フィンランドのプログレッシヴ・ロック・グループ「WIGWAM」。
69 年英国人ジム・ペンブロークを中心に結成。
メンバー交代を経つつ、79 年まで活動し、八枚のアルバムを残す。
フィンランドでは絶大な人気を誇り、ヴァージンからワールド・デビューも果たす。
ペッカ・ポーヨラ、ユッカ・グスタフソンら、後にソロで活躍するミュージシャンが在籍した。
2001 年の再編ライヴに続き、2002 年新譜発表。
ジャズを基調に、サイケなポップ感覚も交えたユニークなサウンド。
オルガン、ピアノのツイン・キーボードを中心にした技巧的な演奏を見せる。
Jukka Gustavson | vocals, organ, piano | Mats Hulden | bass |
Nikke Nikamo | guitar | Jim Penbroke | vocals |
Ronnie Osterberg | drums | ||
guest: | |||
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Marjoritta Gustavson | vocals | ||
Fitz Jenkins | double bass | ||
Downtown Dixie Tigers Jazzband |
69 年発表の第一作「Hard N'Horny」。
内容は、オルガン、ピアノを中心にした器楽とドリーミーなヴォーカルのコンビネーションによるジャジーな英国風ロック。
ジャズ風のこなれた演奏とサイケデリック・ロックのセンスが入り交じった、ブルージーでウィットもある音である。
スワンプな土臭さ(ルーツはもちろん THE BAND)とシンフォニック色をあわせもつ PROCOL HARUM 調の作品から、ピアノを活かしたアヴァンギャルドな作品まで、ルーズにして尖がった楽曲をさりげなくも抜群の演奏力でこなす。
シニカルでかったるげなくせに夢見がちで...要はどこまでも若者らしいのである。
ペッカ・ポーヨラは、まだ参加していない。
ペンブロークはリード・ヴォーカルをグスタフソンに譲りやや控えめ。
A 面では、特にグスタフソンのジャズ・オルガンが光る。
B 面の組曲は、一転してブリティッシュ・テイストの甘みと暖かみのある、スケールの大きい組曲。
名グループの大作に引けをとらない力作である。
ヴォーカルは、A 面がフィン語、B 面は英語。
プロデュース、ストリングス・アレンジメントは、オットー・ドナー。
中期 THE BEATLES のサイケデリック・テイストとモダン/ソウル・ジャズをあわせるとこんな感じでしょうか。
ここのジャケットはセカンドプレス LP と現行再発 CD のもの。最初の LP はプレス数限定の手書き。
「633 Jesu Fåglar」(0:07)ユーモラスな効果音。
「Pidän Sinusta」(5:38)オルガンをフィーチュアしたインストゥルメンタル・ジャズロック。
エレクトリック楽器を用いているが、基本は 8 分の 6 拍子のジャズである。
「En Aio Paeta」(3:02)教会風のオルガン、ピアノが伴奏する PROCOL HARUM 風の小品。
音色は暖かみにあふれている。
クラシカルなメロディ・ラインをとぼけたような醒めたような、なんともいえない歌唱がたどるところが個性である。
メイン・ヴォーカルがグスタフソン、高音のハモリがペンブロークと思われる。
「Neron Muistolle, Hyvää Yötä」(3:10)フリーなピアノ伴奏による前衛寸劇風の作品。
男女の密やかなダイアローグと調子っ外れのピアノの乱れ弾き、アドホックに叩き捲くるドラムス、空気の波紋が見えそうな電子音、枯れ枝を折るようなピチカート。
アングラ感満載。
「Guardian Angel, The Future」(4:58)ピアノ伴奏による TRAFFIC 風の幻想的な作品。
アコースティックで枯れたヴァースと R&B 風にグラインドするコーラス。
グスタフソンのリード・ヴォーカルはゲイリー・ブルッカーよりもスティーヴ・ウィンウッドに寄る。
いくつものイメージを一つにしたような不思議な色合いの作品である。
オルガンのアクセントが強烈。
「No Pens, Ei Karsinoita」(4:53)ピアノ中心の 4 ビート・ジャズ・インストゥルメンタル。
次第にエキサイトしてくるピアノがカッコいい。
エピローグはチェンバロ独奏。
