THINK

  ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「THINK」。 71 年結成。74 年解散。作品は一枚。東欧諸国の混成メンバーによるグループ。唯一作は英国ロックの良質部分を抽出した佳作。

 Variety
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Ricky Ramor bass
Frank Wördehoff drums, percussion
Gerd Pohl guitars, vocals
Frank Voigt flute
Kajo Sandrik violin, viola, piano, organ, percussion
Rodrigo Ramor vocals, percussion

  73 年発表のアルバム「Variety」。 内容は、ヴァイオリン、フルートなどをフィーチュアしたクラシカルかつ SSW フォーク的な素朴さとニューロック風の R&B テイストもあるプログレッシヴ・ロック。 70 年代初頭の英国ロックの影響を大きく受けたであろう音である。 コーラスをフィーチュアしたビートポップを基本に、オルガンやヴァイオリン、フルートや鐘の音などの効果音を使ったアレンジでクラシカル・テイストを盛り込み、ギターとドラムスでヘヴィにまとめ上げている。 プログレ・プロパーというにはライヴ・バンドっぽいタフさがあまりに際立っており、ビート、サイケデリック、アートロックを乗り越えてきたベテランの味がある。 つまり、演奏力を身につけるとともに英国ロックの雑食性や良い意味での偏屈さをもしっかりと受け継いで、音楽に幅と奥行きをつけている。 つまり、井上尭之バンドみたいなものである。 特にいいのは、アコースティックな音の使い方。 喩えてみれば、それは McDonald & Giles の特徴である窓辺を訪れた晩秋の風の質感に通じるものである。 アコースティック・ギターの透明なアルペジオにフルートの調べが重なると、ベタではあるが、一気に空気の色がセピア色に変わるのだ。 また、LED ZEPPELIN のような高尚なハードロック・グループのようにジャジーなインプロヴィゼーションをこなす技量がある。 英国ロック・ファンには絶対のお薦め。 73 年にしては少し古め。

  「Variety」(7:36)ヴァイオリン、フルートなど多彩な音とクラシカルなアクセントを活かした作品。ジャジーなリズムもいい。基本的には 60 年代風味たっぷりのビート・ロックである。

  「Watercorps」(5:04)フルート、ヴァイオリンをフィーチュアした 8 分の 6 拍子系のオルガン・ロック。 クラシカルで穏やか、厳かなところとワイルドにヘヴィに迫るところが共存する。

  「Drops」(7:15)アコースティックなフォーク・タッチの音だが、ハーモニーやオルガン、対位的なベースなどは教会音楽っぽい。そして、ここでもギターとドラムスが一気にハードなロックを持ち込む。 中盤のフルートとランニング・ベースによる 4 ビートのモダン・ジャズ的展開は、いかにもプログレ的ながらも、勢いがあっていい。ジミー・ペイジを意識しているのか、ギターもがんばって参加している。 PROCOL HARUMLED ZEPPELINANIMALS の名作のようにスケールの大きい傑作。

  「Draw Conclusions From...」(14:00)R&B 色を出したブリティッシュ・ロック的オムニバス大作。 オルガンのバッキングのキレ、侘しげで透き通るフルート、躍動するリズムなど、序盤からエネルギッシュに走る。 2 分過ぎで突如ブルーズ・ロックに変化、クールなオルガンとピアノの打鍵が軸となる。5 分過ぎからテンポ・アップ、JETHRO TULL のように跳ねるリズムによるフォーキーな歌ものから、次第に MOODY BLUES 風のファンタジックなポップ・ロックに。フルートの響きがラウンジ・ミュージック調のオシャレでリラックスしたムードを強めてゆく。再びソウルフルな調子に戻り、ジャジーなギターやヴァイオリンのサポートで洒脱に攻める。長丁場をいいテンションで乗り切るグルーヴィな傑作だ。

  「Last Door」(3:15)ドアの軋む音。 アコースティック・ギターのストローク、フルート、ベンベン・ベース、パーカッションが支える軽めでノリノリのフォークロック。 アルペジオからのメランコリックなクラシック調への展開もおみごと。 達者な演奏がよく分かる。

  以下ボーナス・トラック。
  「More Drops」(6:50)ヴォーカル・ハーモニーはビート風だが、全体的にはハードロック。
  「All That I Remember」(7:50)
  
(MEL 3301 / CD 077)


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