アメリカのプログレッシヴ・ロック・グループ「COVENANT」。 デイヴ・グライダーによるソロ・プロジェクト。 一人でドラムス、パーカッション、キーボードを操る。 現在はハードロック・バンド「STORM AT SUNRISE」に所属。
Dave Gryder | acoustic & electric drums, percussion, Hammond B-3 organ |
Mellotron, ARP Solina, Prophet-5, Korg CX-1/M-1 | |
guest: | |
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Bill Pohl | guitar, bass on 1 |
92 年発表のアルバム「Nature's Divine Reflection」。
内容は、攻撃的かつドラマティックなハードロック系キーボード・シンフォニック・ロック。
90 年代プログレ・リヴァイヴァルの一つの流れとなった、一人テクニカル・キーボード・ロックを代表する作品である。
スピード感とキツキツの曲展開こそ現代風だが、音色やパターンはまさに 70 年代プログレ黄金期のもの。
実際、75 年の作品といわれたら、そのまま信じられそうな内容である。
エリック・ノーランダー氏ほどポップではなく、イェンス・ヨハンソン氏やデレク・シェリニアン氏ほどアブストラクトなメタル色はなく、ジョーダン・ルーデス氏ほどは音楽学校最優等という感じもない。
まさに EL&P にダイレクトにつながる音だ。
プレイそのものやフレージングのセンスは頭抜けて超絶ではないが、高らかなソリーナ・ストリングス、なめらかに走るモノラル・シンセサイザー、邪悪にたたみかけるハモンド・オルガンらのコンビネーションの巧みさと変拍子リフ、思いつきのようなラフな弾き倒し、そしてヴィンテージなサウンドといったプログレらしさのツボは心憎いまでにおさえている。
ドラムスはけたたましく軽い音質が、いかにもキーボードと馴染んでいる。
このドラムスの存在は、チープなサウンドを短所に聴こえさせないどころか「カール・パーマーじゃん!」というある種の醍醐味にまで変貌させようとする意図を感じる。
全編せわしなく走り続けるがゆえにメリハリを失いかけており、ヘヴィな音すら次第にインパクトがさほどでなくなってくるところが残念。
クラシカルなフレーズや変拍子を巻き込むメカニカルなプレイが散りばめられた曲調は意外にも軽やかで、脳髄をかき回すような複雑さ(とその解釈の快感)よりもシャープな飛翔感、スピード感のほうが印象が強い。
また、キース・エマーソンほどには音楽性の幅が広くなく、EL&P からロックンロールとクラシックの部分のみを抽出して継承しているユニも感じる。
すんなり乗ってゆけるフレーズが多いところがいい反面、直線的に伸びてゆくだけの曲調に疲れてしまうところもある。
引きというか、ひねりがないところは、アメリカの方なのであきらめるしかない。
しかしながら、さすがに 3 曲目になると、すでに本人もイラついているのか、どことなく演奏がトゲトゲしい。
全曲インストゥルメンタル。
ゲストは、UNDERGROUND RAILROAD のギタリスト、ビル・ポール。
元のバンド仲間らしい。
「Toccata」をずっと聴いていても平気という方のような徹底したキーボード・ロック・ファンにお薦め。
謝辞のところにインスパイアされたバンドが列挙してあるが、KANSAS、CATHEDRAL、YEZDA ULFA、ANGLAGARD、IBIS、ETHOS、IL BARETTO DI BRONZO、HAPPY THE MAN などこちら方面の強者ばかりである。
「Premise Of Life」(17:05)「Tarkus」の冒頭部が延々続いているようなハイテンション・チューン。
「Eschatolic Covenant」(5:41)「Watcher Of The Skies」の冒頭部が延々続いているようなシンフォニック・チューン。
「Sunchild's Spiritual Quest Through The Forest Of Introspection」(19:47)DEEP PURPLE のようなリフがちらつくハードロック。メロトロンが壊れそう。
(SYNCD 13)