TRITONUS

  ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「TRITONUS」。72 年キーボーディストのピーター・ザイラーを中心に結成。作品は二枚。78 年解散。 キーボードをフィーチュアしたクラシック・ロック。グループ名は禁じ手和音のトライトーンから。

 Tritonus
 
Peter Seiler Hammond A-100, Moog, PPG synth, church organ, strings ensemble, Hohner D6
Ronald Brand Fender bass, acoustic & electric guitar, vocals
Charlie Jost drums, percussion

  75 年発表のアルバム「Tritonus」。 内容はクラシカルなキーボードをフィーチュアしたロマンティックでファンタジックなシンフォニック・ロック。 EL&P との類似は、キーボードのプレイよりも、多彩な音楽を取り込む姿勢にあると思う。 攻撃的なプレイや不協和音の使い方には確かにエマーソン流が炸裂するが、全体的には、クラシックの教育を受けたキーボーディストがロックを志向した結果、サウンドがやや似てしまったという程度に過ぎないと思う。(若干、そのままなフレーズの採用もあるが) 実際、ジャジーな即興性や R&B の熱気を生かした派手なプレイよりも、ストリングスがふわーっと広がるような、メロディアスでスペイシー、夢想的な表現や、分厚い音によるオーケストラ風のアンサンブルの方に、自然な「良さ」が出ている。 そして、グレグ・レイクが担った叙情性と無茶苦茶な多彩さを、よりセンスよく盛り込んでいる。 たとえば、アメリカ向けのなめらかな歌ものの出来映えはレイク(この人は声質が正統的なのにセンスがエキセントリックで損をしていると思う)を完全に凌いでいる。 邪悪なオルガンがぐっと食い込んでスリルの高まる場面は、「アクセント」として機能していて、シンセサイザーとオルガンによる緩やかな響きと豊かな旋律がじわじわと広がってゆく場面の方がメインなようだ。 まずファンタジックな曲想が確固とあって、それを的確なキーボード・サウンドで描いている。 チャーチ・オルガンやチェンバロ、エレクトリックな SE もいい感じで活かされている。 ベーシストが担当するヴォーカルは緩やかなキーボード・サウンドに寄り添って、朴訥に、ノーブルに歌い上げている。 英語なので若干垢抜けないのが残念だ。 一方、ドラムスはジャズ系のプレイヤーなのだろうか、安定感があり作風にあわせて演奏をしっかり支えている。ただし、迫力や際立つ個性は感じられない。 全体に、70 年代中盤らしく、サイケデリック・フォークの名残や甘目のロマンチシズムがよく出た作風である。GREENSLADE あたりを思わせる和みテイストもある。 個人的にも非常に懐かしいタッチだ。
  ポップな完成度では TRIUMVIRAT に若干譲るものの、EL&P 風のサウンドに、CHICAGO あたりに通じるポップ・センスと濃厚なロマンが支えるドイツ・サイケ、エレクトリック・ミュージックの血を交えた個性的な作品ではある。

  「Escape And No Way Out」(10:41)
  「Sunday Waltz」(4:43)グレグ・レイク入ってます。
  「Lady Madonna」(2:21)
  「Far In The SKy」(9:02)
  「Gilding」(7:06)癒しの前半、後半は R&B タッチの好展開。
  「Lady Turk」(5:06)
  「The Trojan Horse Race」(3:39)ボーナス・トラック。クラヴィネットとムーグ、オルガンがまろやかに入ったグルーヴィな歌もの。
  
(BASF 17 22384-1 / SB 049)

 Between The Universes
 
Peter Seiler Hammond A-100, Moog, PPG Modulsynth, church organ, strings ensemble, Hohner D6
Ronald Brand Fender bass, acoustic & electric guitar, vocals
Bernhard Schuh drums, assorted percussion, vibes
guest:
Geff Harisson vocals on 1

  76 年発表のアルバム「Between The Universes」。 EL&P 風のムーグ・シンセサイザーやハモンド・オルガンのプレイは残しつつも、より叙景的でスペイシーな音作りへと進み、奥深いファンタジーを描いた好作品となる。 クラシカルなオーケストラ風のスタイルが完成されてきた。 もともと弾き倒し型というよりはクラシカルで余韻を活かした演奏が得意だっただけに、この変化は自然である。 メローなヴォーカル、スキャットも楽曲によくフィットしてファンタジックな演出に役立っている。 どうしても 「TARKUS」 や「悪の経典」してしまうところもあるが、そういったフレーズはあくまで曲の中で一定の役割を果たすために現れているだけであり、それがメインというわけでは決してない。 メロディアスな歌とキーボードを絡めたポップ・テイストの完成度は、TRIUMVIRAT といい勝負だろうし、幻想浪漫タッチは一歩先を行っている。 また、ドイツものらしく、ロマンティックなくせにどこか虚無的な響きもあり、PINK FLOYD 辺りの瞑想系ファンにも受け入れられそうだ。 星の粒子を吹き上げるようなストリングスの響きが、CAMEL を思い出させるところもある。

  「Between The Univrses」(9:58)力作。
  「Mars Detection」(8:08)火星探査船ヴァイキングの火星着陸に捧げた作品。巧みな SE で綴られる。
  「Suburban Day Suite」宗教的な厳かさや無常感が貫く傑作。
    「The Day Awakes」(7:55)ニューエイジを意識したようなサウンドも盛り込んだ美しい作品。
    「The Day Works」(5:53)オルガン、シンセサイザーが弾ける。
    「The Day Rests」(3:58)
  
(BASF CC 229467 / SB 049)


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