フランスのプログレッシヴ・ロック・グループ「ARTCANE」。 73 年結成。作品は一枚。KING CRIMSON 系「苛性」シンフォニック・ロック。
Daniel Locci | percussion |
Jack Mlynski | guitars, vocals |
Stanislas Belloc | bass vocals |
Alain Couple | synthesizer, vocals |
77 年発表のアルバム「Odyssée」。
内容は、暗黒系神経症シンフォニック・ロック。
苛ついた強面のギターによる攻撃的なパッセージを尖ったビートが切り刻み、未加工の電子音に近いシンセサイザーが飛び交う。
ヒステリックに変化するリズムの上でざらついたサウンドの凶悪なギター・リフが執拗に食らいついてきて精神を蝕む。
また、光のない空間をシンセサイザーによって切り拓いてゆく神秘的な場面もある。
反復は悪夢的な酩酊感の維持および緊張感の増大とその壮烈な破断=リズム・チェンジによるショックを狙っている。
ただし、そういった現代音楽風の険しい表情とともに意外と普通のロックらしいカタルシスもある。
不安や緊張を煽りながらキリキリとミニマルに突き進む神経症的演奏と元祖インダストリアル調というか歯車や振り子が軋んでいるような不気味なノイズが後期 KING CRIMSON と共通する。(実際、CRIMSON のカヴァーをやっていたらしい)
意識しているとしか思えない演奏もある。
ただし、フリーキーなギター・ソロはロバート・フリップとはあまり似ておらず、もっとストレートなロック的プレイである。
また、鋭角的な音で構成されたアンサンブルには意外に YES との共通点もある。
タッチが柔らかめになると、耽美で暗くスペイシーなサウンド・メイキングと語り口が PULSAR(大元は PINK FLOYD か)にも通じる。
キーボードはクレジットのシンセサイザーのほかにアコースティック・ピアノとエレクトリック・ピアノも使用している。
音の厚さや奥行きはないが、線の細さがそのまま際立った音の輪郭線として機能しており、モノクロの邪悪な細密模様のような印象を与える。
英国ロックが自分と世界の対立構造を取る内面志向であるのとは対照的に、フレンチ・ロックは自意識の命ずるままにおんぼろの宇宙船でもかまわず真っ直ぐ外宇宙を目指していると思う。
そういえば本作のタイトルも「旅」だ。
リリカルな弾き語り風の最終曲は、「旅路の果て」に胸に浮かぶ郷愁だろうか。
ヴォーカルはフランス語。
楽曲は全員が提供している。CRIMSON になるのは主にギタリスト作曲の作品。
キーボーディスト作曲の作品は、スペイシーでノイジーなミニマル・ミュージック風。
プロデュースはアラン・ヴィニョー。
「Odyssée」(2:29)ロッシ作。
「Le Chant D'Orphe」(3:40)ムリンスキー作。
「Novembre」(9:44)クープル作。
「25ème Anniversaire」(4:52)ムリンスキー作。
「Artcane 1」(16:24)ロッシ作。
「Nostalgie」(4:45)ベロック作。
(PHILIPS 9101 141 / GBR 52095)