イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「SATISFACTION」。 ベテラン・ジャズマン、マイク・コットンを中心に結成。唯一作はハードなブラス・ロック。DECCA レーベル。
Bernie Higginson | vocals, drums, bongos |
John Beecham | trombone, tuba |
Derek Griffiths | vocals, lead guitar |
Nick Newall | flute, alto sax, tenor sax, trumpet |
Lem Lubin | lead vocals, bass, acoustic guitar |
Mike Cotton | vocals, trumpet, flugelhorn, pocket cornet, harmonica |
71 年発表のアルバム「Satisfaction」。
内容は、管楽器を大きくフィーチュアしたいわゆる「ブラス・ロック」。
CHICAGO や BS&T と同系列の音に英国ロックらしいメランコリックで過激なアレンジが施され、全体としてやや「ひん曲がって」いる。
ジャズ的なソロよりも、多彩なアイデアを生かしたアンサンブルやパワフルなオブリガート、叙景的、効果音的な音の使い方が冴えている。
クラシカルなフルートやオーソドックスながらもジャズ/ブルーズと多彩に弾き分けるギターもいい感じだ。
パクリが多いのかこちらがオリジナルなのか分からないが、印象的なメロディと大胆なアレンジがあちこちに散りばめられている。
楽に口ずさめて悪くないので、テーマとなるメロディの冴えはかなりのものだろう。
痛快なブラスの響きとポップなメロディに素直に喜ばされ、ひねった展開にニヤリとさせられる、そういう作品である。
製作もきちんとしていると思う。
キーボードの不在はまったく気にならない。
あえていうと、ヴォーカル・ハーモニーは悪くないが、リード・ヴォーカリストの声質に存在感、個性が不足気味。
プロデュースはデヴィッド・ヒッチコック。現行 CD にはシングル二枚分、3 曲のボーナストラックつき。
シングルは、持ち前のキャッチーさとともにハードロックにも目を配った内容から、フルートをフィーチュアしたエキゾティックなソウル・ジャズものまで多彩。
「Just Lay Back And Enjoy It」(7:35)CHICAGO 路線の正統派ブラス・ロック。
2 分すぎ辺りからの叙情的な展開の妙は英国ロックのコクというべきもの。
4 分辺りからのポリフォニックなブラスのアンサンブルもいい。
ダイナミックな展開を支える丹念なアレンジがナイスなドラマを生む。名曲。
「She Follows The Band」(3:50)フォーキーなヴァースから切ないサビへの展開がいい佳曲。
前曲もそうだったがアコースティック・ギターの味わいは格別。ヴォーカルをオブリガートするフルートの哀愁。
60 年代っぽい感傷的なノリだが、ジャジーな骨太さが大人向けの音として引き締める。
「Cold Summer」(5:09)前曲のサビのコード進行そのままのような快調ロックンロール。
「25 Or 6 To 4」といったところ。
エネルギッシュなドラミングとともにギターのアドリヴも走る。
突き抜けた開放感はあるが、風景はどこか歪んでいる。
「Sharing」(6:15)呪術的な怪しさ満点の傑作。
TONTON MACOUTE にもこんな曲があった。
中間部のブラス・アンサンブルには、ニール・アードレイやキース・ティペットのビッグバンドのニュアンスも。
「Can You Liar, Liar」(4:16)キャッチーでカッコいいオールド・ウェーヴ・ブラス・ロック。
ギター・ソロもテリー・キャスっぽい。
「You Upset The Grace Of Living When You Lie」(6:24)
ティム・ハーディン(プログレ・ファンには THE NICE の「Hang On To A Dream」でおなじみ)のカヴァー。
AQUILA の唯一作に非常に似た作品があったと思う。
骨太なロマン。
アルト・サックスのソロがすばらしい。
「Just Like Friends」(4:01)洗練されたジャジーなフォーク・ソング。派手派手なブラス・アレンジとの大胆な取り合わせ。
インドな展開も勢いで乗り切る。
ベルセバの方が昔っぽいという不思議な現象。
「Go Through Changes」(7:13)60 年代 CHICAGO に通じるラディカルでアグレッシヴな姿勢が強く感じられる力作。
「From The Beginning ...」と聴こえてきそう。
フォーキーな幻想性とパワフルなブラスの現実味の配合が絶妙。
CREAM もある。
ヘヴィなギターのフィードバックを押し流してクロス・フェードするブラス・セクションの「また来週!」感のすごさ。
「Love It Is」(3:00)ボーナス・トラック。ファースト・シングルの A 面。
「Don't Rag The Lady」(3:16)ボーナス・トラック。セカンド・シングルの A 面。
「Gregory Shan't」(4:21)ボーナス・トラック。セカンド・シングルの B 面。
(DECCA SKL 5075 / ECLEC2069)