TELLAH

  ブラジルのプログレッシヴ・ロック・グループ「TELLAH」。 ブラジリア出身。74 年結成。作品は 80 年発表の一作のみ。

 Continente Perdido
 no image
Claudio Felicio guitars, bass, effect, vocals
Denis Torre drums, percussion, acoustic 12 string, synthesizer, chorus
Marconi Barros bass, acoustic guitar, synthresizer, vocals
Rogerio Peyroton keyboards on 11, 12

  80 年発表のアルバム「Continente Perdido」。 内容は、ハードロック畑のミュージシャンによるワイルドだが愛らしいシンフォニック・ロック。 DEEP PURPLE 辺りのカヴァーをやっていたのが、シンセサイザーを手にして一気に初期の YES のような作風に転身したと想像される。 ベースが前面に出てヴォーカルに代わってメイン・テーマをリードすることが多いところも YES によく似ている。 クラシカルなテーマを荒っぽいながらもエモーショナルで明快なプレイを積み上げてきちんとコクのあるロックとして聴かせるところに、なみなみならぬセンスを感じてしまう。 そして、ラフな音とうまくバランスするのが南米ロックらしいフォーク・タッチのデリケートなヴォーカルである。 演奏はベースがうるさく、エフェクトでササクレだって暑苦しいが、YES の西海岸風のハーモニーも凌駕する官能的で清涼感あるファルセットによる牧歌調のコーラスが決まった途端に、一気に気温も湿度も下がる。 また、ワイルドといったもののハードロックのようなストレートで単純なノリはない。 ギター、キーボード、ベース、ドラムスのアンサンブルはなかなか考えて作りこんである。 全員の主張が強いため若干ガチャガチャはしているものの、カラフルで立体感のあるアンサンブルをメロディアスなヴォーカルが貫くスタイルは、英国プログレの王道を堂々と引き継いでいると思う。 そこへ南半球の叙情の涼風を吹き込んで、美しくも理知的なおかつ情熱あふれる音楽を仕上げている。 ピアノやギターのアコースティックで心地よい音、美しいヴォーカル・ハーモニー、ギター、ベース、キーボードの 3 ラインが呼吸よく攻め受けを心得て走るアンサンブルなど、じっくりと聴き込んで楽しめるところは多い。 録音や製作のせいで随分と損をしているのが残念でたまらない。
   演奏スタイルは、饒舌型のベースがリードしてオーソドックスなロック・ギターとクラシカルなストリングス系キーボードが脇を固める、荒々しくも精緻なもの。 また、「泣き」主体のギター・プレイ、意外と細やかなリズム、キーボードとギターの呼吸のいいやり取り、ハードロックもジャジーなロックも卒なくこなす雑食センスは、CAMEL に近いイメージもある。 何にせよ、ヒューマンな暖かみと若々しい爽やかさのある南米らしいシンフォニック・ロックの佳品である。 もっとも曲の出来そのものは、プログレ・スタイルに依拠しない LP 後半のストレートなブラジリアン・ロックの方がいい。
   ヴォーカルはポルトガル語。 アルバム・タイトルは、「Lost Continent(失われた大陸)」の意。 現行 CD にはライヴ録音のボーナス・トラック 2 曲(カヴァー)付き。美声のヴォーカルを大きくフィーチュアしている。 盤起しらしく音質がかなり悪いので、なんとかマスターから製作してもらいたいものです。


  「Renascença」(2:57)クラシカルなテーマ二発で迫るシンフォニック・ロック・インストゥルメンタル。勢いあり。
  「Magma」(4:44)バネのあるベースとシンセサイザーのきらびやかなヒットとオーソドックスなロック・ギターが引っ張るスペイシーでトリッキーな作品。さりげなく変拍子を交えるなどリズムに凝っている。
  「Segmento」(3:30)性急にたたみかけてはテーマごとに曲調を次々と変化させていく野心作。中盤ギターのリードでようやくストレートに盛り上がる。 忙しない演奏だが一体感あり。インストゥルメンタル。
  「Continente Perdido」(5:24)悠然とした歌ものシンフォニック・ロック。
  「Perola」(2:50)堅実なアンサンブルによるロック・インストゥルメンタル。
  「Feixe De Luz」(5:06)本家よりも CSN&Y に似たヴォーカル・ハーモニーをフィーチュアしたイタリアン・ロック風の作品。
  「Triângulo」(3:18)南米らしい長閑で涼し気な歌もの。後半のソロ・ギターがイイ感じ。
  「Cruzeiro Do Sul」(2:11)ブルージーなギターとピアノが支えるセンチメンタルな歌もの。ハーモニーも美しく、英国ロックのスタイルを借りていない素顔が見える。
  「Tributo Ao Sorriso」(5:10)ピアノとハーモニーが美しいバラード。秀作。
  「É Melhor Voar」(2:22)軽やかなギターが伴奏するゆったりした弾き語り風の作品。ヴァースのテーマは意外にクラシカル。 STRAWBS を思いだす。
  「Caçador de Mim」(4:02)ボーナス・トラック。
  「Visitante」(3:34)ボーナス・トラック。
  
(PRW 017 / 7.99.404.306)


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