「Henry's...」ペンブロークのヴォーカルがリードするブリティッシュ・ロック・テイストたっぷりの傑作長編。
9 パートから構成され、「Abbey Road」の B 面や CARAVAN の大作を思わせる流れるようなメドレーである。
「...Mountain Range Or Thereabouts」(3:11)幻想的かつ挑戦的なフリージャズ(初期 KING CRIMSON か)で幕を開けるも、一転御伽噺タッチのビートポップへ。
語り口は STACKRIDGE か。
テンポやリズムも自在に変化する。
ジャジーなピアノやヴァイブ、ストリングス、アグレッシヴなオルガンが交互に現れて巧妙にリードする。
「...Geographical And Astronomical Mistakes」(2:01)PROCOL HARUM を思わせるシンフォニックなバラード。
弦楽、ソフトなギターが取り巻く、ノスタルジーあふれる作風だ。
「...Highway Code」(2:53)ピアノ、アコースティック・ギターがビートを刻むフォーク・ロック。
60 年代末を彩る熱気あふれるオルガン、堅実なリズム、荒々しくも感傷的な音である。
PROCOL HARUMの名品「Shine On Brightly」に似る。名曲。
「...Ghastly And Diabolical Mistakes」(1:17)ピアノとパーカッションの効いたアッパーで黒っぽいビート・ポップス。グルーヴィでヒップでカッコいい。
「...Cancelled Holiday Plans」(1:38)クロス・フェードで立ち上がる、甘めのピアノ弾き語りバラード。
THE BEATLES 風にドラム・ビートが効いていて、甘さに流されない。
どちらかといえば主役はピアノでヴォーカルは「ハーモニー」。
「...Concentration Camp Brochure」(2:57)ジャジーなピアノのアドリヴが冴えるスタイリッシュなスワンプ・ロック。
リズムがたくましい。
「...Ears, Eyes, Girlfriend And Feet」(1:34)メロディアスなバラード。
ひんやりとした弦楽奏とタッチの柔らかいピアノ、ギターがちょっと頼りなげなヴォーカル・ハーモニーを支える。
前曲の終わりから入ってくるミュートした鉄琴を叩くような音は何なんでしょう。
「...Hard And Horny All-Niter」(1:11)ユーモラスなヴォードビル・ソング。
ポール・マッカートニーが得意とした(たとえば「Honney Pie」など)ノスタルジックなムードの作品である。
管楽器は場末の酒場のバンド風。
「...Milk Round In The Morning」(2:32)ドリーミーでスケールの大きいシンフォニック・チューンの終曲。
湧き上がるストリングスと力強いリズム。
全員で肩を組んで合唱するような、すてきな幕切れである。
「Luulosairas」(4:07) CD ボーナス・トラック。垢抜けないヴォーカル・ハーモニーをタイトな演奏が支える。
(LRLP 9 / LRCD 9)
Jukka Gustavson | vocals, organ, piano | Jim Penbroke | vocals |
Pekka Pohjora | bass, violin | Ronnie Osterberg | drums |
guest: | |||
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Heikki Laurila | guitar, banjo | ||
Jukka Tolonen | guitar | ||
Kalevi Nyqvist | accordion |
70 年発表の第二作「Tombstone Valentine」。
小粋で多彩なポップ・テイストがうれしい傑作。
ベーシストがペッカ・ポーヨラに交代、ギタリストも脱退し、名手ユッカ・トローネンをゲストで迎えている。
トローネンのブルーズ・テイストあふれるラウドなギターが前面に出て、アンサンブルをリードし、ジャジーなキーボードは一歩下がった感じだが、曲の多彩さと全体のバランスを考えると、これでよかったのでは。
ポーヨラによるあまりに分かりやすい超絶ベース・プレイも、全編でフィーチュアされている。
彼はベース・プレイばかりか、フィドルの演奏やユニークな作曲でも貢献している。
ヴォーカル・ナンバーではメロディ・ラインが安定し、ドリーミーなポップスに加えて、レイド・バックしたバラードやアメリカ風のアーシーな曲調も顕著となった。
