フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRIODE」。 FUTURA レーベル。ドラマーのデディエ・ホウクは後年 NADAVATI に参加。
Michel Edelin | flute |
Pierre Chereze | guitar |
Pierre Yves Sorin | bass |
Didier Hauck | drums |
guest: | |
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Olav Estienne | percussion |
71 年発表のアルバム「On N'a Pas Fini D'avoir Tout Vu」。
内容は、フルートをフィーチュアした、イージーリスニング、モンド、サイケ、SOFT MACHINE、ブルーズロック、ソウルジャズがごちゃごちゃになった初期ジャズロック。
荒削りで微妙に垢抜けないが、どこまでも歌謡曲風のまろやかさがあるところが魅力である。
(この音を「歌謡曲風のまろやかさ」として受け止めてしまうのは、わたくしの出自、年齢のなせるところである)
やや泥臭いカンタベリー、はたまた NEON レーベルにいても違和感はない。クラブ、DJ 受けもよさそうだ。
フルートはトーキングを駆使したアグレッシヴなスタイルであり、ギターはクリス・スペディングになり切れないジミヘン・ファンながら音の歪みに味はあるし、リフのキレもいい、そしてドラムスはジャズ系である。
妙にうるさいベースは、ポール・サミュエルスミスやルイス・セナモ、BACK DOOR のコリン・ホジキンソンといった「弾きたがり」を思い出させる。
ギターに負けずにアンサンブルで一役を張るという意気に燃え始めた時代だったのだろう。
全体に、尖っているのは思いだけといっていいほどにバタバタとした演奏であり、ソロも勢い一発のワンパターンだが、この「ゆるさ」がなかなかいい。
フルートがメインだからといって JETHRO TULL を引き合いに出すのは、音楽性の違い(ヴォーカルなし、作曲に力なし、大幅にジャズ寄り、フルートの素養はクラシックなど)から考えるとあまり適切でない。
また、こういう音を表現するにあたって「フリーキー」というともっとキレのある危うさが強調されてしまい、適当でないと思う。
そこまでの凄みはない。
そして、黒い脂っこさもあるにはあるがほどほどであり、やはり主たる魅力は、昔の TV の深夜ドラマの OP を思わせる、うらぶれ感、場末感、哀愁である。
演奏には力が入っているが、演奏そのものよりも、そこから漂ってくる物語や雰囲気が主であるという点でプログレの仲間に入れたい。
ファズとジャズの蜜月がまだまだ続いていた時代の落とし子。
スキャット以外は全編インストゥルメンタル。
THE BEATLES の「Come Together」のカヴァーがある辺りで、なんとなくその中途半端な感じはつかめるだろう。
8 分を超える最終曲は、DEEP PURPLE 風のハードロック・テイストも強調したドラマのある力作。
「Magic Flower」(5:32)
「Misomaque」(2:58)
「Moulos Grimpos」(4:06)
「Blahsha」(4:20)
「Lilie」(4:50)
「Ibiza Flight」(4:49)
「Adeubis」(2:44)
「Come Together」(4:46)
「Chimney Suite」(8:15)
(FUTURA RED 03 / MMP 389)