フィンランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「TABULA RASA」。 72 年結成。77 年解散。 作品はニ枚。 ギタリストのシルヴェノイネンは、フィンランドでは著名なブルーズ・ギタリスト。 しっとりとしたメロディを優雅に奏でるソフトなロック。
Heikki Silvennoinen | guitar |
Jukka Leppilampi | vocals |
Tapio Suominen | bass |
Asko Pakkanen | drums |
Jarmo Sormunen | flute |
75 年発表の第一作「Tabula Rasa」。
内容は、ブルーズ・フィーリングあるギターとさえずるようなフルートをフィーチュアした歌ものロック。
暖かみと活気、人懐こさ、またそれとは裏腹な独特のクールな響きもある黄昏ファンタジーである。
リフがドライヴする演奏ではあるが、決してハードロックではなく、むしろ 60 年代終盤のビートの影響を色濃く残した音である。
CAMEL と同様な暖かみと上品なユーモアが感じられるが、ジャズっぽさよりもブルージーなかげりとフォーク・タッチの素朴さが主であるところが若干異なる。
(ブルージーなのにファンタジックというところはよく似ている)
ギターとフルートが暴れまわると確かに JETHRO TULL になるが、TULL ほど海千山千な感じはしない。
もっと純朴である。
ラウンジ調の 7th の響きはレア・グルーヴのファンにももてはやされそうだ。
明快でリズミカルなアンサンブルから、しっとりとしたフォーク風のナンバーまで、ていねいな演奏で曲想を描いており、軽やかなリフにうっすらとにじむトラッド風味や、ピアノ、アコースティック・ギターの余韻に漂う過剰にならないセンチメンタリズムがじつにいい。
全体に楽曲に 70 年代前半の日本の歌謡曲を思わせる表情があるのは、日本のポップス・シーンのネタ元が遥か北欧にまで及んでいたということなのだろうか。
4 曲目のフルートを用いたリフに驚かない人はいないだろう。
また、まろやかにして勢いのいいトゥッティを聴いていると、じつはかなりテクニシャンなのでは、という気もしてくる。
さりげない変拍子もあるし、特に、フルートとギターは楽器の歌わせ方をしっかり心得ている。
唯一のインストゥルメンタルである 6 曲目のインタープレイは、かなりの迫力だ。
冒頭、THE BEACH BOYS を思わせるヴォーカル・エコーのビート・ナンバーの古臭さ(おそらく中音域を強めにした分離のない音質そのものにも起因するのだろう)にびっくりするが、次第にノスタルジーの懐に抱かれ、スリリングな演奏に身をゆだねる心地よさにうっとりしてしまう。
ヴォーカルは、英語だったらさぞかし土臭かったろうが、原語の響きおかげで、巧まざるユーモアと素朴さが出ていい感じになっている。
モームスのファンに聴かせたい。
結論は、(JETHRO TULL + CAMEL + THE BEACH BOYS)× 黄昏の北欧テイスト。
ヴォーカルはおそらくフィン語。
1 曲目「Lahto」(3:51)
2 曲目「Mik's Ette Vastaa Vanhat Puut」(3:01)
3 曲目「Tuho」(6:32)メランコリックなバラード。クールなアンサンブルが魅力の名曲。
4 曲目「Gryf」(6:17)メイン・パートの「ひばり」の G.S. サウンドのような独特の垢抜けなさに驚かされるが、あっという間に勢いある JETHRO TULL ばりのアンサンブルへと発展し、パワフルな演奏が繰り広げられる。
5 曲目「Tyhja On Taulu」(4:04)
6 曲目「Nyt Maalaan Elamaa...」(4:00)ワウを使った歯切れのいいギターとジャジーなフルートの応酬が楽しい快速インストゥルメンタル。
7 曲目「Vuorellaistuja」(8:10)ギターのアルペジオにフルートとスキャットがうっすらと重なる CAMEL 風のファンタジック・チューン。
圧巻のワウ・ギター・ソロとフルート・ソロ、ストリングスも使われておりインストゥルメンタルが充実。
大傑作。
8 曲目「Prinssi」(3:10)北欧らしいオセンチなバラード。
(LRCD 135)
Heikki Silvennoinen | guitar |
Jukka Leppilampi | vocals |
Tapio Suominen | bass |
Jukka Aronen | drums, percussion, timpani |
Jarno Sinisalo | piano, electric piano, organ, synthesizer, harpsicord |
76 年発表の第二作「Ekkedien Tanssi」。
フルート奏者は脱退、ドラムスのメンバー交代とキーボーディストが新たに加入する。
メンバー交代とともに、サウンドは時代の流れに伴ったジャジーでメロウなインストゥルメンタル主体のものへと変化する。
フルートが去ったためシルヴェノイネンのブルージーでメロディアスなギターが演奏の中心へと収まり、ピアノやストリングスがしっかりと脇を固めている。
JETHRO TULL 側から完全に CAMEL 側へとシフトした形である。
ヴォーカル・ナンバーでは、当時の米国の音に近い AOR 調も強まっている。
フュージョン・テイストとほのかなファンタジー性のブレンド、これはまさしく同時期の CAMEL と同じである。
ナチュラル・ディストーションのメロディアスなギター、俊敏なベース・ライン、エレクトリック・ピアノと星を掃くストリングス・シンセサイザー、そして小刻みなハイハット・ワークが特徴的なライトにして高い運動能力をもつドラムスなど、あらゆる面で本家に通じている。(むしろ、ぎりぎり「Rain Dances」を先取りしている感もあり。KAIPA の項でも述べたが、じつは稀代のリクルータ、アンディ・ラティマーがこの辺りにまで目配り怠りなかったということか?!)
ヴォーカルの表情も、ラティマーのヘタウマからシンクレアばりのソフト・タッチまでしっかりカバーしているし、ムーディなエレピとファンキーにジャジーにバウンスするリズムにもかかわらず汗臭くならないところもよく似ている。
かなり意識的に追いかけているのだろう。
それでも、洗練されたポップ・テイストに独特のノンビリ感があるところが、いかにも北欧のグループらしい。
ヴォーカルはおそらくフィン語。
プロデュースに WIGWAM のユッカ・グスタフソンも名前を連ねている。
CAMEL ファン、ギター・ファン、10CC のファンにもお勧め。
「Ekkedien Tanssi」(4:46)なめらかなギターがカッコいいインストゥルメンタル。本曲のみベースはペッカ・ポーヨラが担当してるという噂がありますが ....
「Uskollinen」(6:10)とぼけたヴォーカルも似てます。後半、オルガンとギターが熱い演奏を繰り広げる。
「Aamukasteen Laiva」(4:01)
「Omantunnon Rukous」(6:09)ジャジーなファンタジー。名曲。
「Lasihelmipeli」(4:13)
「Rakastaa」(2:59)
「Kehto」(4:10)
「Babyla Rasa」(3:22)
「Säästä Mun Pää」(5:34)
「Rakastatko Vielä Kun On Ilta」(4:29)ボーナス・トラック。
シングル盤より。
「Yskin」(3:27)ボーナス・トラック。
シングル盤より。
(LRCD 170)