イギリスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ZAKARRIAS」。 オーストリア出身の SSW ロバート・ホウマーの変名バンド。DERAM からの唯一作で知られる。
Zakarrias | vocals, guitar, bass, kazoo |
Martin Harrison | drums |
Pete Robinson | keyboards |
Geoff Leigh | flute, saxophone |
Don Gould | piano on 6, strings arrangement |
71 年発表のアルバム「Zakarrias」。
内容は、弾き語りを無闇にスケール・アップしたようなユニークなブリティッシュ・ロック。
密やかなはずの想いがなぜか肥大し、サイケデリックな夢想の海へと流れ出してしまったような、いわゆるアシッド・フォークの風呂敷をさらに広げたような作風である。
物憂げに醒めながらもやっぱり感傷的であり、それでいて時に透徹なる幻視で世界を見通すような不思議の力がある。
ギターはエレキよりアコースティックによるコードのかき鳴らしが主であり、基本的にはアコースティックでフォーキーな志向があることが分かる。
ヴォーカルについては、甘めの声質によるズルっとしたハイトーンの歌唱にけだるい無常感をスタイリッシュに漂わせることのできる、なかなかの才人である。
ハードロック風のシャウトも決まるし、アイドル的な人気があっても不思議ではない。
そして最も特徴的なのは、音を歪ませたベースをギター以上に弾きまくること。
冒頭、まずこの音に驚かされてから、すべてが始まる。
このベースのおかげで、弾き語りには不釣合いなへヴィネスと無理やり振り回すようなグルーヴが加わっている。
しかし、へヴィなサウンドを使いながらも決してハードロックではない。
本来内面へと沈みこんでゆくためにフォーク・ソングというスタイルを選んだはずが、サイケデリック・ロックの薫陶を大いに受けた挙句に、じつはエレクトリックなギミックとジャズやブルーズの方が適切だったと遅まきながら気がついてしまった、そんな感じである。
キメどころで放たれるピーター・ロビンソンによるジャジーなエレクトリック・ピアノやパーカッシヴなハモンド・オルガンもじつにカッコいい。
さらに、管楽器担当は HENRY COW に加入し HF&N もサポートしたジェフ・ライである。
弾き語り風の作品では、フルートがアコースティックな彩として絶妙のサポートになっている。
6 曲目や最終曲のような衝撃的なストリングス・アレンジも奏功していると思う。
抑えた音を伴奏にヴォーカルの表情で曲をしっかりと作ってゆくところがいかにも SSW の作品である。
プログレッシヴ・ロックとしての評価は、クールな雰囲気の完成されたフォーク・ロックにブルージーかつジャジーな器楽をしっかりはめ込めているところに起因するようだ。
個人的には、最終曲のような R&B テイストを強めに出した作品が好み。
4 曲目「The Unknown Years」は、一流ハードロック・グループのアルバムに入っていてもおかしくない、ジャジーでフォーキーな大傑作。
7 曲目「Let Us Change」の迫力に驚かされる。
プロデュースは、ロジャー・ワトソン。
LED ZEPPELIN や URIAH HEEP のバラード系の作品が好きな方にはお勧め。
「Country Out Of Reach」(4:05)いきなりファズ・ベースの轟音の洗礼。ヘヴィなサウンドに華美でグラマラスなタッチと憂鬱な翳りが共存する。
「Who Gave You Love」(4:06)
「Never Reachin'」(5:01)
「The Unknown Years」(7:00)
「Sunny Side」(3:44)
「Spring Of Fate」(3:18)
「Let Us Change」(3:52)
「Don't Cry」(4:08)
「Cosmic Bride」(6:08)
(SML 1091 / PL 587)