LIFE

  スウェーデンのプログレッシヴ・ロック・グループ「LIFE」。 69 年結成、72 年解散。 ギター・トリオ構成を基本にキーボードも取り入れ、多彩なサウンドを操る。作品は一枚。

 Life
 
Anders Nordin guitar, piano, bass, voice, synthesizer
Paul Sundlin bass, 12-string acoustic guitar, piano, voice
Thomas Rydberg drums, percussion

  72 年発表のアルバム「Life」。 CD ヴァージョンは激レアの英語盤 LP のリマスターであり、97 年発表。 ボーナス含め 17 曲収録。 内容は、多彩な音楽性を若々しい感性でまとめあげた英国風ロック。 ギター・トリオ編成によるハードロックから、ピアノを用いたモダン・クラシック、さらには管弦楽を導入したシンフォニーまで、幅広い音楽それぞれが本格的である。 特に才人ギタリストは、キーボーディストとしても腕を振るい、ピアノからチェンバロまで鮮やかな演奏を披露する。 作風は、ハードなサウンドの中にピアノやアコースティック・ギター、コーラスなどでリリカルかつ大胆なアクセントをつけドラマチックに盛り上げるもの。 ナチュラル・ディストーションを効かせたギターによる悠然たるプレイもあり、ハードロックとしては、重み、粘り、キレ、クールなカッコよさのすべてをクリアしている。 ヘヴィな音の中にブルージーな歌がしっかり根ざしているところは、LED ZEPPELIN にも迫る。 また、ポップなバラードや PINK FLOYD 風の前衛作品も水準以上のまとまりをみせている。 飛びぬけた個性はないが、破天荒でセンチメンタルなブリティッシュ・ロックの類族として魅力は十分だ。 音楽的なスケールの大きさ、幅広さでは本家を凌ぐところすらある。
  TRETTIO ARIGA KRIGET よりも、ナチュラルなブルーズ・フィーリングがあり、そのブルーズ・タッチとプログレッシヴなアレンジががっちりと手を組んでいる。 ヴォーカルは英語。プロデュースは、アンダース・ヘンリクソン。

  「Quo Vadis(I)」(1:01)クラシカルなピアノによるイントロダクション。プロデューサーの趣味かもしれないが、キース・ジャレット辺りが視野にありそうだ。

  「Nobody Was There To Love Me」(3:59)前曲から続くようなピアノに弦楽奏が加わり、ロマンティックに華麗に迫るバラード。 イタリアン・ポップスにも通じる王道路線である。

  「Many Years Ago」(6:13) ヘヴィなリフを繰り出すギターと刻みメタリックなシャウトをフィーチュアした英国風ハードロック。 重く荒々しいミドル・テンポだが、垢抜けた感じがある 後半続くギター・ソロはシンプルながらなんともいえない味がある。 JETHRO TULL のイメージも。

  「Experience Of Love」(0:58)可愛らしいチェンパロ・ソロによる小曲。

  「She Walks Across The Room」(4:01)トラッド風のギターが導き、ピアノと重厚なリズム・セクションで追い込むバラード。 哀愁を込めながらも、クールな表情で音をたどるヴォーカルがいい。 ジャジーな 8 分の 6 拍子が感傷をかき立てる。 スケールの大きいシンフォニックな演奏である。

  「Sailing In The Sunshine」(5:17)唸るファズ・ギターとタムタムの呪術的な響きが印象的なサイケデリック・ハードロック。 ハーモニーは神秘的であり、ギター・リフにも独特のうねりあり。 サビのポップなタッチは SF サイケ調か。

  「Quo Vadis(II)」(1:32) きらきらと転がるピアノ、エレピの多重録音による現代音楽。 ごちゃごちゃとしているが、水晶のようにきらめく音が戯れているようでもある。 印象派風といえなくもない。

  「Living Is Loving」(4:45) ギターが唸りを上げる重量感あるハードロック。 リズムはアクセントの強い「縦揺れ」。 オーヴァーダビングされたギターがせめぎあうシーンなど、中後期の ZEPPELIN の作風に近い。 ギター・ソロはナチュラル・トーンによるアンチ・ブルーズ・テイスト。 ワンノートに近い歌唱もおもしろい。

  「Every Man」(1:52)エルトン・ジョン風のポップなピアノ・バラード。 PROCOLS 調のオルガンも柔らかく響く。 たった 2 分に70 年代ポップスのエッセンスが詰まっている。

  「Experience Of Life」(0:22)

  「One Of Us」(5:16)PINK FLOYD が行かなかった道を行ってみたような前衛ロック作品。

  「Yes, I Am」(3:27)「愛の逃避行」的なバラード。うまいです。

  「Once Upon A Time」(4:55)またもピアノ、ストリングスをフィーチュアしたバラード。 哀愁度が強く、URIAH HEEP 的。

  「Quo Vadis(III)」(3:16)メロトロンの練習?から現代音楽調の弦楽器演奏へ。

  「Jag Fardas(Man's Journey)」(3:07)BEATLES の発展系のようなファンタジック・ポップチューン。 やや四畳半フォークもあり。 ヴォーカルはスウェーデン語。

  「To The Country」(3:48)

  「Tro Pa Var Varld(Believe In Our World)」(3:24)10CC を思わせるジャジーでシンフォニックなポップ・チューン。

(EMI 062-34263 / MELLO-CD 007)


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