TIBET

  ドイツのプログレッシヴ・ロック・グループ「TIBET」。 ユルゲン・クルツシュを中心に 70 年代初頭から活動。英国プログレの影響を受けつつ、KRAANEMBRYO と交流して活動。 作品は一枚。

 Tibet
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Klaus Werthmann lead vocals
Deff Ballin  keyboards, percussion
Dieter Kumpakischkis keyboards
Karl-Heinz Hamann bass, percussion
Fred Teske drums, percussion, guitar, vocals
Jurgen Krutzsch guitar, percussion

  79 年発表のアルバム「Tibet」。 内容は、英国プログレに 70 年代中盤のアメリカン・プログレ・ハードや王道ポップスを加味した、メロディアスな歌謡曲シンフォニック・ロック。 ドイツ・ロック臭さはほとんどなく、強いていえば KAYAKMACHIAVEL のようなポップス系ロックと同類の音である。 これはひとえに甘い声質のヴォーカリストの歌唱の印象による。(したがって、インストゥルメンタル・パートになると一気に幻想性というかファンタジックで神秘的な趣きが増す) そのヴォーカリストを中心に、オルガンやシンセサイザーなどキーボードをふんだんにあしらうも、シンフォニックな荘厳さよりも軽めの R&B 的なグルーヴを目指していると思う。 いわば 70 年代前半の荒っぽくも夢見るような味わい(たとえば「Mirage」の頃の CAMEL)とその後の時代の洗練された音のハイブリッドな作風である。 こういった意味で、同時期の NOVALIS のスタイルと似ているところがある。 リズム・セクションやキーボードのバッキングは、細かく刻むビートや軽めのファンキーさなど、ハードロックの直線性やプログレの複雑さとは異なる 70 年代後半らしい表現をしている。 翳りあるストリングスが高まりベースが唸れば GENESISYES(というか DRUID か) に通じる世界も現れるが、リズムの入りとともに、若干「泣き」の入ったノリのいいポップ・ロックへと変化する。 おもしろいのは、エキゾティックなアクセントが盛り込まれているところ。 ただし、このエキゾチズムはドイツロック特有のものというよりも、ワールド・ミュージックに眼を向けて進化したフュージョン周辺からの影響だと思う。 前半の歌ものに対して、後半のインストゥルメンタル作品では、英国プログレ直系の叙情的な世界をしっとりと描いている。 とにもかくにも、ヴォーカルの声を聴いていると英国のアイドル・グループのようなので、それと演歌っぽいキーボード・サウンドとの組み合わせがかなり新奇に感じられる。
  キーボード奏者が二名いるようだが、ツイン・キーボードというほどには音は厚くない。オルガンとシンセサイザーを分担しているようだ。 基本的には、妙に手堅く音の多いドラムスのリードの元、まっすぐで勢いのあるアンサンブルが一体でヴォーカルを守り立てる演奏スタイルである。 なかでも目立つのはリバーブの効いたジャジーなハモンド・オルガンのプレイだろう。BELLAPHON レーベル。

  「Flight Back」(4:59)
  「City By The Sea」(4:24)
  「White Ships And Icebergs」(6:15)
  「Seaside Evening」(6:13)
  「Take What's Yours」(7:23)
  「Eagles」(6:05)プログレなロマンあふれるクラシカルでメロディアスなインストゥルメンタル。
  「No More Time」(5:30)
  
(MUSEA FGBG 4115-AR)


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