アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「YEZDA URFA」。 73 年結成。 81 年解散。 作品は二枚。 YES 風の演奏と GENTLE GIANT 風コーラスを得意とするテクニカルなロック。 2004 年、フェスティバル参加とともに遂に第一作「Boris」CD 化だそうで。
Brad Christoff | drums, percussion, all sorts |
Phil Kimbrough | keyboards, synthesizer, mandolin, wind instruments, vocals |
Mark Tippins | guitar, banjo, vocals |
Marc Miller | bass, vocals |
Rick Rodenbaugh | lead vocals |
75 年製作のアルバム「Boris」
。
内容は、アメリカン・フォーク・テイストのヴォーカル・ハーモニーとこんがらがったまま無窮動でひた走るアンサンブルによる技巧派シンフォニック・ロック。
クラシカルなフレーズ、アナログらしさ満点のシンセサイザー、やたらと手数の多いドラムス、ハイトーンで透明感ある中性的リード・ヴォーカル(要するにジョン・アンダーソンですね)、リリカルな管楽器など、記号化されたプログレ・ファクターをてんこもりに、息つく暇もなくたたみかける演奏である。
メイン・ヴォーカル・パートの素朴でメランコリックな味わいに対して、間奏部では徹底して密度高く高速で急旋回を繰り返して忙しないことこの上ない。
この超速演奏の素地はブルーグラスやカントリー・ミュージックから来ているのだろう。
音色で際立つのはレゾナンスの効いたアナログ・シンセサイザー。
プログレ・テイストを一手に引き受けている。
またバンジョーのようないかにもアメリカンな音も臆面なく駆使している。
フルートのような管楽器も優れたアクセントになっている。
とにかく、YES を筆頭に英国プログレの洗礼をたっぷりと受けたアメリカン・プログレの典型の一つであり、北米発掘盤の決定版的存在である。
本作品をベースに「Sacred Baboon」が製作された。
「Boris And His Three Verses, including Flow Guides Aren't My Bag」(10:51)後半からは、長大なインストゥルメンタル。
「Texas Armadillo」(1:51)バンジョーをフィーチュアしたカントリー風の小品。インストゥルメンタル。
「3, Almost 4, 6, Yea」(8:49)インストゥルメンタル。感傷的でエレガントな 3 拍子パートもあるがアグレッシヴで邪悪なアンサンブルに塗りつぶされてしまう。
「To-ta In The Moya」(10:56)シンセサイザーとギターがうるさいハイテンションの軽騎兵序曲のイメージ。
フルートとチェンバロによる緩徐楽章あり。終盤の詠唱は YES そのもの。マンドリンのトレモロとシンセサイザーが重なるとマイク・オールドフィールド風味も現れる。独特の緊張感あり。
「Three Ton's Of Flesh Thyroid Glands」(10:21)徹底してエキセントリックに、時にコミカルに迫る前半に対して、後半、ヴォーカル・ハーモニーから始まる展開は「普通の」ロックとしてのセンスを感じさせる。
「The Basis Of Dubenglazy While Dirk Does The Dance」(9:51)76 年録音の作品。ボーナス・トラック。
(SYNCD 20)
Brad Christoff | drums, tubular bells, metalaphone, glockenspiel, percussion |
Rick Rodenbaugh | vocals, air guitar |
Mark Tippins | guitar, vocals |
Marc Miller | bass, cello, marimba, vibes, vocals |
Phil Kimbrough | keyboards, accordion, mandolin, flute, recorder, vocals |
89 年発表のアルバム「Sacred Baboon」
76 年に録音するも 89 年まで埋没していた第二作。
7 曲のうち 3 曲は第一作である 75 年の「Boris」からの曲の再録音。
ジャケットは 再発 CD のもの。
ハイトーンのリード・ヴォーカルと徹底してテクニカルに走り回る演奏は、もう少しギアを落とせば、シーンで十分通用したであろう本格派テクニカル・ロックである。
特に、スピード、リズムがすごい勢いで変化するにもかかわらず、ユニゾンではみごとに呼吸をあわせている。
ドラムスのせいか、バタバタした感じは否めないものの、アグレッシヴなテクニカル指向が知ってか知らずか生み出すユーモラスな演奏は、ブリティッシュ・プログレのパロディと切り捨てられない独特の味わいをもつ。
テクニカル指向なのに垢抜けないところが特徴である。
なんというか、19 世紀くらいに製作された音楽からくり人形を何体か用意してバンドを組ませたら、こんな演奏をしそうなのである。
愛すべきチープなメカニックとでもいえばいのだろうか。
リリカルなコンテキストでもついついやり過ぎてしまうところは、もうアメリカン・プログレらしいとしかいいようがない。
全体に、メロディアスというよりはリズミカルな曲調が主であり、ヴォーカル含めメロディは、幅広い音程の跳躍を多く含んでいる。
そして、前述のとおり、調子の変化はせわしなく、アンサンブルはきわめて込み入っている。
また技巧的なコーラスが披露される。
この辺は GENTLE GIANT によく似ているようだ。
おそらく、細かく計画された演奏なのだろう。
理知に走りすぎてエモーションが感じられないような気もするが、なんとなくそうなったのではなく、凡人がエモーショナルと感じるような音楽の要素を意図的に排除する、という綿密な計画に則っているのかもしれない。
おそらく、演奏しているとかなり楽しいのだろう。
ドラムスがリズム・キープを大幅に越えて自己主張したり、ベースが和声上のルートの確保よりもギターと対となる低音旋律楽器として縦横無尽にプレイするなど、リズム・セクションも個性的だ。
また、楽器の種類も多彩である。
"Relayer" YES、GENTLE GIANT のコピー的な面も見られるが、アコースティック・ギターの使い方やキーボードなどには、独特のものも感じられる。
プロダクションという過程で何が行われるのか専門家ではない私には定かでないが、ここの音には、ほんの少し何らかの加工を加えることで飛びぬけた作品となったに違いない、と思わせるものがある。
まあ平たくいうと、ジョン・アンダーソンが GENTLE GIANT のヴォーカルをとっているような感じです。
3 曲目は、倍密 YES のような快作。
中盤には、エア・ポケットのようなチェンバロとアコースティック・ギターのバロック風デュオがある。
パストラルなフルート、アコースティック・ギターがいい味わいだ。
6 曲目は、これ以上こんがらがりようがない怪作。
7 曲目も、ギター、チェロ、リコーダーによるクラシカルなトリオがある。
ひょっとしてこちらの方が本職か。
ギターはハウさんよりうまいです。
40 分あまりの内容が優に 60 分以上に感じられます。
「Give 'em Some Rawhide Chewies」(3:50)
「Cancer Of The Band」(6:48)
「To-ta In The Moya」(10:14)再録。
「Boris And His Three Verses」(2:50)再録。
「Flow Guides Aren't My Bag」(4:45)再録。
「Boris」では前曲と合わせ一曲だった。
「(My Doc Told Me I Had) Doggie Head」(5:02)
「3, Almost 4, 6, Yea」(8:39)再録。
(SYNCD 8)