VANGELIS

  ギリシャの作曲家/鍵盤奏者「VANGELIS」。 本名「Ευάγγελος Οδυσσέας Παπαθανασίου」。 APHRODITE'S CHILD を経て、電子音楽の第一人者の一人となる。 YES の鍵盤奏者の候補にも上がった。 ジョン・アンダーソンとのコラボレーションも多数。2022 年逝去。

 666
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Vangelis organ, piano, flute, percussion, vibraphone, backing vocals
Demis Roussos bass, vocals, backing vocals
Lucas Sideras drums, vocals, backing vocals
Silver Koulouris guitar, percussion
guest:
Harris Halkitis bass, tenor saxophone, congas, drums, backing vocals
Michel Ripoche trombone, tenor sax
John Forst narrator
Yannis Tsarouchis Greek text
Irene Papas vocals

  72 年発表のアルバム「666」。 VANGELIS の在籍した名サイケデリック・ロック・グループの最終作である。(解散、再結成後の作品) 原始のパワーを誇るリズム・セクションにドライヴされる楽曲にアグレッシヴなキーボード・プレイと野蛮なギターがこれでもかと放り込まれるも、破綻することなく、音楽でしか成しえない THE BEATLES 直系の総合芸術を提示している。 ロックンロールの原初的な衝動の鮮やかさ、フォークソングの普遍的な郷愁の生む寂寥感、宗教音楽の厳かさ、毒に満ちたユーモアといった、「プログレとしてカッコいい」ためのエッセンスを大胆に、無造作に散りばめている。 バラバラといっていいほどに多彩な曲調にも係わらず前衛的にして明快なイメージが一貫するところは PINK FLOYD 的であり、自然な躍動感はそれを凌ぐ。 また、野蛮奔放きわまる泥酔サイケ調に奥深いアートと知恵のきらめきがあるところは OSANNA に匹敵。 (キーボードが大幅に取り入れられた OSANNA という印象だ) サックスやフルートの多用、モダンな SE やモノローグのコラージュなどから組み上げた「現代の呪術」といったイメージは、実際彼のグループの超名盤によく似ている。 乱調美の奇跡的な調和は彼の名盤に譲るが、総合的な「音楽的ゴッタ煮」の魅力はこちらかも知れない。
   民族音楽の土臭さに秘められたアヴァンギャルドな感性が光る大名盤。 録音もいい。 テーマは、聖書「黙示録」。 LP 二枚組。 1 曲目のアジテーションが「System is down ...」と聴こえた私は職業病か。 5 曲目「The Four Horsemen」はスペイシーなハードロックの傑作。 LP 二枚目、名優イレーネ・パパスのヴォーカル・パフォーマンス「」は一聴に値する十八禁問題作。

  
(6673-001/ 838-430-2)

 Heaven And Hell
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Vangelis composed, arranged, performed all instruments
Jon Anderson vocals on 2

  75 年発表のアルバム「Heaven And Hell」。 内容は、クラシックの構築性とロックのヘヴィなモーメンタムを軸にしたオーケストラ風のキーボード・ミュージック。 シンセサイザーによるオーケストレーションらしいクラシカルな荘厳さ、勇壮さ、宇宙的スケール感の演出が、これまでオペラや極上の映画音楽にしかなかった揺り動かされるような感動を呼覚ます。 エレクトリック・キーボードを多用したスタイルながら、ドイツ系のようなほかの電子音楽グループと共通するのは大作主義くらいであり、ロックやジャズ、クラシックの運動性や表現手法をストレートに盛り込んだ一人バンド風のパフォーマンスはかなり独特である。 後半ではインプロヴィゼーションらしき展開もあるが、それすらもフリージャズそのものなアプローチになっていてどこまでも肉感的である。 したがって、クラウト系が苦手な方も対応可能。 ロマン派風のアコースティック・ピアノなど、アコースティックなサウンドも多用される。 また、初期 RETURN TO FOREVER のようなジャズロック、およびマイク・オールドフィールドからの影響も見逃せない。(この頃、オールドフィールドの影響を受けなかったミュージシャンはいなかったのだろう) 最大の魅力は、かようにさまざまなスタイルを奔放に融通無碍に行き交いつつ、新しい音楽の地平を目指していると思えるところだ。 2 曲目には盟友ジョン・アンダーソンがヴォーカルで参加。 プロデュースは本人。

  「Heaven And Hell Part.1」(16:50)終盤に「炎のランナー」のモチーフも現れる。
  「So Long Ago, So Clear」(5:01)まさしくヘヴンリーな歌もの。
  「Heaven And Hell Part.2」(21:09)
  
(BVCP-5024)

 Spiral
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Vangelis composed, arranged, performed all instruments

  77 年発表のアルバム「Spiral」。 内容は、民族楽器にインスパイアされたらしききわめて独特なサウンドとアグレッシヴなビート感が特徴のシンセサイザー・ミュージック。 万能模擬楽器としてのアナログ・シンセサイザーの魅力を十二分に引き出し、なおかついまだ誰も聴いたことのない音を作り出すことにも成功している。 いかめしくもポジティヴで溌剌としたタッチが主であり、あたかも、暗く人工的な未来社会のイメージをオプティミスティックな力強さで描いたような作風である。 (「Blade Runner」での起用は、そういうミスマッチの効果を狙ったのかもしれない) シンセサイザーの表現には無機的でメカニカルなタッチと同時に感情に突き動かされた人声の起伏のように生々しいニュアンスもある。
   そそり立つモノリシックな大理石建築を思わせる荘厳さや清潔感、崇高さとともに、郷愁ある人懐こいメロディの魅力があり、さらにはロックンロールやブルーズへのストレートな志向も感じられる。 この独特のサウンドに触れるだけでも価値のある作品だ。 プロデュースは本人。

  「Spiral」(6:55)
  「Ballad」(8:27)
  「Dervish D」(5:21)
  「To The Unknown Man」(9:01)
  「3+3」(9:43)
  
(RCALP 3022 / ND70568)

 Blade Runner
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Vangelis composed, arranged, performed all instruments
Mary Hopkin performer on 4
Dick Morrisey sax on 5
Don Percival performer on 6
Demis Roussos performer on 9

  94 年発表のアルバム「Blade Runner」。 82 年に製作された同名映画用の作品を素材にした編集盤。 したがって、正確には映画のサウンド・トラック盤ではない。 シンセサイザーだけではなく、管楽器やヴォカリーズを取り入れ、映画のダイアローグも散りばめられている。 「郷愁」、「祈り」、「救済」をイメージを強くさせる、厳かで美しい作品集である。 この音と映像の呪縛から逃れられなくなって 30 年以上になります。 プロデュースは本人。

  「Main Titles」(3:42)
  「Blush Response」(5:47)
  「Wait For Me」(5:27)
  「Rachel's Song」(4:46)
  「Love Theme」(4:56)
  「One More Kiss, Dear」(3:58)
  「Blade Runner Blues」(8:53)
  「Memories Of Green」(5:05)
  「Tales Of The Future」(4:46)
  「Damask Rose」(2:32)
  「Blade Runner (End Titles)」(4:40)
  「Tears In Rain」(3:00)
  
(east west 4509-96574-2)


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