おおまかにいって、ペンブロークは、THE BAND 系のスワンプ志向、グスタフソンはジャジーな志向があるようだ。
充実したインストゥルメンタルとデリケートな情感と機知に富んだ歌もののコンビネーションという、きわめて豊かな内容のアルバムといえる。
もちろん、ポップな曲調の中に計算されたアレンジがきめ細かく施されており、実験的な姿勢もある。
プロデュースは、大物キム・フォーリー。
二枚組編集にてアメリカ盤も発表された。
「Tombstone Valentine」(3:07)アコーディオンを使ったシャンソン風のアレンジがすてきなポップ・チューン。ストリングスもフィーチュアした鮮やかな導入です。
「In Gratitude!」(3:49)トローネンのギターが冴える R&B 調のナンバー。オルガンも何気なくカッコいい。クラブ向け。
「Dance The Anthropoids」(1:07)ノイズ。
「Frederick & Bill」(4:27)ポーヨラ作曲のユニークなナンバー。ねじれたような怪しさが魅力。デイヴ・ローソンのようです。ギターとベースのバトル、ヴァイオリンなど超絶的な演奏力を見せる。
「Wistful Thinker」(3:46)王道バラード。ゲイリー・ブルッカーです。
「Autograph」(2:40)フィドル、バンジョーをフィーチュアしたカントリー・チューン。ヴォーカルがいい。
「1936 Lost In The Snow」(2:13)ヴァイオリンとピアノのアンサンブルを軸にしたインストゥルメンタル。
レア・グルーヴものです。
「Let The World Ramble On」(3:21)ジャジーな歌もの。m7th の響きと洗練されきらないラフなタッチのバランス。名曲です。
「For America」(4:23)ピアノをフィーチュアしたモダン・ジャズ・コンボ。
冒頭は 7 拍子。
ピアノ(オスカー・ピーターソンか?)、オルガンとグスタフソンの独壇場。トローネンが鮮やかなジャズ・ギター・プレイ、ポーヨラが堂に入ったランニングを見せる。
「Captain Supernatural」(3:02)管弦楽を使った重厚なバラードがいつのまにかリズミカルなポップスへ。
PROCOL HARUM というよりはエルトン・ジョンか。
「End」(3:36)深く冷ややかなエコーにひたったオルガンの即興演奏から夢幻のバラードへ。
謎めいた余韻を残すエンディングである。
(LRLP 19 / LRCD 19)
Ronnie Osterberg | drums, congas, percussion, backing vocals on 1 | Jukka Gustavson | vocals, piano, organ, electric piano |
Jim Penbroke | vocals, harmonica, piano on 2, 12 | Pekka Pohjora | bass, violin, acoustic guitar on 10, piano on 8, 9, celeste, harpsichord on 9, backing vocals on 1 |
guest: | |||
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Jukka Tolonen | guitar on 2, 7, 13 | Ilmari Varila | oboe |
Tapio Louhensalo | bassoon | Hannu Saxelin | clarinet |
Risto Pensola | clarinet | Unto Haapa-aho | bass-clarinet |
Eero Koivistoinen | sax | Pekka Poyry | sax |
71 年発表の第三作「Fairyport」。
オルガンがリードするカンタベリー調ジャズロックからユーモラスなヴォーカル・ナンバーまで、演奏/作曲両面で奔放な才能を見せつける大傑作。
前作をスケール・アップし、メンバーそれぞれの個性を発揮した作品がぎっしりつまった、いわば「White Album」的なアナログ二枚組である。
管楽器をゲストに迎えて、ジャズを基調にしたエキサイティングな即興演奏を拡張し、さらにそこへ口当たりのよいポップ感覚を無造作にまぜあわせたら、とんでもなく楽しい音楽になってしまった。
