:15)ラテン風味のあるロマンティックなポップ・ナンバー。
ノーブルなヴォーカルは、まさにリチャード・シンクレア風。
ここでもエレピ、シンセサイザーをメインにフルートが優雅にオープニングを歌い、小気味いいギターが間奏部をリードする。
リズムも細かく変化している。
もとっも、ジャジーだが AOR というには音がソリッドでドライヴ感あり。
この微妙なサジ加減が重要なのだ。
「Avenue Du Printemps」(5:46)フルートとキーボードをフィーチュアしたフュージョン風のポップ・インストゥルメンタル。
アコースティック・ギターがゆるやかなストロークや幻想的なアルペジオで全編の背景を彩る。
後半はファンタジックなアルペジオからさえずるようなフルートのソロへと進みストリングスが厳かに歌う。
エレキギターはアクセント程度。
透明感ある音が主である。
昨今流行のモンド系のイージー・リスニングと完全に異なるのは、ピュアでイノセントなものが感じられること。
「Masquerade」(3:28)「Breathless」以降の CAMELを思わせるキャッチーなヴォーカル・ナンバー。
今度のリード・ヴォーカルは、ラティマーをうまくしたようなスタイルである。
ギターがしっかりヴォーカルに寄り添うところが似ている。
間奏ではフルートも聴こえるが、オープニングでも現れるデジタル・シンセサイザー(時代の音である)がどうしても強い印象を残す。
「Timeless」(5:07)透明なシンセサイザーとフルート、アコースティック・ギターをフィーチュアした、ニューエイジ風のインストゥルメンタル。
サウンドトラックのような雄大なシンセサイザーをバックに、フルートとアコースティック・ギターが軽やかなアンサンブルを見せるかと思えば、ポップス・オーケストラ調のストリングス・シンセサイザーが朗々と歌い上げる。
イントロの謎めいたシンセサイザーがカッコいい。
後半には、ギター・ソロもあり、ロックらしい洒落っ気やパワーがいいアクセントになっている。
「Winter's Tale」(7:13)ジャジーで甘いラヴ・ソング風のキーボード・アンサンブルに力強いギターのソロを盛り込んだ大作。
分厚いシンセサイザーとメローなギターの取り合わせは陳腐といえば陳腐だがテンポの変化やソリッドなギター・プレイでなんとかもたせているようだ。
「Isle Of Light」(2:57)再びシンクレア・ヴォイスによるポップス。
ギター、ヴォーカルともにこれはかなり本家に迫っている。
曲もいいです。
ややしり切れトンボで残念。
「Square The Circle」(5:06)リズミカルなコード・ストロークとキャッチーなデジタル・シンセサイザーのリフがあの時代を思わせるもテーマ部はメロディアスで美しいインストゥルメンタル。
マーチング・スネアと柔らかなキーボード群、ハーモニクスを用いる堅実なベース。
瞑想的な中間部はややニューエイジ風。
終盤は再びマーチング・スネアと勇壮なキーボードからギター・ソロへと進むプログレな展開。
しかしイントロと同じ終盤のリフはあまりいただけない。
「As If Painted」(3:52)エレアコ・ギターとシンセサイザーによるアコースティックな質感のあるアンサンブル。
今度のヴォーカルはラティマー。
ややイージーなメイン・テーマとストリングス・シンセサイザーの伴奏そしてサビで入るエレキギターのヘヴィな音から間奏のフルートまで、最後まで CAMEL を意識している。
息を呑むようなメロディや和声の響きの工夫があれば、完璧だったでしょう。
本家のすごさを改めて感じます。
「Magical Moments - reprise」(2:51)弦楽アンサンブル入りの美しいエピローグ。
アコースティック・ギターの響きが切ない。
(MUSEA FGBG 4135.AR)