アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「SOMNAMBULIST」。 93 年結成。 HR、オルタナティヴとさ迷った挙句にスタイルとしてのプログレに辿りついた中年予備軍。 ヴォーカリスト再交代後の三作目を待ってます。 グループ名は、夢遊病者の意味。
Terry Clouse | basses |
Jody Park | keyboards |
Henry Bones | guitars, vocals |
Scott Batchford | drums |
96 年発表のアルバム「Somnambulist」。
内容は、ヘヴィなグランジ・プログレ。
後期 KING CRIMSON の黒光りするソリッドなサウンドを用いて、毒々しい原色のイメージの楽曲を奏でている。
冒頭含め全編メロトロンが駆使され、ヘヴィなディストーション・ベース、ドラムスによるダイナミックで締まったリズム・セクションが演奏を引っ張ってゆく。
スピードよりも、強引なまでのモーメンタムと勢いでグラインドする演奏だ。
キーボードのプレイやテーマはシンフォニックなイメージを作ろうとしているが、ギターやヴォーカルはもっと衝動的で破壊的なものを目指しているようだ。
そのアンビバレンスというか、自己破壊衝動に近いイラつきと荒々しさが特徴的である。
ギターは、ロバート・フリップがパンクをやっているような、かなり破天荒なプレイを連発する。
ヴォーカルも、ガレージ風の下品なスタイルである。
パンク、オルタナ、ヒップホップ調からエイドリアン・ブリューもどきのようなところまで、多彩といえば多彩だ。
キーボードは、ハードロック風のオルガンからメロトロン・ストリングスまで種類/音数が多い。
全体に、"RED" KING CRIMSON に直結するヘヴィ・シンフォニック路線とグランジが合体したところにアメリカン・ロックらしいヌケのよさを少々混ぜた芸風である。
ヴォーカルや SE に見られるように、ハチャメチャ気味の展開に飛び込んでしまう癖もあり。
よくいえばフランク・ザッパ風の演劇性であり、悪くいえば音楽的な効果をあまり考えていないアドリヴである。
「Watcher Of The Skies」に似たテーマをもつ 4 曲目の中盤のような、うまいのか下手なのかわからないまま、迫力/説得力だけはあるというところが、最大の特徴だろう。
サウンドはヘヴィだが、昨今の HR/HM、プログレ・メタル的な面はほとんどない。
「Frotus」
「Conqueror Worm」
「Return Of The Son Of Civilization」
「Globos Formas Para Mañana」
「Pinocchio」
「Multum In Parvo」
「Prometheus' Lament」
「Torquemada」
「Unlearning Folds Of Red」
(LE 1027)
Terry Clouse | basses |
Jody Park | keyboards |
Charlie Shelton | guitars, 12 strings |
Jo Whitaker | drums, percussion |
Peter Cornell | vocals |
2001 年発表のアルバム「The Paranormal Humidor」。
ギタリスト、ドラマーが交代し、デス声ヴォーカリストも加入。
破天荒さが突出していた前作と比べると、サウンド/曲調はやや整理され、自然に耳に入ってくるようになった。
後半は、メロディアスな展開も多く、ベテラン HR/HM グループの作品のような感じもある。
前作から引き継ぐのは、まともな展開に突如現れる思い切りひねくった演奏と、疲れ知らずの全力疾走しっ放し、全体から醸し出される不気味な凶暴さである。
ただし、グチャグチャさというか自己破滅的な面は、抑えられている。
総じて、若干グランジ寄りのヘヴィ・プログレといってもいい内容になっている。
HM/HR になり切らないのは、単調なビートがドライヴするスピード感があまり感じられないからだ。
確かに、アメリカン・ロックらしく、パワフルなうねりとともに一体となってグイグイと休みなく突き進む演奏ではある。
しかし、演奏は、変則リズムと頻繁なリズム・チェンジとともに逆転反転を繰りかえし、テーマを忘れてしまうほど変化を遂げてゆく。
テーマ部分については、かなりメロディアスだったりハーモニーのコブシも効いているが、全体がまとまりそうになると、キーボードがドライヴする変拍子による奇怪なトゥッティが切り込んでかき回し始める。
そして、唐突な場面展開が繰り広げられ、あれよあれよという間に思ってもみなかったところへ連れ去られてしまう。
このまま真っ直ぐ押せば十分売れそうじゃん、と思わせるのもつかの間、突如唸りを上げるベースとともに、GENTLE GIANT ばりの無機的で邪悪なエンジンを全開にし始めるのだ。
キーボードについては、クラシカルなテイストのオルガン、シンセサイザー、メロトロンがたっぷり使われており、ヘヴィな演奏でアコースティック・ピアノがごく自然に使われているところもおもしろい。
ヴォーカリストは安定しているものの、「ささやき」スタイルが主なためか、存在感はさほどでない。
どちらかといえば、オルタナティヴ・ロック寄りであり、アコースティック・ギターによる弾き語りがうまそうなタイプである。(それでいてデス声のシャウトもあるからよく分からない)
ギタリストは現代らしいノーマル志向のテクニシャンのようであり、ドラマーも、ライド・シンバル連打だけではないモダンで切れ味重視のリズム・キープを見せている。
やはり、メロディそのものを前面に出すよりも、一体となったヴォリューム感と次々たたみかけるような技巧がウリであり、そういう意図のせいか、ミックスもヴォーカルより器楽が強調されている。
また、分厚くハードな、ときにガレージ風のヤケッパチさもある全体演奏に、ノスタルジックでスインギーなアクセントをはさみこむところもいいし、異様なエキゾチズムの演出もハマっている。
全体に、すっ飛びながらも、聴きやすさをアップすることに成功している。
ところで、オープニングとエンディングのナレーションから、土曜日の深夜にやっているようなホラー映画を連想するが、実際はどうなのだろう。
一方、前作にあった底無しの激しさ、徹底して危うい魅力は減退したと思う。
あからさまなグランジ、KING "RED" CRIMSON から影響の代わりに(KING "Nuovo Metal" CRIMSON からの影響はたっぷりありそうだが)、自然なアメリカン HR/HM 風味(わたしにでもやや古め(METALICA とか?)であることが分かる)を生かしているともいえる。
パーカッシヴで堂々たるテクニカル・アンサンブルとコーラスは、ときにやけに感傷的になるヴォーカルとあわせると、ECHOLYN に通じるところもある。
白眉は、前作のキナ臭さを満載した 5 曲目。
トレモロ風のピアノとともにヴォーカルが切なく吼える。
こういう作風をプログレメタルというのかもしれないが、これだけの内容があれば、ジャンルはあまり関係ない。
「In The Mindwarp Pavillion」
「Pathos Of Least Resistance」
「Destroy...She Said」
「Infant」
「Troy Built Helen」
「Died And Gone」
「Paranormal Humidor」
(LE 1035)