ミクスチャー感覚に長けた構成力、逞しい演奏力とビタースウィートなメロディの魅力は、英国のグループを軽く越えているといっていい。
もちろん、根っこに英国ロックへの憧れがあるのは間違いないのだろうが、これだけみごとに消化して花開かせたグループはないだろう。
いわば、自由な曲想と切ないポップ・フィーリングは THE BEATLES のもので、テクニカルかつユーモラスなインストゥルメンタルは SOFT MACHINE なのだ。
センチメンタルでシュールなヴォーカル曲には、ロバート・ワイアットを思わせる味わいもある。(本作全体の雰囲気が SOFT MACHINE の第二作に似ているとも思う)
したがって、HATFIELDS よりも 3 年早い北欧カンタベリーの逸品という見方も可能です。
ピアニストとしてのグスタフソンは進境著しい。
ペッカ・ポーヨラは個性的な楽曲と天才マルチインストゥルメンタリストとして活躍。
最終面はライヴ・テイクの即興風大作。
五人目のメンバーといっていいユッカ・トローネンのギターが、縦横無尽に活躍する。
ジャズロックに、ポップ・フィーリングとペーソスも加えた大傑作。
質量ともに個人的にはベスト。
1 曲目のように、全員で作曲したナンバーがもう少し多ければ、さらにすばらしかったろう。
2003 年のリマスター版では、「Losing Hold / Finlandia」のライヴ録音のボーナスあり。
ヴォーカルは英語。
「Losing Hold」(7:08)
オルガンのリードによるカンタベリー・テイスト+ブルーズ・フィーリングあふれる、エキサイティングな傑作。
爆発的なインストゥルメンタルの威力を誇示しつつも、ロックなシニシズムとユーモアも満載。
SOFT MACHINE、CARAVAN、GREENSLADE などのファンには絶対のお薦め作品。
ポーヨラ、グスタフソン、ペンブロークの作品。
「Lost Without A Trace」(2:33)
ピアノ、アコースティック・ギター伴奏による切なくファンタジックなバラード。
ヴォーカルはペンブローク。
ペンブロークの作品。
「Fairyport」(6:53)
フォーキーな土臭さ、サイケデリックなユーモア、本格ジャズが絶妙のブレンドを見せる、ブリティッシュ・ポップ真っ青の名曲。
グスタフソンの親父声が、好みを分けるかも。
グスタフソンの作品。
「Gray Traitors」(2:47)
前曲をそのまま受けるような調子のメロディ、ただしピアノ、トーン調整したオルガンによるアレンジはクラシカル。
本曲や次曲でのピアノの和声進行は、ポーヨラの作風に影響を与えているような気がする。
グスタフソンの作品。
「Cafffkaff, The Country Psychologist」(5:22)
再び前曲からそのままつながる。
歌詞内容的にメドレーの可能性あり。
ユーモアをにじませつつも複雑なコードで大胆に奔放に進む。
中盤にエレクトリック・ピアノによるジャジーなアドリヴあり。
グスタフソンの作品。
「May Your Will Be Done Dear Lord」(5:30)
丸みを帯びた木管の音色が、なんともすてき。
メロディ・ラインは、正統スワンプ調。
現代音楽風のピアノ。
ポーヨラのベースが何気なく大活躍。
グスタフソンの作品。
やはりここまではメドレーですかね。
「How To Make It Big In Hospital」(3:04)
CSN&Y を思わせるアーシーなナンバー。
ペンブロークの作品。
「Hot Mice」(3:22)
ポーヨラの作品。
キーボードをフィーチュアした独特のインストゥルメンタルであり、彼自身もピアノとハープシコードを演奏している。
すでに、後のソロ作品を思わせる彼の色が、しっかり出ている。
「P.K.'s Supermarket」(2:22)
ポーヨラの作品。後にソロアルバムで再演していた。キーボードはすべてポーヨラ。
「One More Try」(3:29)
ポーヨラ、ペンブロークの作品。前半の上品でさりげないストリングスからの中盤の濃い R&B テイストへの変化がおもしろい。
「Rockin'Ol'Galway」(2:31)
軽やかで田園風ののどかさもある、みごとなポップ・ロック・チューン。
やはり影響元はマッカートニーでしょうか。
ペンブロークの作品。
「Every Fold」(3:09)
2 曲目と共通する、落ちつきの中にファンタジーとひそやかな哀しみが感じられるビタースウィート・バラード。
