カナダのプログレッシヴ・ロック・グループ「THE SPIRIT OF CHRISTMAS」。69 年結成。作品は CHRISTMAS 名義で二作、グループ名を変えて一作の計三作。
Tyler Raizenne | bass |
Helge Richter | drums, percussion |
Robert Bulger | guitar |
Preston Wynn | lead vocals, piano, guitar |
Robert Bryden | guitar |
74 年発表のアルバム「Lies To Live By」。
内容は、中性的なヴォーカリストを擁したアシッド・サイケ・フォークを素地とするようなプログレッシヴ・ロック。
ヘヴィな音では JETHRO TULL、込み入ったアンサンブルでは YES など、明らかな影響元がある。
爆発力のあるエレキギターのプレイやハイトーンのヴォーカルは明らかにこの時期流行のハードロック系だが、民謡風のメロディ・ラインとヴォーカルの素っ頓狂な節回し、アコースティック・ギターの和音の響きなどは完全にフォーク・ソングのものである。
サイケ・フォーク出身ならではのうつろな表情でさ迷うような調子も、テクニカルで忙しないアンサンブルと対比すると叙情的な色合いを帯びてきてシンフォニックな盛り上がりに大いに貢献する。
ヴォーカリストは二人おり、一人はハイトーンでややエキセントリックな感じ、もう一人は SSW 風の繊細な表情と甘めの声質(個人的にはドン・マクリンをイメージ)が印象的だ。
ギターについては、ファズを目一杯効かせたプレイはいかにもサイケデリック・ロック時代のものであり、ヘヴィなリフを叩きつけると JETHRO TULL になり、ナチュラルトーンにした込み入ったギター・ソロは YES っぽくなる。
スライド・ギターも用いるこのリード・ギタリストはかなりの達人だと思う。
演奏面では、この二本のギターによるユニゾンやハーモニー、リード/バッキングのコンビネーションが全体を牽引する。
ギターと並んで主旋律を取りたがり、オブリガートでも目立ちたがる硬めの音のベースは明らかに YES =クリス・スクワイアの系譜だろう。
これら三本のギターの緊密なアンサンブルが二人のヴォーカリストのハーモニーを支えて、楽曲を構成している。
一方、要所でギターに絡むピアノのプレイはクラシカルな本格派だ。
粘っこいギターのプレイが主なだけにクリアで粒だったピアノの音のアクセントが非常に効果的だ。
クレジットはないが、4 曲目でメロトロン・ストリングスがしっかりと入っている。
サイケデリックなフォーク・ロックにプログレとして記名性の高いプレイを重ね合わせた結果の音だが、リード・ヴォーカリストのエキセントリックな表現(個人的にはロビン・ウィリアムソンを思い出した)がそれらをうまく束ねて印象的な音楽にしているといえるだろう。
ヴォーカルは英語。
北米ながら英国ロックに近い世界である。
「All The Wrong Roads」(3:19)
「Stay Dead Lazarus」(4:06)
「Voice In The Wilderness」(4:19)リリカルかつプログレッシヴなフォーク・ソング。
「Graveyard Face」
「All Is Light」
「War Story」(8:53)コブシの効いたヴォーカルはまさしく JETHRO TULL。
「Ballad Of Jack Boot」
「Requiem-War's Peace」
「Factory」(8:33)エキセントリックな感じをうまく生かした力作。
「Where The People Are Made」
「Everything's Under Control」
「Beyond The Fields We Know」(11:26)
「Prelude (I Don't Know Where I Am) 」
「Thermopylae」
「Heaven's Lost」
「In Closing」
(DAF 10047 / LE 1001)