ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「STREETMARK」。
69 年結成。
76 年アルバム・デビュー。
メンバー・チェンジを繰り返しつつ、81 年までに五枚の作品を残す。
PROCOL HARUM 風のクラシカルなキーボードがフィーチュアされた、ロマンチックなサウンド。
Dorothea Rauckes | keyboards |
Thomas Schreiber | guitars |
Georg Buschmann | vocals |
Wolfgang Westphal | bass |
Hans Schweiss | drums |
76 年発表の第一作「Nordland」。
内容は、古びたギター、キーボードが奏でるロマンチックなクラシカル・ロック。
BEGGARS OPERA など VERTIGO レーベルの一連のクラシカル・ロックを 5 年遅れで追いかけている感じだ。
つまり、バタバタした古色蒼然たるアート・ロック・サウンドと甘ったるいメロディを野太く歌い上げるヴォーカルが結びついた作品である。
イタリア協奏曲のみが正統的なクラシックのアレンジ作品であり、残りの作品は、ストリングス・シンセサイザーをバックにキャッチーなヴォーカルが入るポップス、または、ドコドコ太鼓でオルガンが走り回るインストゥルメンタル主体のクラシック調ロックである。
まずは、この垢抜けなさを愛すべきだろう。
オルガン、シンセサイザー(ムーグ?)の音は、71 年頃の作品のものといっていいほど古臭いが、今となっては 71 年と 76 年の違いなど誤差になっているだろうからそこを気にすることもない。70 年代をしみじみ味わうためのきっかけとしては、なんら問題はないからだ。
組曲「House Of Three Windows」は、オルガンの音とヴォーカルの声が、きわめて PROCOL HARUM に近い。
エリナー・リグビーのカヴァーは、ギター・ソロによる演奏からヴォーカルへと進む、ニューロック風のパワフルなアレンジ。
垂直に刻むリズムが特徴的だ。
また、タイトル組曲「Nordland」は、シンセサイザーとギターによる哀愁に溢れる楽章と軽快なヴォーカル・パートから成る、メリハリある作品。
後半は、ヴォーカル中心だが、途中でブルーズ風の即興が挿入されたり、オルガン、エレピのソロがあったりと、曲想は多彩である。
最終曲「Reality Airport」も、クラシカルなオルガンとジャジーなエレピ、バラード風のヴォーカルが次々と入れ替わる変化に富んだ佳作。
プロデュースはベルンド・シュライバーとコニー・プランク。SKY records。
ドイツ・ロックに特有なのか、不器用で濃厚な演奏なのに無常感も一緒に漂う不思議な音である。
「House Of Three Windows」四部構成の組曲。
「1)House For Hire」(3:17)
「2)Green Velvet Curtains」(2:20)
「3)Eleanor Rigby」(5:22)THE BEATLES のカヴァー。
「4)Amleth Saga」(7:17)
「Italian Concert In Rock」(2:33)バッハのイタリア協奏曲第一楽章から抜粋。
インストゥルメンタル。
「Da Capo」(2:46)ボーナス・トラック。
「Nordland」二部構成の組曲。
「1)Waves & Visions」(2:49)インストゥルメンタル。
「2)Lyster Fjord」(7:26)
「Ladoga」(3:43)
「Reality Airport」(6:35)
(SKY CD 3043)
Dorothea Rauckes | keyboards, vocals |
Thomas Schreiber | guitars,vocals |
Bogdan Skowronek | drums, percussion |
guest: | |
---|---|
Jurgen Pluta | bass |
79 年発表の第四作「Dry」。
内容は、シンセサイザー、オルガンなどキーボードがフィーチュアされたスペイシーなポップ・ロック。
PINK FLOYD、GENESIS などの英国プログレや DEEP PURPLE 辺りの影響を強く受けて、ドイツ・ロック特有の茫洋とした(フォーキーでサイケデリックな)ロマンチシズムを加味した作風である。
デフォルメ気味のレゾナンスを駆使して存在感抜群のアナログ・シンセサイザーに加えて、パワフルなドラムス、おっとりと歌うギター(3 曲目後半のレガートなソロに注目)も腕達者であり、アンサンブルは巧みだ。
AOR っぽい展開になっても、垢抜けないヴォーカルとやや古めかしいソロで無闇に前に出るシンセサイザー、オルガンのおかげで、ありきたりな感じにはならない。
CAMEL ほどは器用にジャズ・フィーリングを活かせず(5 曲目なんてよく似ているが)、ハードロック・マインドを抱えたまま 80 年代迎えてしまったようだ。
6 曲目「Disco Dry」だけはタイトル通り群を抜く同時代性を誇示するが、キーボード・サウンドが重くのしかかるのとトムトムのような太鼓が活躍するため、ダンサブルという言葉があまり似合わない。野蛮で一種独特のサイケデリックな雰囲気がある。
キーボードは、ハモンド・オルガン、エレクトリック・ピアノ、シンセサイザーによるドローン、ストリングス、ノイズなど全編で主役級の活躍をする。
内容はかなりとっ散らかっているが、あまり細かいことをこだわらずにキーボードやギターのフレーズに身を任せて楽しむべき作品である。
ヴォーカルは英語。
プロデュースはベルンド・シュライバー。コニー・プランクはドラムスのチューニング担当として謝辞がある。
(SKY CD 13003)