ペンブロークの作品。
「Rave-up For The Roadies」(17:16)
トローネンのギターがリードする爆発的なライヴ演奏。
一部を収録したと思われる。
全体にラフな音質なのだが、各パートの音は意外にきっちりと分離してとれている。
トローネン、グスタフソン、ポーヨラ、オステンベルグの作品。
「Losing Hold / Finlandia」(10:56)CD ボーナストラック。ライヴ録音。
アドリヴ満載の豪快かつスリリングな名演。
(LRLP 44/45 / LRCD 44/45)
Pekka Pohjora | bass, violin, piano on 4, mini-moog on 7, sheet music |
Jukka Gustavson | vocals, pianos, organs, mini-moog, VCS3 synthesizer |
Ronnie Osterberg | drums, percussion, backing vocals |
Jim Penbroke | vocals, sermon, piano |
74 年発表の第四作「Being」。
ユッカ・グスタフソンのアイデアによるトータル・アルバム。
大幅にシンセサイザーを取り入れたプログレッシヴなサウンドと、ポップでキッチュな楽曲へ強靭なジャズロック的即興能力を注ぎ込んだ、傑作である。
しかしながら、新しい音を使って自分のイメージを膨らませようとしたグスタフソンに対し、必ずしもその方向つけを必要としていなかったメンバーが反発したのか戸惑ったのか、緻密さはアップするも、やんちゃな奔放さが減退しているようだ。
もっとも、トータル・アルバムの傑作というのは、生来そういう緊張感をはらむものなのかもしれない。
とはいえ 5 曲目など、独特のヴォーカル入りのファンタジックなジャズロックや、ハモンド・オルガンをフィーチュアした R&B 風の 6 曲目、管楽器のリードするなめらかなトゥッティがカッコいい 7 曲目など、秀作も目白押し。
グスタフソンのヴォーカルとエレクトリック・キーボードにちょっと食傷すると、ペンブロークのヴォーカルとアコースティックな音でフォローを入れるなど、構成もニクい。
アーシーなスワンプ調とファンタジーの合体したエンディングは涙モノである。
作曲の充実は、ペッカのソロ作品にも通じる。
メンバー以外にも多くの管楽器ゲストあり。
2001 年リマスター盤がお薦め。
ひょっとするとグスタフソンは、STEELY DAN のファンではないでしょうか。
「Proletarian」(2:09)
「Inspired Machine」(1:27)
「Petty-Bourgeois」(2:58)
「Pride Of The Biosphere」(3:13)
「Pedagogue」(9:12)
「Crisader」(4:46)
「Planetist」(3:10)
「Maestro Mercy」(2:29)
「Prophet」(6:10)
「Marvelry Skimmer」(2:28)
(LRLP 92 / LRCD 92)
Jim Penbroke | vocals, piano |
Pekka Rechardt | guitar |
Mans Groundstoem | bass on 1-10 |
Ronnie Osterberg | drums |
Hessu Hietanen | keyboards on 9-10 |
Paavo Maijanen | backing vocals, bass on 11-15 |
Esa Kotilainen | keyboards on 1-8 |
75 年発表の第六作「Nuclear Nightclub」。
VIRGIN からのワールド・デビュー盤。
ユッカ・グスタフソン、ペッカ・ポーヨラら主要メンバーが脱退するも、新メンバーを迎えスリリングにしてポップ・フィーリングあふれる優れた作品を生み出した。
内容は、ペンブロークのヴォーカルとコーラスを、ジャジーというよりはタイトで締まった演奏と光沢あるエレクトリック・サウンドで支えるプログレシッヴなロックである。
スワンプ風の土臭さを残しつつも、70 年代後半らしいキーボードを多用したシャープなサウンドやこなれた AOR 調も交え、欧米のメイン・ストリームにしっかりと寄っている。
かつての WIGWAM がジャジーな THE BEATLES であったとするならば、ここの WIGWAM は、間違いなく、ポール・マッカートニーの WINGS である。
