アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「SOUND TRIBE SECTOR 9 」。 通常 4 ピースにパーカッションを加えた五人編成。作品は四枚。独特のクールネスとストイックなセンスが光るジャム・バンド・シーンの新鋭。
Zach Velmer | drums |
Hunter Brown | guitar |
David Murphy | bass |
David Phipps | keyboards |
Jeffrey Lerner | percussion |
2001 年発表のアルバム「Seasons 01」。
即興演奏を集めた CD 二枚組ライヴ盤。
内容は、あまりに小気味のいいスネア・ビートにのせて、キーボードやギター、パーカッションが見果てぬ夢を描いてゆくインストゥルメンタル・ミュージック。
人力テクノ・ビートの上でダブ、トランス、アンビエントというキーワードで語られるようなサウンドが、即興的に奏でられてゆく、特異なスタイルである。
音に涼感と暖かみ、純粋さと賛美歌のような厳かな空気があり、いわゆるロックやジャズの「汚らしさ」がない。
それでも、リズム主導の演奏にギターとキーボードが敏感に反応してゆき、あっという間にうねるようなノリではちきれそうになってゆく。
そのノリのよさには、ジャズ、ファンク、ドラムンベースなど、リズミカルなグルーヴを形容するためのさまざまな言葉がすべてあてはまるようだ。
ダンス・ミュージックとしての機能性とリスニング・ミュージックと機能性の両方をバランスよく確保しているといってもいいだろう。
また、ドラムスは、必ずしもビートのみならず自由なプレイを見せる。
人力ドラムン・ベースというような表現だけではこの魅力的なリズムを語りきれないと思う。
エフェクト風のナレーション以外はすべてインストゥルメンタル。
アンビエント/トランス系ということでは CAN、強引なまでのビートとスピード感は GONG を思わせるところもある。
演奏の揺らぎがはかなさに変わって何かを訴えかけてくるところは、KING CRIMSON の即興に通じると思う。
もちろんイーノやロバート・フリップのアンビエント・ミュージックへの連想もある。
こういう音を「オーガニック」というそうだ。
確かにかつてのニューエイジ・ミュージックが標榜していた宇宙指向、自然回帰というニュアンスが音に感じられるものの、その表現が的を射ているのかどうかはよく分らない。
80 年代にもこういうような音があったと思うが、もっと内省的で気弱な感じだった。
ここの音は、初めは薄くて細身に感じられるが、しなやかで思いのほか強度もある。
ダイナミズムというか、ちょっとやそっとではへこたれなさそうだ。
あまりなじみのない範疇の音だが、ジャジーな音の断片が散りばめられているおかげで、なんとかこのグルーヴについてゆける。
この肉体感覚の希薄なクールネスが今の世の基調の一つだとすると、やはり 21 世紀は来ていたことになる。
「A Gift for Gaia」(12:13)
「Jebez」 (15:28)
「Ramone & Emiglio」(19:18)テクノ・ビートでひた走るジャジーで熱いインプロヴィゼーション。ギターがカッコいい。
「Satori」(10:51)ロマンティシズムと潔癖さ、ストリシズムが調和した傑作。
「Good for Everyday」(8:34)
「Equinox」(8:41)
「Kaya」(12:17)
「Eclipse」(5:13)タイトルも内容も「甦る JADE WARRIOR」。(まだ死んでないか)
「Thread」(15:40)ファンクなジャズロック、そしてアンビエントなサイケ。
「Breach」(2:57)