AKPITAΣ

  ギリシャのプログレッシヴ・ロック・グループ「AKPITAΣ」。 72 年結成。作品は一枚。 APHRODITE'S CHILD と並び、ギリシャ最初期のプログレッシヴ・ロック・グループ。

 AKPITAΣ
 
Γιωργοζ Τδουπαγωγηζ drums
Σταυροζ Λογαριδηζ piano, bass, acoustic guitar on 11
Αρηζ Ταδουληζ vocals, organ, VCS3
guest:
Δημοζ Παπαχρηοτου guitar

  73 年発表のアルバム「AKPITAΣ」。 内容は、クラシックを大胆に取り入れた変拍子ハードロック、もしくは EL&PYESOSANNA の中間くらいのワイルドで豪快なシンフォニック・ロック。 演奏は、クラシカルなピアノ、オルガン、シンセサイザー、けたたましいエレキギター(クレジットによればゲストである)、および、パワーと音数勝負の思うさま暴れるドラムスが三位一体となった、勢いのいいものである。 クラシカルなところもあるが、めまぐるしく奔放なパフォーマンスである。 素っ頓狂なプレイが次々と噴出するケレン味たっぷりの演奏にもかかわらず、意外や高尚な雰囲気があって、王道を行く風格もある。 全員の力を出し切ったプレイが、破綻すれすれの演奏に奇跡的な突破口を見出しているのだ。 時期的に、英国プログレの影響は強いのだろうが、VERTIGO 辺りのクラシック・ロックよりは、ぐっと自然な芸術性が感じられる。 イタリアン・ロックに近いニュアンスだ。 さすが、古代文化を擁す大陸の血のなせる技か、高度な芸術性の前提として知性を要しない雰囲気である。
  ワイルドな音のイメージを決定づけているのは、土人の太鼓を倍速にしたようなドラムス、および無理やりジャジーなプレイをするサイケの名残たっぷりのギターだろう。 一方、クラシック調の源は、やはり多彩なキーボードであり、チャーチ・オルガンやオープニングの唸りを上げる VCS3、全編で活躍する現代的なピアノなど、EL&P 直系である。 また、アコースティック・ギターを用いた抒情フォーク的な表現や、伸びやかなヴォーカルはイタリアものに近い。 そして、激しいリズム・チェンジが自然に感じられるのは、曲の流れがあるからだろう。 ヘヴィなロックを軸に、他の音楽を取り込む強引なミクスチャー感覚と、怪しく謎めいた雰囲気(ヴォーカルに負うところ大)は、OSANNA 的といっていいと思う。 驀進する器楽とアコースティックな叙情を湛えたヴォーカルの奇怪な混交が、この猥雑で荒々しい音を生み出している。 それは、あたかも、古代の神々の集うアクロポリスの酒宴のざわめきのようだ。
   さまざまな音楽スタイルを揺れ幅大きく、激しく揺れることによって、異様なエネルギーと荒々しさが生まれ、その中に耽美な詩的興奮が浮かび上がってくる。 それこそ、この作品の持ち味だろう。 それはまた、プログレッシヴ・ロック自体の魅力でもある。 一聴の価値ある傑作の一つです。 ヴォーカルはおそらくギリシア語。

(POLYDOR:521 197-2)


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