ハードなサウンドや R&B 風味、ノスタルジックなアクセントを散りばめて、キャッチーで万華鏡のようなサウンドに仕立てる手腕は、優れた WINGS フォロワーの一つである 10CC とも共通する。
ただし、コラージュやエフェクトのような編集上のテクニックではなく、ストレートに逞しい演奏力と巧みなアレンジにものをいわせるアプローチである。
そう、ジャズ色こそ後退するものの、器楽の充実度合いはこれまでと変わらない。
個人的に、結構弾くのだが抑制と安定感のあるギタリストのプレイが好み。
ファンタジーとしての演出を担うストリングス・シンセサイザーもいい音だ。
3 曲目のように、かなり先進的なタッチのポップでプログレな作品もある。
フィンランドから生まれた正統的なテクニカル・ブリット・ロックといっていい内容であり、個人的にはものすごく懐かしい音。
ベーシストのマンス・グランドシュトロムは TASAVALLAN PRESIDENTTI 出身。
ギタリストのペッカ・レシャードは、作曲に大きく貢献。
ヴォーカルは英語。プロデュースはパーヴォ・マイヤネン。
「Nuclear Nightclub」(2:46)イントロダクション風のタイトル曲。Sgt.Peppers 的。ペンブロークの作品。
「Freddie Are You Ready」(5:36)名曲。マッカートニー直系のテーマの風格がすごい。中華風のヒネリすら王道感漂う。レシャードの作品。
「Bless Your Lucky Stars」(6:01)ほぼインストゥルメンタルのファンタジックでスペイシーな作品。レシャードの作品。
「Kite」(4:16)星空に向かって吼えるような、大人になり切らないバラード。ペンブロークの作品。
「Do Or Die」(5:06)ポップながらも器楽に北欧ロックの意地が感じられるプログレッシヴ・チューン。カッコいい。レシャードの作品。
「Simple Human Kindness」(4:05)巧みな調子の変化がおもしろい、ユーモラスでハートウォームでスリルもある作品。マッカートニー的。ペンブロークの作品。
「Save My Money And Name」(4:10)腰のすわった 10CC 風の佳作。レシャードの作品。
「Pig Storm」(4:43)ダビングされたシャープなギター・プレイを主役にしたインストゥルメンタル。レシャードの作品。
「Tramdriver」(3:49)ボーナス・トラック。シングル曲。ペンブロークの作品。
「Wardance」(3:45)ボーナス・トラック。シングル曲。レシャードの作品。日本の SHOGUN や CREATION に非常に近い。
「Bertha Come Back」(2:45)ボーナス・トラック。ペンブロークのソロ作品「Corporal Cauliflowers Mental Function」より。
「A Better Hold (And A Little View)」(3:02)ボーナス・トラック。ペンブロークのソロ作品「Corporal Cauliflowers Mental Function」より。
「All Over Too Soon」(2:52)ボーナス・トラック。ペンブロークのソロ作品「Corporal Cauliflowers Mental Function」より。
「Masquerade At The White Palace」(3:50)ボーナス・トラック。ペンブロークのソロ作品「Corporal Cauliflowers Mental Function」より。
「Goddammaddog」(5:17)ボーナス・トラック。ペンブロークのソロ作品「Corporal Cauliflowers Mental Function」より。
(LRLP 129 / CDOVD 466 7243 8 41389 2 9)
2000 年発表のコンピレーション・アルバム「Fresh Garbage Rarities 1969-1977」。
タイトル通り、アルバム未収のシングル曲、ライヴ録音を集めた編集盤。
THE BAND、ジョン・レノンのカヴァーあり。
個人的には、「Losing Hold」のライヴ・ヴァージョンと THE BAND、ROLLING STONES 直系のスワンプ・テイストがうれしいです。
初期のシングル曲は、TASAVALLAN PRESIDENTTI にも迫る逞しい演奏によるブルージーなジャズロックである。
(LXCD 626)